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IFAに見る大画面テレビのトレンド(1) 〜大型有機ELテレビは年内に登場するか?本田雅一のTV Style

» 2012年09月12日 15時10分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 年末に向けたショーケースとして重要な位置を占めるようになったドイツ・ベルリンでの家電展示会「IFA 2012」。ここで有機ELテレビ関連の続報を期待していた読者も少なくなかったのではないだろうか。今年1月の「International CES 2012」では、韓国のサムスン、LGエレクトロニクスの2社が年内に有機ELテレビを発売すると予告していた。

サムスンの有機ELテレビ「ES9500」

 サムスンは今年5月に55V型の有機ELテレビ「ES9500」を発表済み。RGB個別に蛍光剤を塗布する方式で広色域と高画質を訴求する製品になるとの触れ込みで、事前に9000ドルの価格が予告されていた。しかし、今回の展示ではその実力はよく分からなかった。確かに色再現域は広いものの、ショーアップ向けの派手なチューニングのため、画質評価が行えなかったからだ。

 もちろん、自発光パネルならではのコントラストの良さ、応答性の速さからくる残像の少なさなどを感じる場面はあったが、シーンによっては若干の残像感を感じる場合もある。また歩留まりはまだ十分に上がっていないようで、年内の発売に関しても、どのタイミングかは分からない状況とのこと。

 今年初旬の時点では、日本でのテレビ販売再開に向け、大手量販店と有機ELテレビをきっかけにしたテレビ再発売の交渉を始めているといった情報も伝わってきていたが、ES9500の発売時期や生産歩留まりによっては、この計画も変更になっている可能性がありそうだ。

 一方、LGエレクトロニクスは白色発光のモノクロ有機ELパネルにカラーフィルター(RGBW)を組み合わせる、サムスンよりも生産歩留まりの良い方式で55インチ有機ELテレビ発売を予定している。こちらも年内の製品投入とのことだが、サムスンよりも早いタイミングで、より多くの製品を出せるとの自信を見せていた。日本での発売も予定されているが、韓国と米国への出荷が優先されるため、あるいは日本は来年になってからの発売になるかもしれない。

 LGの方式では、色再現域がサムスンのES9500よりも狭くなるのだが、テレビに求められる色再現を考えた場合には、カラーフィルターでも十分との意見もあり、実際に発売されるまではどの程度の差があるのかは分からない。例によってLGブースのデモ映像は、そもそもの映像ソースの質が低く、こちらも会場で画質評価はできない。今月中にもジックリと時間をかけた評価が行える予定なので、詳しい報告は次回ということにしたい。

 有機ELテレビは、LG得意のチューナーユニット別体式の構成で、薄型のパネル背面はカーボンファイバープラスティックのパネルで強化することで剛性を確保。価格に関しては1万ドルとアナウンスされているが、サムスンの製品を含め大型の有機ELテレビは、まだ採算ベースに載せる価格ではない(本来なら300万円ぐらいになってもおかしくはない)。出荷は少量となる見込みだ。

 一方、日本の家電メーカーを含め各社が本気になり始めているのが高解像度化した4K2Kパネル採用のテレビだ。LGが開発した84インチの4K2K(正確にはクアッド・フルHD)は、LGだけでなくソニーと東芝も採用している。シャープの60インチパネル+ICCの参考展示も含め、製品の完成度や現時点での画質といった面では、有機ELよりもこちらの方が期待できそうだ。

ソニーが参考展示した84V型4Kテレビ

 「フルHDまでしか映像ソースがないのだから、4K2Kなんて意味がない」とはよく耳にする意見だが、映像処理技術の進歩は4K2Kパネルの良さを生かせる領域にまで到達している。次回はそんな4K2Kテレビの現状を、IFAおよびその後の追加取材から、紐解いていくことにしよう。

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