すでに欧米の先進国では容量メカニズムを導入して、火力発電の電力を発電量(kWh:キロワット時)と容量(kW:キロワット)の2つを組み合わせて取引する市場が動いている(図5)。送配電事業者や小売電気事業者は容量に応じたkWベースの料金も支払わなくてはならない。発電事業者は火力発電の稼働率が低くなっても一定の収入を確保できるため、投資を回収しやすくなる仕組みだ。
海外では容量メカニズムではなくて、需給状況が厳しくなった時に人為的に電力の取引価格を引き上げる(スパイク)方式を採用しているケースもある。ただし供給力の確保を目的にした制度であって、火力発電の投資を回収しやすくする効果は期待しにくい。
日本政府は容量メカニズムが有効な手段になると判断して導入を急ぐ。しかも対象になる火力発電設備に制限は設けず、すべての設備を対象にする方針だ(図6)。今後は容量メカニズムで取引する価格の設定方法や、発電事業者と小売電気事業者のあいだの取引方法を検討していく。
現在の政府の考えでは、対象になる火力発電設備が既設維持か改修か新設かによって価格を分ける方式が有力だ(図7)。合わせて容量メカニズムで確保する火力発電のうち既設維持・改修・新設による配分も決めることになる。
今のところ燃料の種類によって価格を変える案は出てきていない。しかし火力発電で最大の課題になっているCO2排出量の抑制には、燃料による価格調整も容量メカニズムの実施にあたって欠かせない。CO2排出量の多い石炭火力や石油火力から排出量の低いLNG火力へ移行を促す価格設定が望まれる。
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