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UHD BDプレイヤーは年内に発売できるのか?――4KとHDRの最新事情IFA 2015(2/2 ページ)

» 2015年09月09日 00時01分 公開
[本田雅一ITmedia]
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ネット配信の4K映像もクオリティーを担保する枠組み

 実は4K映像(UHD)に関しては、UHD Allianceという業界団体で、ネット配信からBlu-ray Discのような光メディアまで、その流通手段を超えて高品位な映像と音質を担保するための枠組みを決めようとしている。

 UHD BDでは再生互換や品質面などを規格でタイトに決めているが、ネットを通じた配信は光ディスク規格ほど厳密にフォーマットが決められていない。例えば「NETFLIX」であればNETFLIX自身が提供するアプリ(あるいは動画規格)、「hulu」ならhuluと、それぞれに配信する形式を決めれば、他事業者まで意識した互換性を取る必要はないからだ。

 そこでUHD Allianceでは、UHDで配信される映像の品位を担保するために、”プレミアムUHDコンテンツ”のガイドラインを策定し、映像ソフトや対応機器に一定の枠を定めようとしている。UHD Allianceの幹事メンバーは、おおむねBD規格を策定しているBlu-ray Disc Association(BDA)の主要メンバーに、映像配信事業を行っている2社(NETFLIXとDirecTV)が加えたもので、ここでガイドラインが決まればネット配信の品質基準も定まってくる。

 このような状況なので、UHD AllianceではUHD BDと4K映像配信サービスで使われる映像の互換性や品質について、大きな乖離(かいり)がおきないよう考えられて作られているという。

 もちろん、インターネットでの配信(NETFLIXの場合で、映像ストリームだけなら14Mbps)とUHD BD(映像ストリームだけで最大128Mbps)では大きな帯域差がある。しかし、HDRソフトのダイナミックレンジの使い方や広色域、ハイフレームレート、イマーシブ・オーディオなど、”次世代”といえるだけのミニマム要求が決められ、また対応機器との再生互換性も、少なくとも映像そのもの作り方、ストリーム形式などについては担保されるようになる。つまり、UHD時代におけるBDプレイヤー/レコーダーとは、UHD BD再生機だけでなく、UHD対応の映像配信サービスも含めた幅広いコンテンツをサポートする再生機器になる。

 1990年代に大成功を収めたDVDによって、光ディスクを使った映像ビジネスのエコシステムは、電機メーカーによる利権主張の塊といった捉え方をみかける。BDとHD DVDのフォーマット戦争があったことも、そうした見方を強化している面はあるだろう。

 しかし時代は変化し、インターネットを通じた映像配信(ストリーミング、ダウンロード両面)ではカバーできない領域を光ディスクが補完するという役割に変化してきている。前述したように映像ストリームに利用できるビットレートには大きな違いがあり、すべてのスペースをネット配信だけで塗りつぶすことはできない。

 UHD BDプレイヤー/レコーダーとして販売される製品は、そのいずれもが光ディスクと各種メディア配信サービスを含めた統合型デジタルエンターテインメント端末へとその実態を変えることになりそうだ。

 一方、”放送”という側面から見た状況の中で見ると、4K放送は日本を含めいくつかの国で始まっているが、UHD BDや4Kの映像配信サービスでは導入が始まっているHDRに関しても放送規格への導入に向けて動きが本格化している。

 すでにHDR情報を映像データとして収めるための特性カーブ「Hybrid Log-gamma」については規格化が進んでおり、日本でもARIBで標準技術として採用される見込みだ。Hybrid Log-gammaは1200〜2000nitsという現実的な範囲内でのHDR情報を収められるよう作られたもので、通常のガンマカーブ特性に合わせて作られた標準ダイナミックレンジにしか対応していないテレビで変換なしに表示した場合でも、(その機器の能力範囲内で)違和感なく表示できるという技術だ。

 現在の所、Hybrid Log-gammaが標準ダイナミックレンジのテレビで表示したとき、いかに違和感なく表示できるよう(収録時の)特性を定義するか、NHK方式とBBC方式の両方が並立しているようだが、本格的に放送が始まるまでには収斂(しゅうれん)していくだろう。

BBCはすでにHDR Log-gammaを用いた実験放送を行っている

 BBCはすでにHDR Log-gammaを用いた実験放送をDVB-T2チャンネルを用いて行っており、LGエレクトロニクスのブースでOLEDテレビと組み合わせてデモが行われていた。デモはHDRでの表示のみだったため、単純に(映画のようなグレーディング処理を行わない)放送向けコンテンツがHDRとして成立しているところを見せていただけだった。

 オランダで開催される放送機器展のIBCでは、ソニーが比較デモを行う予定という。InterBEEでも同様の比較を確認できるはずだ。

 筆者は一足先にHybrid Log-gammaの効果を確認させてもらったが、標準ダイナミックレンジでも違和感がないどころか、バックライト輝度を持ち上げるとより高画質に見えるほどで、明部の色ノリもよく近年の広色域パネルの良さを引き出せると感じた。

 放送のHDR化も見えてきた。今後、その認知が拡がることで、HDR表示機能の有無と性能に対する重要性が増していくだろう。

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