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» 2004年03月25日 14時38分 UPDATE

RFIDは“ビッグブラザー”を実現する? (1/2)

バーコードに代わる商品管理用インフラとして注目が集まる「RFID」。CeBIT 2004で、ドイツの市民団体と技術ベンダーがRFID技術についての議論を交わした。

[末岡洋子,ITmedia]

 Wal-Martなどの小売店が中心となり、SCM分野(サプライチェーンマネジメント分野)で次々とトライアルが開始され話題を集めているRFID(Radio Frequency Identification)。だが、プライバシー保護団体や市民団体からは懸念の声も上がっている。独ハノーバーで開催された「CeBIT 2004」では、ドイツの市民団体と技術ベンダーがRFID技術について活発な議論を交わした。

 ディスカッションの参加者は、RFID実装を手がけている米ePC Group欧州担当副社長のフィリップ・カルダーバンク氏、市民団体FoeBuDの共同設立者レナ・タンジェンス氏、RSA SecurityのCEO兼社長のアート・コビエロ氏の3名。ITセキュリティ分野の法に詳しいPricewater Cooperhouseのロバート・ニーデルメイヤー氏がモデレータを務めた。

 テーマは、「RFID──“ビッグブラザー”に見られている?」。英社会派作家のジョージ・オーウェルの小説『1984年』で描かれた監視社会のリーダー“ビッグブラザー”の引用だ。

 論議を呼んでいるのは、小売店でのRFID導入。RFIDタグを付けることにより、読み取り機が製品の位置情報を追跡し、収集データを処理できるようになる。Wal-Martなどの小売店では商品に付けて、万引き防止やリアルタイムのSCM実現を目指しているが(2003年11月の記事参照)、反対派はその先を問題視。RFIDが付いた製品の購入後、購入した人が動向を追跡される可能性がある点を指摘している。

 RFIDの実装については、小売店ではWal-Martのほか、英Tesco、英Marks&Spencer、独Metro Groupなどが次々と試験運用を開始、技術ベンダーではIBMやMicrosoft、Intelなど大手がRFIDへの対応を強化している。調査会社のVenture DevelopmentではRFIDソフトウェア・開発市場は年間37%増で成長すると見ており、2005年には21億3000万ドルに達すると予測している。

RFIDのメリット、デメリット

 最初のテーマとなったのは、RFIDのメリットについて。カルダーバンク氏が実装に関わったTescoでは、当初の万引き防止やSCM効率化に加え、製品が間違った場所に置かれているのを発見できるなどのメリットもあると述べると、タンジェンス氏は「消費者や市民にポジティブな影響は何も与えない。これら(小売店が行いたいこと)は、バーコードで十分可能だ」と反論した。

 「バーコードなら、消費者はそれを提示することにより、情報を提供していることを把握できる。だが、RFIDの場合、知らず知らずのうちに情報を提供していることになる」(タンジェンス氏)。世間で言われているRFIDのメリットは、小売店のメリットであって、“市民にはなんらメリットを与えない”というわけだ。

 これに対してカルダーバンク氏はまず、「読み取り機が読み取れる範囲は2〜3センチだ」と述べて、ビッグブラザー社会を実現するような“追跡”を恐れるのは大げさだと説明。車体と鍵のID番号が一致しないとエンジンがかからないようにする車の盗難防止技術(イモビライザー)などでは、既に人々にメリットを与えていることを強調した。

 カルダーバンク氏はさらに、小売店での消費者の反応は必ずしも悪くないと続ける。英国の高級品店で調査を行ったところ、商品にRFIDが付いていることを「知っている」と答えた顧客の9割が、RFIDタグを「気にしない」と回答したという。また、そもそもの発達の経緯が、現在の接触型の弱点である磨耗を解決する“非接触型”にあったとも述べる。

 「プライバシーを懸念する意見には同意する。だが、技術やイノベーションの進化を防止したり、後戻りさせることには反対する」とカルダーバンク氏。

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