ITmedia デジタルライフスタイル通信
ダイソンが電気自動車を開発する理由
Dyson(ダイソン)が電気自動車を開発していることを明らかにしました。創業者であり、チーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏が全社員宛のメールという形でアナウンスしたもので、既に自動車業界出身のエンジニアを含む400人以上の特別チームを編成し、2020年の発売を目指して開発を進めています。投資額は20億ポンド(約2900億円)以上に上ります。
ダイソンが電気自動車と聞いて、「やっぱり」と思った人もいれば、「あれ?」と違和感を覚えた人もいるのではないでしょうか。さまざまな技術革新を推し進める同社が、今後普及が見込まれる電気自動車に参入すること自体は決して不思議ではありません。しかし、後からジョインしたLED照明部門は別として、これまで同社は“空気を動かす”技術に着目し、“問題解決”を図ることに膨大なリソースを投じてきました。その成果は掃除機、扇風機、ドライヤーなどの製品として見ることができます。
では、電気自動車は空気を動かすことに関係しているのでしょうか。ダイソン氏が全社員に送ったメールを読むと、電気自動車開発に舵を切った理由が分かります。
ジェームズ・ダイソン氏は、1988年に米国国立労働安全衛生研究所が発表した、ディーゼルエンジンからの排気ガスと実験用マウスおよびラットの早期死亡を関連付ける論文を読み、問題意識を持ちます。ディーゼル車の排気ガスに含まれる“すす”は人体にも有害で、世界中の大気汚染の原因の1つです。
1990年、ダイソンは自動車の排気システムの取り付け、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手。1993年までに実用レベルの試作品を複数開発し、イギリスの「Blue Peter」(ブルー・ピーター)というテレビ番組で紹介しました。しかし、自動車業界の関心は低く、プロジェクトは頓挫してしまいます。
この頃、いくつもの自動車メーカーから「クリーンディーゼル」エンジンが登場。きれいな排気をうたい、各国政府の後押しも得て躍進しました。「ディーゼルエンジンがクリーンであるというのは矛盾した表現であるににも関わらず、です」(ダイソン氏)
周知の通り、2016年9月にドイツのフォルクス・ワーゲンが米国の排ガス検査をくぐり抜けるために不正なソフトウェアを使用していたことが発覚。その後も欧州メーカーを中心に続々と排ガス不正の疑惑が浮上しました。自動車メーカーが姿勢を変えようとしないことに気づいたダイソン氏は、電気自動車を見据えてバッテリー技術の開発に力を注ぐことを決めました。
それは“大気汚染”という、より大きな空気に関する問題を解決するため。「排気ガスに含まれる有害物質を取り除くのではなく、排気ガス自体を問題とみなし、それを解決する力が現在のダイソンにはあるのです」(ジェームズ・ダイソン氏)
※この記事はメールマガジン「ITmedia デジタルライフスタイル通信」からの転載(一部、加筆修正あり)です。
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