古川氏は、これらのツールを使ってSFAを企業に根付かせるにあたり、iPhoneやAndroidといったスマートデバイスの導入が「そのハードルを下げている側面はあると思う」と話す。
顧客創造日報シリーズは、フィーチャーフォン(従来の携帯電話)に加え、スマートフォン搭載のWebブラウザからのアクセスも可能となっている。さらに、iOS、Androidの各プラットフォーム向けにアプリケーションも提供されている。
現在、スマートフォン向けに提供されているアプリは、「顧客創造日報 オフライン版」と「NIコラボNow」の2種類。日報ツールは文字通り、日報を作成するためのもの。「NIコラボNow」は、GPSの位置情報を利用して、各スタッフの現在位置などを通知し、共有するためのものだ。
「スマートフォンは営業ツールとして、従来型の携帯電話よりもSFAとの親和性が高い。データの入力や閲覧についても、利便性は上がっていると感じる。例えば日報ツールでは、入力のしやすさが向上していることに加えて、写真の撮影や添付、さらに音声でのデータ入力など、やれることの幅が大きく広がっている」(古川氏)。
古川氏は、スマートフォンとSFAの組み合わせによる可能性の一例として、ある同社製品のユーザーが独自に開発したというアプリケーションを見せてくれた。これは、顧客創造日報シリーズで管理している得意先のデータをAR(Argumented Reality:拡張現実)の技術を使ってマップ上に展開するものだ。街中でスマートフォンを使って風景を見ると、その近隣にある得意先の場所が、前回の訪問日やランクなどに応じて、タグ付けして表示される。たしかに、スマートフォンならではのSFAデータの活用方法の1つである。
「こうしたスマートフォンのデバイスとしての特徴は、SFAツールを実際に使う営業の現場が感じるハードルを下げるのに役立つのではないか。そして、それは結果的にシステムの定着率を上げることに貢献するのではないかと思う」(古川氏)
スマートデバイスへの対応に加え、導入形態にクラウド(SaaS型)を選択できるという点でも、SFA導入のハードルは大幅に下がっている。
顧客創造日報シリーズは、2003年にクラウド対応版の提供を開始。年々、クラウドでの導入が増えており、現在ではクラウドとオンプレミス(自社運用)の導入比率が7対3ほどになっているという。グループウェア機能であるNIcollaboの料金は、1ユーザーあたり500円/月。他のアプリケーションも同様に月額数百円から数千円の価格設定となっており、「とりあえず入れてみたい」と考える小規模企業であっても、すぐに手が届くものとなっている。
古川氏は、このような形で導入のためのハードルが下がれば下がるほど、NIコンサルティングのコアコンピタンスである「コンサルティング」の重要性は増してくると話す。同社では、クラウド版顧客創造日報シリーズのコンセプトについて「クラウド&グラウンド」という言葉で表現する。安価に導入できる「クラウド」の手軽さと、地(グラウンド)に足のついた活用ノウハウを合わせて提供できるという意味だ。
「SFAのためのITシステムは、他社からも多く提供されている。顧客創造日報シリーズの独自性は、それを使い続けたり、活用のレベルを上げるためのノウハウをコンサルティングの形で提供する点だ。例えば、日報へのコメント1つとっても、その入れ方によって、得られる成果は大きく変わってくる。われわれには、組織心理学などの知見をとりいれて、成果を上げるための理論を組み上げ、実践してきた実績がある。システムと一緒に、そのノウハウを提供できることが、他社の製品と比較した時の絶対的な優位点だ」(古川氏)
NIコンサルティングが提供するサービスは、業績を可視化する点がポイントとなっているが、日々の日報の入力なしには成り立たない。そのため同社では、日報の入力率が指標を下回るとコンサルタントが駆けつける「リモートコンサルティングセンサー」サービスを提供している。
「導入時に“いつまでに日報の入力率何%を目指すか”を話し合い、その指標をシステムに設定しておくと、入力率が目標に満たなかった場合はNIコンサルティングにアラートが飛んでくる。コンサルタントは企業を訪問し、なぜ使えなかったのか、どうすれば使えるようになるのかを話し合って改善を図る」(古川氏)
SaaS型サービスは容易に導入できるのが特徴だが、解約も簡単なため、長く使い続けてもらうためには顧客満足度を高める必要がある。リモートコンサルティングセンサーはその一環として提供しているサービスだ。
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