一般社団法人新エネルギー導入促進協議会は2011年10月14日、地方公共団体などにおけるスマートコミュニティー構築にかかる事業化可能性調査を支援する「平成23年度スマートコミュニティー構想普及支援事業(PDF)」の採択結果を発表した。東日本大震災からの復興を見据えた案件として、岩手県大槌町や釜石市、宮城県気仙沼市、福島県南相馬市などの提案が採択されている。
政府の内閣官房地域活性化統合本部は2011年12月22日、「環境未来都市構想」の対象地域として、計11地域の選定を発表した。岩手県大船渡市や陸前高田市や釜石市、宮城県東松山市、福島県南相馬市などの6地域が選定され、スマートコミュニティーの実現に必要なこととして、地産地消型や分散型のエネルギー型社会、産業復興や社会インフラの革新的な進歩などが挙げられた。
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会は2012年2月14日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県でスマートコミュニティー導入促進事業となる「スマートコミュニティー・マスタープラン策定事業」と「スマートコミュニティー構築事業」の公募を始めた。民間から事業案を公募して3月に認定、9月に採算性を重視したプランの提出し、10月から設備導入や運営に対して3分の2の補助を行う。政府が定めた被災地の「集中復興期間」である2015年末までに10カ所程度でスマートコミュニティーの構築を目指すとしている。
I.スマートコミュニティー・マスタープラン策定事業(補助率:定額)
スマートコミュニティーのエネルギー管理システム導入を中心としたスマートコミュニティー・マスタープランの策定・実現に必要な費用を補助
II.スマートコミュニティー構築事業(補助率:2/3以内)
「スマートコミュニティー・マスタープラン策定事業」の成果となるマスタープランの中から、次世代エネルギー・社会システム協議会での評価を受け、認定されたプランに基づき導入されるシステムおよび機器、プロジェクトマネジメントに必要な費用を補助
こういった状況の中、大手各社が「東北復興推進室」や「スマートシティ推進室」を新設するなど、東北復興におけるスマートコミュニティーへの事業強化に向けた体制整備を急いでいる。
スマートコミュニティーの実現には、再生可能エネルギーの変動にあわせて需給バランスを調整し、地域内の電力の供給量を最適化するCEMS(コミュニティー・エネルギー・マネジメントシステム)による電力の「地産地消」の実現がポイントとなる。
例としては、下記による地域内の自立型・分散型エネルギーシステムの実現が期待できる。
スマートコミュニティーのイメージ図は、以下のとおり。
岩手、宮城、福島の3県の沿岸部で、高台や内陸などへの集団移転が27市町村で計画されている。生活基盤を取り戻し、低炭素社会と安全安心で高齢者に優しい快適な生活が送れる環境の実現には、制度の見直しや規制緩和も含めた街づくりのフレームワークをつくり、社会システムの全体最適化を図っていくことが必要となる。東北が震災から立ち直り、新しい地域づくりのモデルとなるために、住む人々の「生活の質」の向上と持続可能な社会をつくれるように地域が主体的に取り組める環境を産官学で支援していくことも重要となる。そのためには住民との対話を重ね、これまで以上に広範囲に渡る利害調整や多種多様なステークホルダーとの調整をしていく必要もあるだろう。
東北復興に向けたスマートコミュニティーの構築は、復興における新たな街づくりのフレームワークづくりや社会システムの最適化だけでなく、今後の日本の地域社会の街づくりのあり方を占う上でも重要な取り組みとなるだろう。
国際大学GLOCOM客員研究員(ICT企業勤務)
ITmediaオルタナティブ・ブログ『ビジネス2.0』の視点
2007年より主に政府のクラウドコンピューティング関連のプロジェクトや情報通信政策の調査分析や中小企業のクラウド案件など担当。2011年6月よりクラウドサービスの開発企画を担当。
国際大学GLOCOM客員研究員(2011年6月〜)。クラウド社会システム論や情報通信政策全般を研究
一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) 総合アドバイザー(2011年7月〜)。
著書『「クラウド・ビジネス」入門』
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