高度化法の目標達成に利用可能な非FIT非化石証書の現時点の主な供給源は、大規模水力や原子力発電であり、これらの多くは旧一般電気事業者が保有している。このため、事業者間の非化石電源へのアクセス環境の違いを踏まえ、非化石電源(証書)の調達に一定の配慮を行う「化石電源グランドファザリング(GF)」が導入されている。
第1フェーズは、その直前の2018年度の対象事業者の非化石電源比率(22.8%)を用いて、対象事業者全体の非化石電源比率の平均値(=GF設定基準値)と各社の比率を比較し、平均値より下回る分をGF(%ポイント)として設定し、これを目標値から控除(目標の緩和)している。GFはあくまで激変緩和措置であり、自社で非化石電源を新設するインセンティブを削ぐ面もあるため、段階的に漸減させ将来的には撤廃を目指すとしている。
第2フェーズでは、平均非化石電源比率が2018年度の22.8%から2021年度に28.8%へ上昇したことを踏まえ、3年分の上昇率である「6%」を第2フェーズにおけるGFの設定基準値から引き下げた。
本制度開始当初、非化石電源の調達は一部の事業者に偏って行われていたが(図7左)、非化石電源の増加やGFの引き下げ等により、制度対象事業者(主に小売電気事業者)が調達する非化石電源の比率も次第に上昇している。
2026年度から始まる第3フェーズにおけるGFの検討に際して、高度化法事業者全体の平均的な非化石電源比率を確認すると、前回2021年度見直し時点(28.8%)から直近の2024年度(31%)への増加分は約2%である。このため、第3フェーズにおけるGFの設定基準値引き下げ幅は2%とする。
なお、これまで第3フェーズについては、GFの撤廃も視野に入れ、終了年度が定められていなかったが、今回第3フェーズもGFを存続させることとなり、GFは非化石電源比率の状況等を踏まえ適切に見直す必要があるため、これまでのフェーズと同様に第3フェーズも3年間(2026〜2028年度)で終了することとした。2029年度以降は、第4フェーズ(仮称)が運用開始される予定である。
非化石価値取引制度の目的の一つは、非化石証書の販売収益を非化石電源の新設・増設や維持に充てることにより、非化石電力量を維持拡大することである。
このため、非化石証書販売収益を他の目的に充てることは避けるべきであり、これを確認するため、旧一般電気事業者であった発電事業者及び電源開発については、外部への非FIT証書の販売収入の額及び使途について、資源エネルギー庁に報告することを求めている。
2024年度の旧一電等の非FIT証書の販売収入合計は約595億円であり、そのほぼ全額が非化石電源の拡充・改良に充てられた。その内容は、主に水力発電所の大型改修工事および原子力発電所の安全対策工事と報告されているが、それぞれの金額や比率は公開されていない。
また旧一電等発電事業者各社は、エネ庁への報告だけでなく、自社Webサイト等を通じて自主的に非FIT証書の販売収入の使途を一般公開することが求められているが、現時点、その情報公開の粒度は各社でさまざまである。小売電気事業者による料金転嫁を通じて、非化石証書費用を実質的に負担する需要家の納得性の観点からも、より積極的かつ丁寧な情報の公開が期待される。
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