停滞の後の成長、2010年は法人市場が面白い――NTTドコモ 真藤氏に聞く(1/2 ページ)

» 2010年07月12日 17時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo NTTドコモ 執行役員 第一法人営業部長の真藤務氏

 この10年、日本の携帯電話市場は主に“コンシューマー市場”が牽引してきた。1999年2月のiモード登場を皮切りに、メールやアプリ、写真付きメール、着うた(音楽配信)などコンシューマー向けサービスが矢継ぎ早に登場。その結果として、携帯電話は老若男女に幅広く普及したのだ。

 しかし、2008年以降、コンシューマー市場が牽引する右肩上がりの成長は踊り場にある。販売方式の変更でユーザーは最新機種を気軽に買いづらくなり、買い換えを強く促す魅力的な新サービスもまた不在だ。AppleのiPhoneシリーズや一部のスマートフォンが新たな需要を喚起し始めてはいるものの、そちらへの移行需要が本格的に市場を牽引するのは、2010年後半から2011年度にかけてだろう。

 そのような中で、「もうひとつの成長市場」として注目が集まるのが法人市場だ。とりわけモバイルソリューションや組み込み機器市場は堅実な成長が可能であり、“携帯電話以外”のさまざまな形態・サービスによって、新規契約のみならず持続的なARPU向上が可能な領域となっている。

 2010年、法人市場はどこに注目なのか。NTTドコモ 執行役員 第一法人営業部長の真藤務氏に話を聞いた。

リーマンショック直撃の影響が大きかった2009年

ITmedia(聞き手:神尾寿) 2009年から2010年にかけて、国内法人市場はどのような概況だったのでしょうか。

真藤氏 数年前から法人市場では、業務支援でモバイルを活用する動き、いわゆるモバイルソリューションへの注目度が高くなっていました。この分野に積極的に投資をしようという動きがあったわけですね。しかし、(2008年9月の)リーマンショック以降、そういったモバイルソリューション分野への投資熱が冷めてしまい、さまざまなプロジェクトが延期になってしまった。それが2008年から2009年の動きでした。

ITmedia 世界的な景況悪化の動きを大きく受けてしまった、ということですね。

真藤氏 ええ。特に2009年はSI(システム・インテグレーション)市場全体が縮小しています。しかし、これらはプロジェクトを中止したわけではなく、延期だったというのも特長で、大規模なソリューション開発案件は減少してしまいましたが、法人のお客様からそういったニーズがなくなったわけではありません。実際、法人契約の回線数だけ見れば増えています。

 2010年に入りますと、法人契約の回線数はさらに伸びて、一時延期されていたモバイルソリューションの開発案件も再度動きはじめました。

ITmedia 過去10年の急激な成長により、携帯電話のコンシューマー市場は成熟し、市場規模の伸びに限界がきています。その中で、これまで“手つかず”に近い状態だった法人市場は、景気の悪化など一時的要因はあるにせよ、各キャリアにとって重要な成長市場です。おのずとライバルとの競争が激しい分野でもある。そういった競争環境において「ドコモの強み」というのは、どのように訴求されているのでしょうか。

真藤氏 確かにライバルとの競争は激しくなっていますね(苦笑)。その中で我々の優位性になっているのが、「音声サービスの先」にさまざまなソリューションの商品や開発ノウハウを持っていることです。法人市場では今でも音声通話(電話)が最大のニーズではあるのですが、大手企業だけでなく中小企業でも、規模の差はありますけれど、現在もしくは将来において何らかのソリューション導入をされたいという考えをお持ちのお客様が多い。そういった時に我々ドコモは、電話サービス以外のソリューションにおいて発展性がありますので、そこを評価していただいています。

ITmedia 電話サービスだけで訴求すると、単純な価格競争になってしまいます。これは避けたい、と?

真藤氏 いいえ、価格も重要だと思っています。お客様のコスト削減ニーズは大きいですから、競合他社に遜色のない価格競争力は持っていきたい。しかし、それだけでなく、ソリューション分野での商品ラインアップや発展性が重要ということです。

ITmedia 同程度の価格帯であれば、「ドコモの品質」や「安心感」を選ぶ法人ユーザーも多いですね。そういった声は、特に地方の法人市場を取材するとよく耳にします。

真藤氏 品質とエリアは我々が自信を持っているところであり、実際にお客様にも評価していただいています。とりわけ全国規模で活動させる大手企業では、品質の高さを求める声が大きい。一方で、ある程度、商圏が限られる中堅・中小規模企業のお客様ですと、限られた範囲でのエリア品質さえ十分であればよく、むしろ料金の安さを求める傾向があります。ですから我々としても、ドコモらしい品質の高さをしっかりと提供しつつ、価格面でも十分な競争力を持たなければなりません。

2010年、法人ビジネス注目の3業界

ITmedia 2010年の法人市場における注目ポイントはどのようなものでしょうか。

真藤氏 まず大きなトレンドとして、大企業は作り込み型のモバイルソリューションのニーズが高くなっており、一方で中堅・中小企業は逆にASP型のパッケージソリューションが求められています。ですから、その両方をしっかりと提供していかなければなりません。

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