2009年夏モデル発表――“鉄壁”ドコモの強さと課題神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

» 2009年05月21日 15時18分 公開
[神尾寿,ITmedia]

躍進するLG、課題の残るシャープ

 4シリーズ全体でメーカー各社の動向を見渡すと、富士通とLGエレクトロニクスの躍進が印象的だった。また堅実な商品企画と、デザイン・機能・ユーザビリティのバランス感のよさという点では、パナソニックモバイルコミュニケーションズの各モデルもレベルが高い。

 これらのメーカーの中で、筆者が特に注目したのがLGエレクトロニクスである。同社はワンセグだけでなく、おサイフケータイ機能にも対応し、デザインも日本市場に合わせたものを投入してきている。

 海外メーカーというと、iPhone 3Gを擁するAppleや、AndroidやWindows Mobile搭載機などスマートフォンを投入するHTCの印象が強いが、LGエレクトロニクスは日本メーカーの砦である“日本ローカル仕様の携帯電話市場”に着実に食い込んできている。「L-04A」などはデザイン的にも日本メーカーより優れたセンスが感じられ、これならば海外メーカーと知らずに購入するユーザーも出てくるだろう。

Photo LGエレクトロニクスのスライドケータイ「L-04A」。メインディスプレイはタッチ操作が可能

 一方、4シリーズ化以降、ドコモ向け端末市場で今ひとつ冴えないのがシャープだ。同社はワンセグ携帯の普及期において、AQUOSケータイのブランド力で全盛期を謳歌。ドコモ向け市場でも魅力的なハイエンドモデルを繰り出して、一時期トップランナーとなったが、昨年の冬商戦から一時ほどの勢いがない。

 今期の新モデルでは、前期同様にCCDを用いた高感度カメラを訴求。高性能と多機能の両面において、スペック的には充実した製品を投入している。しかし、それらの性能・機能面での優秀性が、ユーザーに分かりやすく作り込まれているかというと、疑問を感じざるを得なかった。例えば、シャープが訴求するカメラ機能で見ても、性能の高さと機能の豊富さでは「SH-06A」が随一であるが、ユーザー目線での総合的な分かりやすさ・使いやすさでは“おまかせiA”を搭載した「P-07A」の方が上だと筆者は感じた。機能・性能は確かに重要だが、それをユーザーに使いたい・使いこなせると思わせる工夫や演出が、今のシャープ製端末の課題になっている。次期モデル以降の改善に強く期待したいところだ。

Photo 10MピクセルCCDカメラ搭載の「SH-06A」(左)。被写体にカメラを向けるだけで、顔や風景、接写など状況に合わせたモードが自動で選択される「おまかせiA」搭載の「P-07A」(右)

今期最大の注目は「iモード」の進化

 さて、ここまで端末ラインアップ中心に、夏商戦に向けたドコモの布陣を見てきた。しかし、正直にいえば、筆者が今回の発表で強く惹かれたのは、これら端末ラインアップではない。今期もっとも注目すべきポイント。それは「iモードの進化」である。

Photo iモードブラウザの強化ポイント

 すでにリポート記事でも紹介されているが、ドコモはこの夏商戦向けモデルからiモードブラウザの仕様を大幅に変更。操作体系をフルブラウザに近くなるように変更した。さらにブラウザそのものの機能向上も果たし、「ページ内動画再生(FLV)」「テキストコピー」「サイトの大容量化」「Cookie/Referer対応」「Ajax(JavaScript)対応」などを実現。iモードのトップページにはRSSまたはAtomのフィード情報を登録することもできるようになった。これらはすべて、今後のドコモにとって重要な布石になっている。

 まず直近の部分でいえば、今回行われたiモードの機能強化は、次の10年に向けた「モダン化」の第1歩だ。iモードは1999年の登場以降、段階的に機能強化を図っており、独自の使いやすさも実現してはいるものの、ここ数年で見れば世界のモバイルICTのトレンドから外れ始めていた。過去10年の資産を殺さず、その一方で将来に向けてモダン化を始めたのが、今回のiモードブラウザの仕様変更といえる。

 筆者も実際に会場内で新しいiモードブラウザを試してみたが、その使い勝手や機能性は大幅に向上しており、これだけで新ブラウザを搭載した夏商戦モデルを買いたいと強く感じた。コンテンツプロバイダにとっても、新ブラウザ上ではサービスの自由度が大幅にあがるため、ビジネスの可能性が大いに広がるだろう。

 さらに中長期的にみれば、今回の仕様変更は、いよいよiモードブラウザとフルブラウザが統合する「新iモード時代」への第1歩と見ることができる。今回の仕様変更はフロントフェイスの統合、すなわちUIの統合にとどまっており、ブラウザエンジンそのものは従来どおり、iモードブラウザとフルブラウザが別々になっている。しかし、近い将来、iモードブラウザとフルブラウザはエンジン部分を共有し、1つの統合ブラウザの中にカプセル的に「iモード」が組み込まれる形になるだろう。そうなれば、iモードエコシステムの移植性が高くなり、その価値が未来に繋げられるようになる。

 むろん、そこに到るまでに、ドコモがクリアすべき課題も多くある。例えば、ブラウザ環境のソフトウェアとしての独立性確保だ。現在のiモードブラウザは端末ハードウェアに密接に組み込まれており、今回の新iモードブラウザーでも“ブラウザだけバージョンアップ”することができない。

 一方、iPhone 3Gなどはブラウザ環境の独立性が高いため、Webブラウザである「Safari」は単独でバージョンアップすることができる。今夏のiPhone OS 3.0ではSafariの機能強化も行われるが、そこでは一夜にして全世界3400万台のブラウザ環境が置き換わるのだ。モバイル環境におけるWebサービスの重要度が増す中で、稼働中の既存端末も含めて、ブラウザの進化ができるかできないかの差は大きい。

 このように課題はあるものの、今回の進化でiモードのエコシステムが新たな一歩を踏み出したことは間違いない。ドコモ最大の資産であり、最強の武器である「iモード」のエコシステムを、新たな時代に向けて変革する。その姿勢と戦略の一端が現れたのは、一連の発表中で、もっとも重要なポイントといえるだろう。

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