『生きがいについて』――「苦労は買ってでも」したほうがいい理由藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

ハンセン病患者の心のケアに生涯をささげた著書が書いた『生きがいについて』。生きがいとは三つの見方を心得ることだという。

» 2009年08月07日 19時00分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 神谷美恵子は精神科医であり、ハンセン病患者の心のケアに生涯をささげた人物。少ないながらも希望を持つ闘病者との関わりから生きがいについて考えを深め、まとめた1冊が『生きがいについて』である。

生きがいとは何か

 生きがいとは、三つの見方を心得ることだという。

 (1)社会化。絶望に陥った時、しばしば苦しみが自分一人のものでないと気づく。苦しみの中で人々と生きる決意が生まれ、心は社会的に広がるという。(2)歴史化。どれほど孤独になっても、自分に始まったことではなく過去の悲惨な例に気づく。過去から自分の亡き後の歴史の中に、自分の生が位置づけられる。(3)精神化。生きがいを喪失すると、虚無と死の世界から自分を眺めることになる。その経験から、以前と異なる新しく深い見方を人は得る。

 社会化と歴史化が関するのは現実の生活。それだけでは忙しい日々に追われて心の豊かさを得られない。一方で精神化に深入りしすぎると、現実から遊離しすぎる。現実と精神のバランスがとれた、生きがいが求められる。

ビジネスパーソンに苦労が必要な理由

 買ってでも苦労せよ、と言われる。苦しみが深いほどに三つの見方は得られて、結果として生きがいを手にできるからだろう。意図的に生きがいは得られないが、あえて厳しい環境を選択し続けることはできるはずだ。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1000冊超。


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