電力需給の状況は冬により一層厳しく、足下の状況と対策の見通しはエネルギー管理(5/5 ページ)

» 2022年07月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4|5       

供給力に見込んでいない要素

 東北・東京エリアで予備率1.5%、中部〜九州6エリアで予備率1.9%の見通しは、安定供給に最低限必要な3%に届かない危険な水準であり、更なる追加対策が必要とされている。

 現時点、供給力に見込んでいない要素として、試運転を実施する新設発電機等がある。試運転期間中は作業停止などにより運転不可となる期間があるため、確実な供給力とみなすことは出来ないが、実需給段階では追加供給力となる可能性があるものである。

また、勿来IGCC(52.5万kW)や広野IGCC(54.3万kW)の実証試験機も同様に、トラブル等がなければ追加供給力をもたらす可能性がある。

図4.2022年度冬季に試運転を実施する新設発電機 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

2022年度冬季も供給力(kW)を公募

 現時点、予備率3%を満たすための需給ギャップ(1月)は、東北・東京エリアで103万kW、西日本6エリアで99万kWである。

 よって、この需給ギャップを埋めるためには、やはり供給力(kW)公募の実施が必要となる。昨年度に続き、冬季のkW公募実施はこれが2回目となる。

 なお図5のとおり、現時点では2022年度冬季に休止中の計画であるが、kW公募を実施した場合には、東京エリアで1台(58万kW)、中部エリアで3台(89万kW)の電源が応札(再稼働)の可能性があるとして期待されているが、これらだけでは需給ギャップを埋めることは出来ない。

図5.2022年冬季 需給ギャップ(2022年6月時点・単位:万kW) 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 2021年度冬季の公募では、東京エリアにおいて55万kWが募集された。

 2022年度冬季に向けては、需要増大リスク等に備えた社会保険として、H1需要の1%分を追加的に確保することとして、東日本では170万kW、西日本6エリアでは190万kWを募集することする。

 なお、公募における契約(需給運用)期間は1・2月を基本とするものの、期間外の12月や3月の需給逼迫に対応する可能性を残すため、12月・3月の供出に対してインセンティブを持たせる仕組みも併せて検討する予定である。

 図5のとおり、東日本(1月)の現時点の再稼働候補・休止中電源は58万kWしかなく、募集予定量の170万kWには大きく届かない状態である。

 休止中火力電源の再稼働に向けた必要リードタイムは長いため、速やかに公募開始に向けた準備を進めることが求められる。

著者プロフィール

梅田 あおば(うめだ あおば)/ ライター、電力事業アナリスト
専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。
Twitterアカウント:@Aoba_Umed


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.