低迷する国内市場からどう羽ばたくか――NECカシオモバイルの山崎氏に聞く(1/2 ページ)

» 2010年07月14日 01時01分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 国内端末市場の縮小、Appleを筆頭とする海外メーカーの台頭など、日本の携帯電話メーカーを取りまく環境は日増しに厳しさを増している。個別機能やデバイスの先進性で見れば日本メーカーにもまだ多少の優位性はあるものの、今後のトレンドであるデザインやソフトウェア、インターネットサービスとの連携ではiPhoneや海外のスマートフォンに後れを取った。国内販売台数が伸びない中で、規模の経済を背景に高品質・高性能なモノ作りを行うAppleなど海外メーカーに対抗するのは難しい状況になっている。

 今の日本メーカーに足りない「規模」をどう確保するのか――。その1つの答えとも言えるのが、NECカシオモバイルコミュニケーションズの設立だろう。国内携帯電話市場を黎明期から支えた老舗NECと、コンシューマーブランドとして人気のカシオ・日立が合併。国内に生き残りと再生に必要な“足場”を作り、世界展開を狙う。

 日本メーカーが避けて通れない背水の陣。そこからどう逆転戦略を指揮するのか。NECカシオモバイルコミュニケーションズ 代表取締役執行役員社長の山崎 耕司氏に話を聞いた。

新生NECカシオは、市場変化をどう見るか

Photo NECカシオモバイルコミュニケーションズ 代表取締役執行役員社長の山崎 耕司氏

ITmedia(聞き手:神尾寿) 携帯電話市場が急変する中で、NECカシオモバイルコミュニケーションズが設立されました。その山崎さんにとって、この新会社をどのように捉えていますか。

山崎耕司氏 これまでの出自も文化も違う企業が集まって設立されたので、それをどのようにまとめるかというのはしっかり考えなければなりません。ここで1つポイントだと思うのが、新会社の出資比率なのです。NECが約70%、カシオが20%、日立製作所が10%という割合なのですが、私はこれはいい配分だったと思っています。

 携帯電話事業というのは、やはりテレコムの世界なんですね。通信がつながることが大前提で、この通信分野に強いNECが70%の比率になっている。一方、コンシューマー向けのブランドは確かに重要なのですが、日本ではキャリアブランドも重視されている。携帯電話メーカーのブランド力だけが重要なわけではないという事情があります。ですから、(コンシューマー向けのブランド力の高い)カシオの比率が20%というのはちょうどいいのかな、と思う。そして最後の日立ですが、ここは将来を見据えた家電連携が注目になる。しかし、ある意味でそれはトッピング的な要素なんですね。ですから、(家電分野に強い)日立製作所の比率は10%になる。

ITmedia NECが70%、カシオが20%、日立が10%。このバランス感から作られるプロダクトやブランドが、新しいNECカシオモバイルコミュニケーションズの「らしさ」になる、と。

山崎氏 私はそう思っています。これから端末も、従来型のケータイだけでなく、スマートフォンやiPadのようなマルチメディア端末、そのほかにもいろいろなタイプのものが登場するでしょう。LTEもはじまり、通信レイヤーそのものの進化も起きる。そうした時代において、通信分野の優位性に大きな比重を置きつつも、コンシューマー向けのブランドやモノ作り、家電連携にも対応できるという今回の組み合わせは重要な意味を持つでしょう。

ITmedia 2009年から2010年は、携帯電話市場が厳しさを増しただけでなく、業界構造が大きく見直されてきています。今の状況をどのようにご覧になっていますか。

山崎氏 まず真剣に受け止めなければならないのは、国内の携帯電話市場がこの2〜3年で3000万台市場にまで落ち込んでしまったことですね。通信キャリア側も、過去のように販売促進費を積極的に使ってまで新端末を売ろうという意欲がなくなってしまった。これは新端末の普及が、ダイレクトにARPU向上につながらなくなってしまったという事情があります。

 販売数以外のトピックスを見ますと、やはり大きな変化になったのがiPhone (の日本上陸)でしょうか。当初は「iPhoneは日本では売れない」と見ていたのですが、ソフトバンクモバイルの売り方が上手かったこともあって、じわじわと日本市場に浸透してきている。そして、iPadも登場したわけですが、こちらの方が我々は注目しています。iPadがPCをリプレースすることではないですが、IT機器の考え方を変えて、新市場を開拓している。

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