“ネットで集客、実店舗に誘導”がチャンスを生む――O2O市場に攻め込む“スマホファースト”のヤフーSoftBank World 2012(2/2 ページ)

» 2012年07月23日 16時08分 公開
[日高彰,ITmedia]
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スマホ時代のO2Oは「クリックtoレジ」の一気通貫

 PCでもスマートフォンでも、Webブラウザやアプリを通じてインターネットにアクセスし、情報をやりとりするという仕組み自体は変わらない。“スマホインターネット”の世界はこれまでと何が違うのだろうか。宮坂氏は、PCを中心とした従来のインターネットは、仕事と仕事の合間や、帰宅してから就寝するまでの間など、何かの合間に生まれたすき間の時間に利用するものだったと指摘する。

 同氏が以前、サッカーワールドカップ関連のコンテンツを担当していたとき、ハーフタイムの時間にアクセス数の多くが集中し、それ以外の時間はほとんどアクセスされないという顕著な傾向が見られたという。これはその当時、インターネットデバイスの主流がPCであったため、ユーザーはテレビとPCの間を行ったり来たりしていたためと同氏は推測する。

 しかしスマートフォンが主流になると、すき間時間に限らず、何かをしながらインターネットにアクセスすることが可能となり、寝ている時以外は常にインターネットにつながっているという状態になる。既に日本人の1日あたりのメディア接触時間はPCやテレビを抜いて携帯電話が1位となっており、スマートフォンの普及に伴ってこの傾向は一層加速すると考えられる。

Photo 従来のインターネットへの接触時間(画面=左)とスマートフォン時代のインターネットへの接触時間

 この“ユーザーが実質24時間インターネットに接続されている”というスマートフォンの特性を活かし、同社が今後、法人分野のサービスの柱とすることを目指すのがO2O(Online to Offline)の分野だ。

 オンラインで情報を知った後、実店舗へ足を運んで商品やサービスの提供を受けるという消費の形態、あるいはユーザーにそのような行動を促すソリューションなどがO2Oと呼ばれ、昨今のネットビジネスのホットなキーワードとなっている。宮坂氏は、スマートフォンの普及に伴ってO2O消費の比率が急速に伸びていくと指摘する。「情報誌に出稿する、電話帳に広告を出す、ダイレクトメールを送る――といったように、時代時代でいろいろ集客の方法が発明されてきたが、スマートフォン時代のさまざまな集客ソリューションが今後数年のうちに生まれてくる」(宮坂氏)

 単にモバイルサイト上に広告を出して来店を待つだけであればPCインターネット時代のモデルと変わらないが、ヤフーが取り組もうとしているのは「クリックからレジまで一気通貫のソリューション」(同氏)であるところに特徴がある。

 今回の講演では、同社が展開しようとしているO2O事業の具体的な中身については触れられなかったが、概念としては、“オンラインでクーポンなどの情報を配布し、それを持参したユーザーがオフラインのリアル店舗へ行き、実際に消費が発生すると店舗からヤフーに広告費が支払われる”といったものになるようだ。

 ネット上での来店勧誘や携帯端末を利用したクーポンといった取り組み自体は特に目新しいものではなく、むしろ手垢のついたプロモーション手法だ。しかし、スマートフォンの機能とそれらのサービスを組み合わせることによって、「何万回のバナー表示を保証」「何人のユーザーへの認知」といった従来型の広告モデルだけでなく、「何人が広告をクリックして来店し、実際にレジでお金を払ったか」に応じて費用が発生するという新たな広告モデルも実現可能になる。店舗は、より効果の高い集客を効率的に行うことができ、ヤフー側は従来よりも利益率の高い広告商品としてこのサービスを販売できるというわけだ。

 また、同社はECサービスの「Yahoo! ショッピング」、地図情報の上に店舗情報を表示できる「Yahoo! ロコ」などで、大手のみならず中小の小売り業者でも利用できる店舗向けサービスを提供してきた。宮坂氏も講演中、Yahoo! JAPANは「誰もが利用できるサービス」である点を繰り返し述べており、O2Oでも同様のサービス設計となることが期待される。例えば、大量の表示を行わないと効果が出にくい従来のバナー広告は中小規模の店舗が利用するには現実的ではないが、特定の分野に強い関心があり、なおかつ店舗の近隣にいるユーザーに対してクーポンを配布し来店を喚起するといった方法であればコストを抑えることができる。

 宮坂氏は「技術的にはこういうことができるような環境になっている。あとはいかに事業者の方々が利用しやすい形でパッケージングするかというところに来ている」といい、個別の仕組みよりも、オンラインでの告知からオフラインでの消費の確認までをワンストップで提供することに意義があり、既存のさまざまな技術をどのように組み合わせると使い勝手の良いものになるか、その点に腐心して目下サービスを設計している最中だという。

 講演の中では述べられなかったが、スクリーンに投影された最後のスライドには、今年4月に資本提携を結んだアスクル、同じく6月に資本提携しポイント制度やユーザーアカウントの統合へ向かっているカルチュア・コンビニエンス・クラブのロゴマークが登場しており、特にコマースやリアル店舗運営などに関しては、今後ヤフーと他社との新たなアライアンスが相次ぐ可能性をにおわせていた。

Photo スマホ時代のO2Oは「クリックtoレジ」。来店から購入までをサポートするソリューションを構築中だ(画面=左)。O2O事業の強化に向け、さまざまな企業とアライアンスを組むとみられる

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