Passbookの導入、ローコストで素早く――Passbookソリューションを提供する電通の狙い:Apple期待の新サービス

» 2012年09月20日 18時23分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 9月21日に発売されるAppleのiPhone 5に搭載され、9月19日から配信が始まった「iOS 6」。さまざまな新機能がある中で、O2O(Online to Offline:ネットで探した情報をもとに、リアル店舗で購買行動を行う消費スタイル)ビジネスの活性化につながると期待されるのが「Passbook」だ。

 Passbookは、財布を太らせる原因となっている紙のクーポンやチケット、搭乗券、会員証などを電子化してiOS端末内に格納し、必要な時にすぐ取り出して使えるようにするアプリ。NFCのような近距離無線を使うのではなく、端末画面に表示したPassと呼ばれる二次元バーコード入りの電子コンテンツを店舗に設置された読み取り機にかざして利用する。

Photo iOS 6で追加された新アプリ「Passbook」。電子化した搭乗券やストアカード、チケットをiOS端末内でまとめて管理できる。店舗では読み取り機にかざして利用する

 Passは位置情報や時間と連動させることができ、例えば飛行機の搭乗時間が近づいたときに画面上に搭乗券を表示したり、お気に入りの店の付近に行くとクーポンを表示したりといったことが可能。また、プッシュ配信でPassを最新の情報に更新できるので、飛行機のゲートが変更になったときなどには端末の画面上にアラートを表示することもできる。

 ほかにも有効期限付きクーポンや座席を指定したコンサートチケット、残高が表示されるプリペイドカードなど、幅広いニーズに対応できることから期待が寄せられている。

Photo 搭乗券は、登場時間が近づくと通知が届く
Photo プリペイドカードとしても利用できるようだ

 このPassbookの導入を検討する企業向けに、Passの発行管理システム「PASSSS」(パススス)を提供するのが電通だ。PASSSSを利用することで、導入企業はPassの発行や情報更新、運用管理をWeb上で行えるようになる。利用者のPassを読み取るためのiOS端末向けリーダーアプリも開発しており、このアプリをインストールしたiOS端末をPassの読み取り用端末として利用できるのも便利な点だ。

 電通は、Passbookのどこにビジネスの可能性を感じてソリューション提供に乗り出したのか。電通 デジタル・ビジネス局の吉羽一高氏に聞いた。

Photo PASSSSでは、iOS端末をPassのバーコードリーダーとして使えるようにするアプリを用意。アプリをインストールすれば、iPhoneやiPod touchが読み取り端末に早変わりする

導入企業のハードルを下げ、利用者がPassを探しやすい環境を用意

―― (聞き手:ITmedia) 日本にはこれまでにも同様のサービスがありましたが、Passbookはどこが新しいのでしょうか。

吉羽一高氏(以下吉羽氏) まず、オープンプラットフォームに近いクーポンサービス(Pass)であることが、新しい要素であると考えています。また、スマホ市場において圧倒的な影響力を持つiPhoneのデフォルトの機能(iOS 6にアップデートすれば自動でPassbookアプリがインストールされ、iPhone 5にはプリセットされるため、ユーザーがいちいちアプリをインストールする必要がない)であるのも新しいところです。

 クーポンファイルであるPassをiOS 6以上の端末で受けた場合に、Passbookに自動的に取り込まれるという動作自体も新しいですし、すでに配布しているPassをプッシュ処理で後から書き換えられるというのも新しい試みだと捉えています。

―― Passbook市場の可能性をどのように見ていますか。また、どこにビジネスチャンスがあるとお考えですか。

吉羽氏 電子クーポンやチケッティング市場は今後、変革の時期を迎えるものと考えています。

 店舗とユーザーの間で発生する処理のフローは、NFCや、今回、Appleが採用した2次元バーコードなど、いくつかのパターンが考えられますが、ユーザーにとって分かりやすく、店舗が導入しやすい形態を築いた企業が市場を先導していくと思っています。また、020という別の視点から考えた場合に、オンラインでどのように効率的にユーザーにクーポンやチケットを届けられるか――といった視点も忘れてはならないと考えています。

 Passbookでは、020のフローの中でもオンラインを通じたクーポンやチケットの送付のしやすさという点で大きなアドバンテージがあるものと思います。ただ、Passファイルの配布は企業側に委ねられており、Appleとしてまとめているサイトなどはありません。そのため電通では、どんなPassファイルがあるのかを一覧できるPassBank.jpというサイトを用意します。

 当初は、PASSSSで制作されたPassファイルの一覧とダウンロードができるサイトという位置づけになりますが、なるべく早いタイミングで、誰でもPassファイルを掲載できる環境に移行予定です。

―― 電通がPassbookソリューションの提供を決めた背景は。

吉羽氏 Passbookは、ネットを通じてクーポンやチケットをユーザーに届けるという視点でメリットがあると話しましたが、オフライン(実店舗などの現場)の対応に目を移すと、2次元バーコードを扱っていない企業にとっては(読み取り用機材の導入が必要になるなど)ハードルが高くなります。また、すでに2次元バーコードを採用している企業においても、基幹システムやその他の管理システムとPassbookの2次元バーコード管理を紐付ける作業は難しいものがあります。

 電通が提供するPassbook向けソリューションのPASSSSでは、企業や店舗が簡単にPassの作成や管理、Passの内容の変更ができる仕組みをサードパーティという位置づけで提供します。こうしたソリューションを提供することで導入のハードルを下げれば、Passbookの利用機会が増え、新しいコミュニケーションの形が生まれるものと考えています。

―― 当初はクーポンのみの対応ということですが、今後の機能拡張の予定について教えてください。

 Passbookは、会員証やプリペイドカードとして使うことも想定していますが、実際にその形式で利用するためには、企業の顧客管理などの仕組みとの連携が必要になります。

 PASSSSでは、会員証やプリペイドカードなどの仕組みにも、カスタマイズ対応できるよう機能を拡張していくと同時に、一般ユーザーがPassを生成できる環境も用意する予定です。ほかにもサービス領域を拡大する予定がありますのでご期待ください。

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