5分で分かる、先週のモバイル事情――3月7日〜3月13日
日本通信がレイヤー2接続で実現した新サービスを発表。Sony Ericssonは韓国に韓国に現地法人を設立し、XPERIA X1を投入する。1月の携帯出荷台数は200万を割り込む低水準で推移。総務省は3.9Gの割り当て方針を確定した。
レイヤー2接続で、“MVNOならでは”の付加価値サービス実現――日本通信
日本通信が3月23日から、NTTドコモのFOMA網と公衆無線LANスポットを利用するプリペイド方式のモバイルデータ通信サービス「Doccica」(ドッチーカ)の提供を開始する。価格は1万4800円で、500分(5000円相当)の接続権が含まれる。
利用するネットワークは下り最大3.6MbpsのHSDPA通信となるが、利用者が閲覧するWebコンテンツに応じて帯域をコントロールすることで、帯域の利用効率を向上させている点が特徴。テキスト中心のWebページを見る場合と、マルチメディアデータの高速ダウンロードが必要な動画共有サイトでは通信速度が変化する。こうした仕組みは、ドコモとのレイヤー2相互接続により実現した。
Doccicaの製品発表会見に出席した日本通信代表取締役社長の三田聖二氏は、「わたしが創業以来実現したかったのは、回線をより効率的に利用できるレイヤー2の相互接続。ようやく、3Gでも日本通信らしい付加価値のあるサービスを提供できると思う」と述べた。
レイヤー2接続とレイヤー3接続の違いは、MNOとMVNOがどのように接続されているかによる。これまでのレイヤー3接続では、無線通信(パケット網)と固定通信(IP網)を接続するSGSN(Serving GPRS Support Node)とGGSN(Gateway GPRS Support Node)という交換機が2つともドコモ側にあった。レイヤー2接続を実現した今回のDoccicaでは、固定通信を無線通信に変換するGGSNを日本通信の社内に設置。本来はキャリア内部にあるコアネットワークの一部を自前で持つことで、帯域利用の自由度が増したという。
Sony Ericssonが韓国に進出、XPERIA X1を発売
英Sony Ericsson Mobile Communicationsが3月10日にソウル市内で製品発表会を行い、3月中に韓国市場でWindows Mobileを搭載したスマートフォン「XPERIA X1」を、SK Telecom(以下、SKT)に供給すると発表した。Sony Ericssonは2009年1月に、韓国法人のSony Ericsson Mobile Communications Koreaを設立。韓国での展開にあたってはSKTと戦略的なパートナーシップを結んでおり、端末に韓国専用の機能をいくつか搭載している。
韓国参入への準備は以前から進められており、法人設立や端末の発売に至るまでに1年近い準備期間をかけた。その中で同社は、韓国市場の特徴を探り、ハイスペックを好み、新技術を柔軟に受け入れるという市場性に合ったXPERIA X1の投入を決めたという。
端末出荷ふるわず、200万台割り込む――1月携帯出荷台数
電子情報技術産業協会(JEITA)は3月11日、2009年1月の携帯電話・PHS端末の国内出荷台数実績を発表した。累計出荷台数は前年同月比46.9%の191万5000台となり、200万台を割り込んだ。
携帯電話の出荷台数は前年同月比47.8%の187万1000台とふるわず、この1年では2008年10月の101万7000台に次ぐ低い水準にとどまった。2008年度の4月から1月の累計出荷台数も、前年同期比71.6%の2994万8000千台と、年末商戦の不振や景気後退の影響がうかがえる結果となった。
出荷台数の減少が続く中、ドコモはてこ入れ策として、自社ブランドの携帯電話端末を取り扱う代理店に対し、通常の成約手数料に加え、1台当たり1000円の「特別インセンティブ」を支給しているという。
また、安価な端末を求める声が高まっていることから、中古端末を扱うショップが増えるなど、携帯の中古リユースビジネスが広がりをみせ始めている。
接続ルールの見直し、ドコモの考えは
総務省が、異なる電気通信事業者(電話サービスの提供者)間での通話に対して発生する、他社のネットワークの利用料に関する検討課題を情報通信審議会に対し諮問したことを受け、接続料金やプラットフォームのあり方についての議論が始まった。
NTTドコモの企画調整室長、古川浩司氏が、3月11日に開催した記者説明会で、ドコモの現状と現在の接続料に対するドコモの考え方を表明した。
