九州-中国間の新たな海底直流連系線 100万kW増強によるコストパフォーマンス評価第91回「広域系統整備委員会」(3/3 ページ)

» 2025年08月22日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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費用便益評価の算定結果

 以上より、評価期間(22年/40年)2ケース、割引率(4%/2%/1%)3ケース、燃料費・CO2対策コスト(低下/高騰)2ケース、アデカシー便益(供給計画/目標停電量、上限/下限)4ケースの組合せで、合計48ケースについて費用便益評価を行った結果が図5と表4である。全48ケースのうち、33ケースでB/Cが1を上回っている。

 「供給計画ケース」のアデカシー便益(停電コストベース)が、B/Cの上昇に大きな影響を与えていることは事実であるので、仮に「目標停電量ケース」だけに着目すると、24ケース中15ケースがB/C≧1であり、24ケースのB/C単純平均値は1.13であった。

 なお、連系線増強により広域的な潮流が増加するため、送電ロスは増加し、便益はマイナスとなった。

図5.費用便益評価の算定結果 出典:広域系統整備委員会
表4.費用便益評価の詳細 出典:広域系統整備委員会

非貨幣価値項目の評価ーー市場分断の緩和

 広域機関では、連系線増強の効果としていくつかの非貨幣価値項目を挙げているが、その一つが市場分断の緩和による競争促進である。

 現在(2024年度実績)、JEPXスポット市場では、年間の約24%のコマで九州エリアと中国エリア間で市場分断が発生しており、2030年頃には年間の約37%まで拡大すると試算されている。

 今後、中国−九州間連系線を1GW増強する場合、市場分断が発生するコマ数が1/3程度に抑制される試算結果となった。広域機関ではこれにより、競争促進による新規電源参入や技術革新等の間接的な効果が期待される、としている(※広域メリットオーダー効果は、すでに貨幣価値として評価済みであることに留意)。

図6.九州エリアと中国エリアのエリアプライスの値差発生状況 出典:広域系統整備委員会

 なお、連系線増強の費用便益シミュレーションにおいて、電源の設備容量(kW)はすべて同一条件としているため、連系線増強を通じた再エネ出力制御量の低減による再エネ導入量(kW)の増加等の効果は、貨幣価値には表れていない(kWhの増減のみが貨幣価値として表れている)。

中国九州間連系設備における費用負担割合

 中国九州間連系設備の増強は、広域系統整備計画に基づき実施されるものであり、その工事費や運転維持費は、全国調整スキームにおいて費用負担の割合を整理することとしている。

 全国調整スキームのうち、系統設置交付金(図7のIIの部分)は、再エネ賦課金を原資としており、再エネ便益に係る費用を対象に交付される。今回の中国九州間連系設備増強では、再エネ由来分の割合(再エネ寄与率)は69.9%と算定された。

 また、再エネ便益に係る費用以外の費用(III)の1/2を上限として、広域系統整備交付金が交付される。広域系統整備交付金は、スポット市場の値差収益を原資としている。

図7.中国九州間連系設備における費用負担割合 出典:広域系統整備委員会

 当該特定者の負担(図7のI)とするアデカシー便益は、連系線を介して全国に及ぶものであるため、全国の一般送配電事業者9社が各エリアの最大需要電力(kW)比率に応じて負担する。図7の区分III、IVのうち、全国9社の負担とする「九社負担」・「特定会社負担」については、各エリアの需要電力量(kWh)比率に応じた負担とする。これらはいずれも各エリアの託送料金を通じて、需要家が負担することとなる。

 広域機関では、今後これら費用負担割合を決定のうえ、10月を目途に中国九州間連系設備の広域系統整備計画を策定する予定としている。

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