企業のiPad導入 どう進め、どう定着させる?――アウディ ジャパンの場合(2/2 ページ)

» 2011年04月01日 11時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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インターネットが広げた接客の幅

 “膨大な情報を効率よくスタッフや顧客に伝える”という目的を第1に掲げ、iPadを導入したアウディ ジャパンだが、導入にあたってはほかにもいくつかのメリットが浮かび上がったという。例えば、タブレット端末導入のメリットとしてよく聞かれる「紙資源の削減効果」や、コンテンツをインターネットを通じて素早く届けられる「リアルタイム性」がそうだ。

 また、iPadによって営業手法にもより幅が生まれてきた。アウディに関するさまざまな情報をインターネット上から探し出し、iPadでブラウズしながら顧客とのコミュニケーションに活用するスタッフが出てきているという。

 「特に若い人は順応が速い。自分でどんどんインターネットを使ってサイトを見つけだし、お客様にも紹介している。また、逆にお客様のほうから『こんな情報があるよ』と教えてもらうこともある。そうしたコミュニケーションがiPadを通じてできる」(大喜多氏)

 大喜多氏は、アウディブランドのユーザー層はインターネットやiPadといった先端デバイスと親和性が高いと感じている。iPadを使った接客スタイルには、顧客からも「アウディらしい」としばしば言われるという。顧客に対するブランディングという観点からも、iPadの活用には効果が現れているようだ。

導入前にまず“決定的な利用シーン”を描くべき

photo アウディ ジャパン代表取締役社長 大喜多寛氏

 このように、同社ではiPadを主に顧客とのコミュニケーションツールとして活用している。一方で、一般的に企業のタブレット端末導入においては、接客ツールとしての活用だけでなく、社外における仕事環境の構築というのも大きなテーマだ。会社のメールや業務システムへのアクセスを可能にし、オフィスの外でもビジネスを止めない環境を作ることで、業務の効率化を図ることに注目が集まっている。

 しかし、こうした運用ではセキュアなインターネット接続環境に加え、情報漏洩リスクを回避するための遠隔ロック/消去ソリューションの導入といった、セキュリティ対策が課題となる。そのために導入に多くの時間や手間がかかるケースもあるだろう。

 アウディ ジャパンがiPad導入にあたり何よりも重要視したのは、明確な導入メリットや活用シーンをしっかりと思い描き、それ以外の高望みをしないことでスピーディーな導入を実現することだった。セキュリティ対策が必要になる業務ソリューションは「ステップバイステップ」で導入を検討するという。

 「社内のデータベースにアクセスできるようにする案もあったが、対応に2カ月3カ月かかるといわれ、断った。最初から完璧を求めていたら、対応している間にツールの方が先に進化してしまう」(大喜多氏)

 また、導入のスピードという観点以外にも、少ない利用シーンから活用を始めることに大喜多氏はメリットを感じている。

 「いきなり全機能を作り上げても、社員はそれを覚えきれない。日本は最終的に使われないシステムを綿密に作りすぎると感じます。これはあったほうがいい、といって全部入れていると、なんのための道具か分からなくなってしまう」(大喜多氏)

 つまり、まずはシンプルな利用シーンのなかでiPadに慣れ親しんでもらうことが、“脱落者”を生まないためのポイントだというのだ。もちろん同社においても、例えば顧客分析への活用など、iPadの運用アイデアはたくさんあるが、現場での必要性を注意深く見て判断を下したい考えだ。

 「水を飲みたくない馬を川に連れていこうとしても無駄で、現場のスタッフに『何これ』と思われてはダメなんです。メリットは2つか3つでいい。それをきちんと理解してもらって、実際に良ければちゃんと使われる。シンプルに作り、サッと入れ、サッと使ってもらうのが大事」

 今後はA8に限らず各モデルのコンテンツを作り込み、接客ツールとしてより本格的に活用していきたいと大喜多氏は意気込む。また、同社では主に3つの方向性でiPadの活用を検討していく考え。1つは営業分析や契約管理といった業務支援への活用だ。2つ目はオーナーに対するサービス向上への活用で、一例を挙げればオーナー向けコミュニティの提供などがそれにあたるという。また、3つ目として潜在顧客へのアプローチという側面から、iPad活用の幅を広げたい意向もあるようだ。


 同社の導入事例では、“利用シーンを明確かつシンプルにする”ことでiPadを現場に定着させる姿勢が顕著に見られた。また、導入にあたって大喜多氏は現場との意識共有にも力をいれ、導入の半年前から販売会社のトップにiPadのメリットを説明し続け、実際にiPadを利用してもらうといった準備を念入りに進めたという。ソリューションやセキュリティ対策の選定だけに気を取られず、関係各所とコンセンサスを取りながら“きちんと現場にメリットをもたらす”運用ビジョンを固めることが、iPad導入を成功に導く一要素となるだろう。

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