ドコモとKDDIの接続料は、電気通信事業法により「適正な原価に適正な利潤を上乗せしたもの」であることが定められている。そのためドコモでは前年度の損益費用の合計から接続料算定の対象とすべきコストを割り出し、単価をはじき出している。
ドコモが年々接続料を下げ、2007年度から2009年度にかけては、会計方法の変更も手伝って25%も値下げするのに対し、他社の接続料金はどうなっているかというと、「年々価格差が開いてきている」(古川氏)という。
ドコモの接続料推移のグラフを見ると、2000年度から接続料の差が徐々に開いていることが分かる。2008年度には最大で3割近い差がある。ドコモの接続料を100として他社の接続料を並べると、2007年度でKDDIが108、ソフトバンクモバイルが120になるという。2008年度の見込み数値では、KDDIが111、ソフトバンクモバイルは128になると予想している。
古川氏は「接続料の格差はどんどん拡大している。この状態が続くようなら、結果として一律のユーザー料金設定を維持することも困難になってくる可能性がある」と懸念を表明した。
3.9Gの周波数割り当て方針が確定
総務省は3月11日、「3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案」などについて、電波監理審議会から適当とする答申を受けたと発表した。
3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案は、総務省が1月23日にまとめたもの。これにより、(1)1.5GHz帯(1475.9MHz〜1510.9MHz)の35MHzと、1.7GHz帯(1844.9MHz〜1854.9MHz)の10MHzを、新規参入・既存事業者を問わず最大4つの事業者に、10MHzまたは15MHz割り当てる(2)認定の日から5年以内に、全国の総合通信局の管轄区域内で、3.9G移動通信システム等のカバー率が50%以上になる計画を持っている事業者に割り当てを行う という大枠が確定した。
今のところ3.9Gを利用したサービスの提供を考えているのはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの4事業者のみで、4社が手を挙げることは確実とみられる。
“災害に強いドコモ”アピール――陸上自衛隊東部方面隊、NTT東日本と共同訓練
陸上自衛隊東部方面隊とNTT東日本、NTTドコモは3月12日、首都直下型地震の発生を想定した共同訓練を実施した。訓練は、大規模災害で都市部の交通・通信が遮断された際、陸上自衛隊とNTTグループが相互協力のもとに早期に通信回線を復旧させる目的で行われた。
訓練では2007年、2008年と同じく、NTT東の災害対策用ポータブル衛星通信システムやドコモの可搬式発電機と携帯電話用充電器、衛星電話などを自衛隊の大型ヘリ(CH-47)と中型ヘリ(UH-1)で輸送し、避難所と想定したエリアに機器を設置した。また今年は、被災したNTT施設の復旧に必要な通信ケーブルと、被災地で活動する部隊に野戦通信能力を提供する通信シェルターを、大型ヘリでつり下げて輸送する訓練も新たに実施。さらに、神奈川県・横須賀では海上自衛隊の輸送艇を使ってNTTグループと陸上自衛隊の車両を海上輸送する訓練も同時に行われた。
モバイルルータ市場、活況の兆し
移動体通信とIT専門の調査会社MCAが、モバイルルータ市場の展望に関する調査リポートの発売に伴い、タイトル内容の一部を公開した。
モバイルルータは、WANのインターネット接続に3GやPHSなどを利用するルータで、有線環境がない場所でも手軽にネットワークへの接続手段を提供できることから注目を集めている。2008年後半以降、コンシューマー向けのWi-Fi対応製品が相次いで登場し、利用者のすそ野が広がっている。
MCAによれば、2008年のモバイルルータの市場規模は11万1000台と推定されるといい、2009年には23万台、2010年には36万台、2011年には53万台規模に拡大すると予測。また、FTTHやADSLなど固定ブロードバンドサービス利用者の一部が、最大20〜40Mbpsの高速データ通信サービスを月額5000円前後で利用できるモバイルWiMAXや次世代PHSに移行する可能性があるとし、こうした流れもモバイルルータ市場の拡大につながると見ている。
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