ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

Appleよ、ミニノートブームに乗るな

» 2009年03月11日 07時30分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 AppleがMacミニノートに取り組んでいないことを切に願う。

 3月9日、年内あるいは来年に登場する新しいApple製Netbook(ミニノートPC)のうわさで世間は大騒ぎしている。Think Secretはどこへ行ってしまったんだ。うわさに惑わされないためにはあのサイトが必要なのに。今わたしたちを救えるのはAppleInsiderだけのようだ。

 DigiTimesによると、Appleは既にWintekにディスプレイの供給を依頼したという。この情報の出所は台湾のCommercial Timesだ。皆さんは中国語が読めるだろうか? それともこれは北京語だろうか? わたしが中国語を読めればよかったのに。

 AppleのNetbook――アナリスト用語で言えばミニノートPC――はひどい考えだ。先週、わたしはミニノートPC市場が2つの道に向かうと主張した。

  • ルートA:NetbookはノートPCのカテゴリーとしては消滅する

  • ルートB:Netbookはスマートフォンと融合する

 ところでeWEEKの同僚ジム・ラポーザはミニノートPCが消えるというわたしの主張に反対している。彼は先週のブログで、Netbookは完全に理にかなっていると述べている。Acer、ASUS、そして欧州の約50社のNetbook販売業者も同意見かもしれない。だが、わたしの主張が当たっていようといまいと、AppleにとってNetbookは理にかなっていない。その理由を以下に示す。

  • AcerとASUSは、ディスプレイは大きめだが、それでも安価な製品を推進している。400ドルの12インチNetbookはノートPCではないだろうか。市場がソニーのVAIO P――そして1000ドル程度の11インチのライフスタイルミニノートPC(本体と同色のマウス付き)――に行き着くのでもない限り、Appleが参入したい分野ではない

  • 安価なNetbookはMacBookのブランドと、それに関連したプレミアム価格を台無しにする。Appleは、WindowsノートPCと比べ、自社のノートPCの価格を安定させ、高く維持することに成功してきた。その結果、1000ドル以上のノートPCに関して、米小売市場で80%のシェアを獲得している(NPD調べ)。デスクトップではこの数字は78%となる

  • Netbookはおおむね欧州での局地的なブームだ。IDCによると、第4四半期にはミニノートPCの約80%が西欧に出荷された。そのうち多くは、携帯通信事業者の販売奨励金が付いていた。

 Silicon Alley Insiderのダン・フロマーは的確な疑問を投げ掛けている。「iPod touch HDなのか」と。彼は次のように記している。

 報道ではAppleのガジェットをNetbookとしているが、AppleがASUSやAcerなどのPCメーカーが販売しているミニノートPCのように見えるデバイスを作るとは思わない。Apple幹部はこの種の機器を制約が多くて役に立たないとこき下ろしてきた。それも一理ある。むしろ、Appleはマルチタッチスクリーンと仮想キーボードのノウハウを生かして、iPod touchの約4倍の大きさで600〜700ドル程度のデバイスを作ると考えている。

 ブランディングや物流、価格、市場での差別化の点から考えれば、iPhoneやiPod touchの大きいバージョンの方がMac Netbookよりも理にかなう。それこそがAppleの作るべきものであり、既存のNetbook市場はその道を示している。ミニノートPCは単に小さくて安いだけでなく、スマートフォンのように通信事業者から販売奨励金が出る。3Gデータプランを付けた販売奨励金モデルは既に存在する。AppleはMacBookをローエンドに持って行くよりも、iPhone、さらにはiPod touchを高級市場へと推し進めるべきだ。

 そこで疑問なのは、収束しつつあるスマートフォンとミニノートPCの市場に、タッチスクリーンデバイスがあふれるようになるのはいつなのかだ。Windows 7はマルチタッチをサポートしており、同OSは間違いなく今年リリースされる。Microsoftにはほかに選択肢がない。Windows 7が登場すれば、Acer、ASUS、Dell、HP、ソニーなどのWindows PCメーカーも、安価なハイブリッド型マルチタッチミニノートPCを作れるようになる。2010年初めに、この市場は急速に製品が増えるかもしれない。

 スマートフォンとマルチタッチミニノートPCの違いは突然、急速に薄れていくかもしれない。Appleは、Windows 7搭載の販売奨励金付きタッチスクリーンミニノートPC・スマートフォン融合型デバイスからiPhoneとiPodを差別化するのにもっと労力をかけなければならなくなるだろう。Appleの最大の資産はApp Storeだ。同ストアをミニノートPC・スマートフォン融合型デバイスで利用できれば、非常に魅力的だろう。

 Appleの2番目の資産はMac OS Xだ。同社のOSはデスクトップからノートPC、スマートフォンまで適応できる。MicrosoftはモバイルOSとPC用OSを分けている。スマートフォン・携帯メディアプレーヤー市場をハイエンド側に拡大する上では、Appleの方が有利な位置につけている。マーケティングの基本は、「人は価値があると思ったものによりお金を払う」だ。価格を下げてより多くのものを与えても、彼らはよりお金を払うことに永久に抵抗するだろう。アップセル(よりランクの高いものを売り込む)はほぼ常に、ダウンセルよりもいい。

 だからAppleはNetbookブームに乗ってはいけない。Netbookを再定義するべきだ。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.