Apple Watchが他のスマートウォッチと最も違うのは、健康と、時に命を守る領域に踏み込んできたことだ。Apple Watch Series 12では、その基礎を底上げする改良が加えられている。
新しい「Health Sensing System」では、光学式と電気式の心拍センサーが共に新設計になり、より大型で省電力な緑色LEDが使われる。光学センサーは32枚の花びらを並べたような配置になっており、心拍は継続的に5秒ごとに計測される。これはSeries 11のおよそ60倍の頻度だ。心拍変動(HRV)の取得頻度も、最大24倍になっている。
ハンズオン会場で実際に腕に巻いてみると、文字盤に「Overnight: Favorable」「Daytime: Typical」という表示が出ていて、その下で2分間の心拍履歴グラフが63BPMを刻んでいた。オンタイムのバイタルをグラフとして文字盤に表示する様子は、これまでのApple Watchになかった景色である。
このバイタルセンサーの大幅な進化を背景にした新機能が「Readiness(準備度)」だ。直近の活動/トレーニング負荷/バイタル/睡眠スコアから0〜10のスコアを出し、「回復」「ペース配分」「準備OK」「全力で」の4段階で助言する。
この機能のアルゴリズムは、「Apple Heart & Movement Study」のデータを使って開発されたという。今回プロセッサと心拍センサーを“同時に”更新したのは、5秒ごとの心拍計測と、従来比で24倍の頻度で行われるHRV(心拍変動)計測を処理しなければならないことを考えると納得だ。
ここでApple Watch Series 12について、気になる点を2つ挙げておきたい。
1つはバッテリーだ。終日5秒ごとの心拍測定を新たに背負いつつも、公称のバッテリー駆動時間は24時間で据え置かれた。屋外ワークアウト時の駆動時間は25%延びて最長10時間に、そして急速充電が強化され15分の充電で12時間駆動できるようになったが、日常使いを考えると率直にいって少し物足りない。
最新世代に刷新されたApple S11の省電力性能と新しいLEDを、省電力面で活用したいユーザーもいるだろう。どの程度の使い勝手かは、実際に1週間ほど着けてみないと分からない。Appleは計測頻度を高めることで、より健康と命を守ることを優先したのだろうか。
もう1つ、気を付けるべきポイントとしてReadinessが7日分の睡眠データがたまるまで起動しない点がある。買ってきた日に腕に着けて、すぐスコアが出る機能ではないのだ。店頭で試すことも、レビューの初日に評価することもできない類のもので、まだどのように評価すべきかは結論がない。
心拍計測精度については、Appleにしては珍しく、9月10日(米国太平洋夏時間)に公開された「Apple Watch Heart Rate Accuracy Study」という調査レポートを通して説明している。
この調査では、1460人の登録者のうち1254人を対象に、胸に巻くタイプのPolar製心拍センサー「Polar H10」で計測したECG(心電図)を基準として、片方の腕に「Apple Watch Series 12」を、もう片方の腕に「Garmin Forerunner 970」「Google Pixel Watch 4」「Huawei Watch 5」「Galaxy Watch8」「WHOOP 5」「Oura Ring 5」のいずれかを装着した上で、ワークアウトや日常生活における心拍数の正確性を比較している。
その結果だが、159件の比較のうち、Apple Watch Series 12の方が信頼性が高いとされたのが139件で、点推定値での評価ではApple Watch Series 12の方が優位だったのが155件だったという。
この試験はApple自身が企画/設計して実施したもので、査読された論文でもない。示されているのは「他社のスマートウォッチとの差分」だけで、Apple Watch自体の絶対誤差は出ていない。そして試験を行った5施設のうち、3施設はApple自身が運営したものだ。ゆえに数字をそのまま受け取ることはできない。
それでも、今までAppleが公式文書に競合製品の実名を並べて数値を示した例は、記憶にない。それだけ、Apple Watch Series 12に搭載した新センサーに自信があるのだろう。
Appleが新製品発表に合わせてリリースした「Apple Watch Heart Rate Accuracy Study」。同社のレポート類としては異例の、他社製品との数値を使った比較を行っていることが特徴だ日本の読者にとってうれしいのは、新しいApple Watchの価格が先代比で上がっていないことだろう。Apple Watch Series 12は7万1800円から、Apple Watch Ultra 4は14万2800円と据え置きだ。
Appleは7月、日本でのみ広範な製品の価格改定を行い、先代の「Apple Watch Series 11」は最小構成価格が6万4800円から7万1800円へ値上げを行ったのだが、iPhoneの旧モデルとは異なりさらなる値上げは行われていない。
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