企業のiPad導入 どう進め、どう定着させる?――アウディ ジャパンの場合(1/2 ページ)

» 2011年04月01日 11時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo アプリ「Audi A8 - The Art of Progress」を表示したiPad

 2010年の新車販売台数が109万2411台と過去最高を記録したドイツのプレミアムカーブランド「アウディ」――。同ブランドは日本においても1月、2月のそれぞれで、同じ月における月間登録台数が過去最高を記録するなど好調だ。新たにラインアップされたコンパクトカー「A1」や、モデルチェンジしたフラッグシップ「A8」が呼び水となり、販売店への来場者が増えているという。

 そんなアウディの販売店では今、iPadを使った接客が試みられている。アウディのブランド哲学である「技術による先進(Vorsprung durch Technik)」に従い、新型車に次々と新しいテクノロジーが加わる中、「売り方も変わっていかなければいけない」と、アウディ ジャパン代表取締役社長の大喜多寛氏は話す。

 同氏に、アウディ ジャパンにおけるiPad活用のメリットと運用方針を聞いた。


きっかけは新型A8の投入

photo アウディ ジャパン代表取締役社長 大喜多寛氏

 アウディの正規販売店では現在、ほぼ全てのセールススタッフにiPadが配布されており、約500台のiPadが導入されている。導入のきっかけを作ったのは、2010年12月に発売した新型A8だった。ドイツでA8のオリエンテーションを受けた大喜多氏は、あまりの情報量の多さに驚き、接客に従来と異なるアプローチが必要だと感じたという。

 「エクステリア、インテリア、エンジン、駆動系、新技術、入力インタフェースなど、全ての説明を受けたんですが、『これは覚えきれないな』と思いました。ドイツの開発担当者が毎日A8に乗って、全ての機能を覚えるのに1カ月かかったというんです。全部魅力的な情報だけれども、営業スタッフが全てを覚えて、お客様に説明するというのには限界があった」(大喜多氏)

 車の魅力をどうやって顧客に伝えればいいのか、思案を巡らせていた大喜多氏にヒントを与えたのは、Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」だった。携帯性に優れ、ボタン操作で目的の情報をスムーズに表示できる電子デバイス――そうしたものを販売スタッフに持たせて接客をするイメージが、大喜多氏の中にできあがった。そんな折に、同氏はiPadの存在を知る。

 大型のカラー液晶ディスプレイを備え、豊かな表現力を備えるiPadならば、例えば車で実演することが難しい機能も動画で見せることができる。iPadが営業スタッフの「ベストツール」となると直感した大喜多氏は、導入に向けて動き始めた。また、A8の販売にあたっては、単なる営業スタッフのツールにとどまらないiPadの活用方法を考案する。それは、エクスクルーシブなモデルであるA8ならではのアイデアだ。

 「iPadを営業スタッフに渡すだけでなく、取扱説明書をiPadの中に入れてお客様にお渡ししたい、そんなことを去年から社内で言い続けていました。今、A8を買っていただいたお客様には、アウディやA8の情報が入ったiPadをお渡ししています。納車まで1カ月以上かかるので、その間にiPadを通じてA8について知ってもらい、車が来たらすぐ使いこなしていただければ、という考えでやっています」(大喜多氏)

 こうした大喜多氏の意向で、1月には販売スタッフにiPadが配布された。スタッフ向けiPadには、商談をサポートするソリューションとして、iPadに最適化したカタログやWebコンテンツ、さらには支払いシミュレーションといったアプリケーションが用意された。


photophoto 各モデルをiPadを通じて顧客に説明できる
photo 支払いのシミュレーションもiPadから可能で、見積もりを出すために席を長く外す、といったこともなくなる

 顧客向けにはアプリ「Audi A8 - The Art of Progress」を提供。同アプリはApp Storeから入手が可能だ。アプリにはA8の動画、機能説明、カタログ、画像ギャラリー、ブランドヒストリーといった各種のコンテンツを盛り込んだ。また、端末の位置情報を使って最寄りのディーラーを探すディーラーサーチ機能も搭載し、店舗までのナビゲーションや、店舗に対するメールなどが、アプリを通じて可能となっている。A8オーナー専用コーナーも設け、アクセサリーやメンテナンスの情報、オーナー向けイベントなどの情報提供に活用していくという。

photophotophoto Audi A8 - The Art of Progressでは、動画を交えながらA8やアウディについての知識を深められるだけでなく、最寄りのディーラーを探したりアウディの最新ニュースが見られたりとさまざまな機能が組み込まれている

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年12月02日 更新
  1. 小型スマホを使っている理由は? 選択肢のなさを嘆く声も:読者アンケート結果発表 (2024年07月26日)
  2. “コンパクトスマホ”は絶滅するのか? 変わりゆく「小型の定義」と「市場ニーズ」 (2024年05月26日)
  3. 日本発売が決まったOPPO「Find X8」と、海外で展開される上位モデル「Find X8 Pro」の違いは? (2024年12月01日)
  4. 「Xperia 10 III」の整備済製品が2万7000円→1万9800円に値下げ:Amazonブラックフライデー (2024年12月01日)
  5. ガジェットポーチに適した無印良品の「自由に組み合わせられる収納ケース」はどれ? モノを入れて検証してみた (2024年11月29日)
  6. PayPayキャンペーンまとめ【12月1日最新版】 最大10万ポイント還元もある「超PayPay祭」12月2日に開始 (2024年12月01日)
  7. ソニーの耳をふさがないイヤフォン「LinkBuds」、1万9500円→1万4740円に値下げ Amazon ブラックフライデーで (2024年12月01日)
  8. iOS18.1の新機能「クリーンアップ」を使ったら下北沢駅前から人が消えた 「顔にモザイク」機能も便利に使える (2024年11月29日)
  9. 携帯キャリアのポイ活プラン競争が激化 「auマネ活プラン+」の狙い、対抗策を打ち出したドコモの動きに注目 (2024年11月30日)
  10. 「OPPO Find X8」の疑問をキーパーソンに直撃 Proなし、キャリアスマホとして販売されない理由は? (2024年12月02日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー