高度化法では、エネルギーの安定供給及び環境負荷の低減といった観点から、全てのエネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギー源の利用の促進を求めているが、小規模事業者への配慮として、電気供給量5億kWh以上の小売事業者等に対してのみ、目標達成の義務を課している。
義務対象事業者の販売電力量のシェアは、制度開始当初も現在も約97%であり、本来の制度目標に照らせば十分に高いカバー率と判断されている。
義務対象とする閾値を仮に5億kWhから引き下げた場合の対象事業者数とシェア(制度カバー率)は表1の通りであり、閾値1億kWhの場合、事業者数は2倍となるがシェアは2.2%の増加に留まる。
このため第3フェーズにおいては、現行の閾値5億kWhを維持することとした。ただし、閾値の大小は、非FIT証書の購入費用有無の違いによる小売事業者間の競争の公平性に影響を与えるものである。証書価格が上昇するにつれ、その影響は強まるため、早期の見直しが求められる。
高度化法は電気事業者だけでなく、ガスや石油等も対象としており、その閾値・カバー率も業種によりさまざまである。電気だけでなく、エネルギー全体を見渡した制度の見直しが期待される。
非FIT証書は総供給量のうち、内部取引量やボランタリー需要を控除したものが実質的に取引可能な量となり、これを「外部供出可能量」と呼んでいる。
また非FIT証書の需給バランスは「1」に近いほどタイトであり、価格が上昇する可能性も高まるが、図2で見た通り、すでに高度化法義務達成市場では上限価格に張り付くことも増えている。
これまで、非化石電源への投資を促す観点から需給バランスを毎年引き下げてきており、2025年度は「1.05」としたが、先述の通り、2026年度開始の第3フェーズから幾つかの制度見直しを行う予定としている。このため2026年度は需給バランスの引き下げを行なわず、「1.05」を維持することとした。
なお、第2フェーズまでは、全供給想定量から内部取引想定量等を控除して外部供出可能量を算定していたが、第3フェーズからは、控除量は比率(%)で管理することにより、供給想定量の変動に対応し、外部供出可能量を算定することとした。
現時点公表されている2025年度「供給計画とりまとめ」によれば、2026年度の非FIT証書の供給想定量は約1,673億kWhとなる。ここから内部取引量等を控除した外部供出可能量は約1,115億kWhとなる。非FIT証書のボランタリー需要は約110億kWhに増加すると想定されている。
ここで、2026年度の需給バランスは「1.05」とするので「1,115億kWh÷1.05=約1,062億kWh」が外部調達必要量となる。制度対象者全体の需要想定量は約8,255億kWhであるため、外部調達比率は「12.9%」となる。
先述通り、この速報値は2026年度「供給計画とりまとめ」を反映し、確報値として更新される予定である。なお、事業者の予見性確保の観点から、外部調達比率「12.9%」は固定し、2026年度「供給計画とりまとめ」公表後も変更は行わない。
非化石証書は、再エネ電源投資インセンティブの確保や価格高騰への対策として、それぞれ上下限価格が設けられており、幾度か変更も行われてきた。
非化石証書の価格は、PPA(発電事業者と需要家の直接契約)等においても環境価値の価格指標とされていることから、その水準が適正であることは新規電源投資確保の観点からも重要である。
なお、足元ではインフレが進行していることもあり、仮に上下限価格を維持する場合、非化石証書の価値は実質的に目減りしてしまうと懸念される。
制度検討作業部会では、再エネ電源投資を進める観点から、FIT証書・非FIT証書それぞれの上下限価格の見直しを検討する予定としている。
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