“営業力の強化”は、多くの経営者にとって、どんな時代でも優先度の高い経営課題の1つだ。近年、ビジネスをとりまく社会状況の急激な変化や、経済の低迷が長引く中で、その重要性は一層増している。
会社としての営業力を高めるという課題に対し、その解決を支援するものとして「SFA」(Sales Force Automation)と呼ばれるITシステムがある。個々の営業スタッフの活動状況を把握し、本来属人的で“勘”や“努力”といった言葉で語られがちだった“営業ノウハウ”を社員が共有することで、経営者の設定した目標とすりあわせつつ、科学的に営業力の向上を図っていこうとするSFAのコンセプトは、多くの経営者の耳目をひいた。
しかし、SFAツールを導入した企業の中で、実際にその投資に見合うだけの効果を実感できたところはどれだけあるだろうか。導入はしてみたものの、現場のスタッフに浸透せず、投資に見合う効果が出ないまま、挫折してしまうケースも多いと聞く。
「例えば、単にSFAとして日報のようなシステムを導入しても、それを日々の業務の中に定着させたり、スタッフが自分たちの持っている情報を喜んで共有したいと思えるような仕組みが伴わなければ、効果は出ない。システムに加えて、その定着のためのノウハウを知ることが重要だ」――こう話すのは、企業の経営支援サービスを提供するNIコンサルティングで、コンサルティング本部ビジネス企画推進部部長を務める古川豊氏だ。
創業20周年を迎えるNIコンサルティングでは、1998年から同社の経営コンサルティングをサポートするためのツールとして、パッケージ化されたソフトウェアの提供を開始した。このパッケージは、現在「顧客創造日報シリーズ」として展開されており、日報やグループウェア、経営支援など、企業の業態や営業スタイル、経営課題に合わせた機能を持つ、10種類以上のアプリケーションがラインアップされている。
同社製品の大きな特徴は、グループウェアとポータル、SFA(Sales Force Automation:営業支援)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)などのツールを同時に提供しており、これらのツールが密に連携している点だ。これらのデータは、企業が目標とする指標の進捗にリアルタイムに反映され、視覚的に分かりやすい形でポータル上に表示される。これにより企業のスタッフは、常に自社の最新状況を把握でき、それに対する対応や軌道修正に即座に取りかかれるというわけだ。
古川氏はまた、「営業支援系のツールを使って売上が上がった結果、忙しくなったから人を増やせ――というのでは本末転倒。今の時代は、忙しくなっても現状のリソースで乗り切れるだけの業務改善も同時に行う必要がある。そのためにもグループウェアや業務ポータル、SFAは結びついていなければ意味がない」とも話す。
製品ラインアップには、こうした同社のポリシーが反映されている。SFAの基本となる「営業日報」を実現する「顧客創造日報 for WEB」をはじめとしたIT日報システム、日報と連携してスタッフのスケジュール管理やノウハウ共有を行うためのグループウェアおよびポータルシステムである「NIcollabo」、見積の作成や共有を行う「見積共有管理 for WEB」、見込み客情報の管理を行うマーケティングツール「顧客創造Approach」など、機能別に多彩なアプリケーションがそろえられている。
いずれも、日本の中小企業の経営や事業運営の実状に即した設計になっている。また、必要な機能から導入を始め、運用の状況に合わせて順次拡張していくという使い方ができるのも特徴の1つだ。
前述の通り、それぞれのシステム同士は緊密な連携が行える。顧客創造日報シリーズには、企業の業績や経営状況などをタイムリーに全社で共有するための「経営コックピット」を実現するための製品群も含まれており、「可視化MapScorer」や「経営CompasScope」といったツールを組み合わせて利用することで、経営目標にひも付いた事業計画のドリルダウンやタスクの設定、その進ちょく状況の管理なども実現できる。
各アプリケーションは、個別に月額料金制のクラウド版としても提供されており、シリーズ累計で、中堅・中小規模企業を中心に2700社以上の導入実績があるという。
「当社のお客さんは、100人未満の企業が多い。こうした中小規模の企業が力を発揮するためには、経営トップの意志が社員全体に浸透している必要がある」――。古川氏は、可視化MapScorerを開発した理由をこう話す。
可視化MapScorerではまず、会社としてやりたいことをマップに表現し、次にそれを実現するための指標を設定する。例えば「売上アップ」が目標であれば、何パーセントアップしたら売上アップと見なすのか、「顧客満足度の向上」なら、訪問回数を何回に増やすのか――といった具合だ。
実際の実績は、日々入力している日報から自動で集計され、指標にリアルタイムに反映される。「マップには、“赤なら危険、黄色なら注意、緑は安全”といったように、結果が色で反映され、ポータルに表示される」(古川氏)。日々、会社の状態を目にすることで当事者意識を持って業務にあたれるようになるという。
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