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薄型テレビ、夏モデルに見る3つのトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/6 ページ)

» 2009年05月27日 10時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――それでは、主要各メーカーごとにコメントを頂けますか。まずは第2世代となる4倍速液晶モデルを展開してきたソニーです。

麻倉氏: 夏商戦向けの製品は4倍速液晶やFelicaリモコンなど、機能面を重視したモデル(「W5シリーズ」「F5シリーズ」)が主ですが、BRAVIA全体としてはここにきて映像が安定してきた感があります。同社はまず「Xシリーズ」ありきで、正統派的な見やすい、コントラストと階調感のバランスの良さが目をひく、洗練されたスマートな映像が特徴として挙げられますが、その特徴が下位モデルにも波及してきました。

 スポーツ鑑賞ならば「F5シリーズ」など4倍速モデル、黒の沈みや締まりが欲しいならば「XRシリーズ」と得意とする領域があり、ニーズにあわせた展開を行っています。いずれにしても、全体として画質の底上げが見られることは確かです。

photophoto 4倍速液晶搭載のF5シリーズ「KDL-46F5」(写真=左)とW5シリーズ「KDL-52W5」(写真=右)。W5シリーズはF5シリーズの上位に位置づけられダブルチューナーモデルも用意される

 久しぶりにLEDバックライトを搭載したフラグシップ「XRシリーズ」を視る機会がありましたが、映像は非常に自然でS/Nにも優れます。LEDバックライトに起因するハロー現象(光りの輪が映し出されてしまう現象)もうまく抑制されており、品位の高さを感じました。このXRを頂点に確実な進化を遂げています。

 新製品についてはFelicaリモコンやアプリキャスト、アクトビラビデオフルへの対応などネットワークサービスも着実に進歩していますし、4倍速液晶も世代を重ねたことで安定感を増しています。

――次は「エコは基本性能」というキャッチの新製品を用意してきたシャープです。

麻倉氏: 確かに「エコ」を掲げるモデルが目をひきますね。スタンダードモデルの「D6」シリーズを視聴しましたが、パネルこそ既存モデルから変わりませんが、処理エンジンが新しくなったために、明るい環境下で明るい映像を視聴する際の映像は、レンジ間がすっと伸びる印象で、かなり良くなりましたね。半自動画質調整機能である「アクティブ」設定をオンにすると、色伸びなどがかなりしっかりとした印象になります。

photo 新スタンダードのDS6シリーズ(写真は「LCD-46DS6」)

 同社がいま挑戦しているのが、コンテンツの魅力を引き出す絵作りです。こうした流れは日本ビクターが始めたもので、映画「善き人のためのソナタ」を基に、映像やストーリーにもとづく解析を行いました。その次に着手したのが日立製作所で、「悲しい場面の絵作りはこうあるべき」など“考え方”を導入してきたのです。

 シャープも今、その流れに乗っている最中で、「シネマモードなら、どのような画調がそのコンテンツにふさわしいか」というように、「信号を正確に」だけではなく「映像が映像にふさわしいか」を考え始めています。

 まだまだ完全な状態ではありませんし、コントラスト指向がやや強かったりと指摘すべき点はありますが、着実にその歩みを進めています。ただ、同社製品のバックライトはCCFLが主流で、絵作りに対してリソースをどのようにやりくりするのかが問題点として浮上するかもしれません。

 同社もLEDバックライト搭載製品を擁していますが、絵作りの観点からすれば「CCFLではなし得ない映像」を指向しています。それはそれでよいのですが、現在取り組んでいる自然な表現性、ナチュラルな映像という方向性も大事にしてもらいたいと思います。

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