「洋上風力第1ラウンド」で撤退が発生した理由とは? 要因分析と制度見直しの方向性第41回「洋上風力促進WG」(3/3 ページ)

» 2026年01月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3       

三菱商事らへのヒアリングの概要

 合同会議のヒアリングにおいて、三菱商事は、守秘義務の観点から事業コストの詳細な数値は回答できないとしながらも、公募参加時点で見通せる物価・為替水準等の事業環境下において、事業性が見込める価格水準で応札したが、公募参加時のリスク想定を大きく上回る事業環境の変化があったと回答している。

 なお報告書では、「公募参加時の事業計画では、過去20年の本邦平均インフレ率からすでに相応に裕度をもったインフレ率を想定していた」との回答であるが、これを文字通り読むならば、輸入風車に関係する海外インフレ率をどのように考慮していたかは不明なままである。

表3.三菱商事ヒアリング 主な質疑応答の概要 出典:洋上風力WG

コスト増加に対応した収入確保の困難

 インフレや円安等は、三菱商事の第1ラウンド撤退公表前から、その勢いを増していたため、合同会議では、洋上風力発電事業を確実に完遂させる観点から、FIP制度への移行や価格調整スキームの導入等の施策について検討を進めていた。

 FITからFIPへ移行した場合、相対契約(PPA)における売電価格等の契約条件を工夫することなどにより、再エネ賦課金による国民負担を増すことなく、洋上風力発電の期待収入を高めることが可能となる。

 ただし、三菱商事へのヒアリングによれば、仮にFIP制度への移行が認められた場合であっても、大幅なコスト増加を賄うだけの高額な価格水準で長期PPAを締結できるオフテイカーを確保することは困難であったとの回答がなされている。

 また合同会議では、第2・第3ラウンド事業者を対象に、将来の物価指標変動の一部をFIT調達価格/FIP基準価格に反映させる「価格調整スキーム」の導入を決定済みであるが、三菱商事へのヒアリングによれば、収益改善効果は期待できないとの回答であった。仮に価格調整を公募開始時点まで遡って適用する場合は一定の改善効果はあるものの、大幅なコスト増加を賄う改善効果は見込まれないとの回答であった。

 またこれまで海域占用期間は原則30年であり、一定の要件に該当する場合のみ占用許可の更新が認められるため、占用期間の予見可能性に乏しい状態であった。

 合同会議ではこれを見直し、第1〜3ラウンドを含め、一定の要件を満たした場合は占用許可の更新が受けられることを原則として、海域占用期間の予見可能性を高めることとした。これにより、発電期間の長期化による売電収入の増加や、融資返済期間の長期化によるキャッシュフローの改善等が期待される。ただし、三菱商事へのヒアリングによれば、占用期間の延長は一定の採算性改善効果はあるものの、大幅なコスト増加を賄う改善効果は見込まれないとの回答であった。

洋上風力再エネ海域利用法公募の課題と改善策

 三菱商事ヒアリングの結果、インフレ等による資材価格等の上昇と、固定された供給価格(売電価格)の組合せが、洋上風力発電事業の主なリスク要因であると考えられる。先述の「価格調整スキーム」は、これだけで万全の対策というものではないが、資材価格等の上昇に対して一定の改善効果は見込まれる。

 また、第1ラウンドでは過度な低下価格入札を防ぐ対策が講じられていなかったことが課題として指摘されている。このため第4ラウンドでは、適切な供給価格で入札が行われるよう価格点の設計を変更し、供給価格上限額から想定供給価格幅を減じた額以下での入札に対しては一律に満点(120点)を与えることとした。

図4.適切な供給価格での入札を促す価格点の設計 出典:洋上風力WG

 同時に、事業実現性の評価についても配点を見直し、迅速性を過度に評価することを避け、「事業計画の実行面」や「サプライチェーン形成」の配点を高めることとした。国内での風車等のサプライチェーン形成は、為替レート変動に対する強靭性を高めるものと期待される。

図5.事業実現性評価点の配点の見直し 出典:洋上風力WG

 また第1ラウンドでは、選定前に国から提供する地盤等のデータが限定的であり提供時期も遅かったため、選定後に三菱商事が海底地盤調査を実施したところ、海底の地形や地層が複雑な構造をしていることが判明し、風車基礎の設計見直しや洋上・陸上工事の見直しがコストアップの一因となっていた。今後はセントラル方式の一環として、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が基本設計に関するサイト調査(風況・海底地盤・気象海象)を実施する予定としている。

 国はこれらの他にも、事業撤退に至った要因分析を踏まえ、再エネ主力電源化の切り札と位置付けられる洋上風力発電の導入拡大に向けて、必要な制度見直しを行う予定としている。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR