Windows Recallは2024年5月、「Copilot+ PC」の目玉機能の1つとして発表された。Copilot+ PCはNPU単体の性能で40TOPS以上を備えることが認定条件であり、当時としてはこの条件を満たすPCはQualcommのSnapdragon以外になかった。
その一方で、肝心のNPUを生かすアプリケーションはまだほとんど市場に存在せず、そうした中で唯一と言っていいNPU必須の機能だった経緯がある。
バックグラウンドで常にスクリーンショットを取得し、後にデータを必要なタイミングで取り出せるという仕組みは低消費電力動作が基本のNPUにはうってつけの機能だ。しかし、この仕組みが重要な個人情報や企業機密、資格情報といったセキュリティの根幹に関わるデータにアクセスできる脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていることが多方面から指摘され、結局Copilot+ PCの提供が開始された同年6月時点で同機能の搭載は見送られた。
後にMicrosoftからセキュリティ方針の見直しが発表され、初期設定時にデフォルトで同機能が有効化されていたものがオプトイン形式に変わった。またセキュリティ研究者らによって指摘されていた「PCにログインさえしていれば誰でも情報が閲覧可能」という問題を回避するためにWindows Helloの必須化や仮想化を用いたデータの暗号化(当初は平文保存だった)、センシティブ情報の保存候補からの自動除外、グループポリシーやMDMを含む機能の完全無効化やアンインストールへの対応といった処置を施すことで、同年12月からのWindows Insider Programでのテストを経て、翌2025年4月に正式提供となった。
Copilot+ PCの対象がAMDやIntel、そして現在ではNVIDIAへも開放された今、Windows Recallを実際に利用可能なPCはそれなりの台数があると思われるものの、実際にこの機能を有機的に活用できているユーザーはそれほど多くないとも考えている。
まず企業ユーザーの場合は前述のグループポリシーなどで一括で無効化されていると思われ、個人ユーザーでもオプトインこそしてみたものの、実際に積極活用しているケースはそれほど多くないのではないだろうか。その点で、ローカルAIがブームになりつつある昨今において、次世代AI PCのけん引役になれなかった機能という印象がなくはない。
全自動で受動的か、自ら動く能動的という違いはあるが、その点でProject PantheonはRAGに近い外部記憶を補完するAI時代の新機能という設計で非常に興味深い。Windows Recallが40TOPS以上のNPUを要求するのに対し、ローカルで外部記憶を持ちつつ外部のクラウドAIを使用できるProject Pantheonは利用ハードルが低く、むしろ現在の作業スタイルに合っているとも思える。
実際にいつ正式提供されるのかは不明だが、ローカルAI施策でやや遅れ気味のWindowsにとって面白い機能なのは間違いない。
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