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» 2004年04月08日 23時36分 UPDATE

見えてきたUWB 〜480Mbpsの「マルチバンドOFDM」チップが描く未来

超高速をうたう“UWB”の具体像が見えてきた。4月8日のIDF Japanでは、「マルチバンドOFDM」のトランシーバチップが実際に披露され、来場者の注目を集めた。夢の技術が、現実のものとなりつつある。

[杉浦正武,ITmedia]

 超高速をうたう“UWB”の具体像が見えてきた。4月8日の「Intel Developer Forum Japan Spring 2004」では、UWB技術を使った通信方式の1つである「マルチバンドOFDM」のトランシーバチップが披露され、来場者の注目を集めた。2005年末にも、各家庭で同技術を採用したデバイスが登場する見通しという。

Photo 2台のデバイス間をマルチバンドOFDMで結ぶ。未来のホームネットワークでは、マルチバンドOFDMで機器間が無線接続されるイメージ
Photo Wisair製のマルチバンドOFDMチップ「UB501」(中央)。写真はデモ用のものだが、最大480Mbpsのスループットを実現している
Photo こちらは、展示されていたアンテナ。もっとも、Wisairはチップに特化する予定なので、今後のさらなる開発はRFモジュールの専門ベンダーに委ねたいという

 UWBとは、Ultra Wide Bandの略であることからも分かるように、電波の出力を絞る代わりに3.1G〜10.6GHz帯という“広帯域”を利用して、高速通信を行う技術。米Intelなどは、この帯域を利用してマルチバンドのOFDM通信を行う方式――すなわちマルチバンドOFDMの標準化を目指している。

 マルチバンドOFDMでは、伝送距離が3メートル以内なら速度は最大480Mbpsを実現するとされている。6メートル以内なら200Mbps、11メートル以内なら110Mbpsとなる。

 Intelのシニア・フェロー兼コミュニケーションズ・テクノロジ・ラボ・ディレクタのケビン・カーン氏は、「UWBは、短距離で広帯域とポータビリティが求められる分野に最適」と話している。通信事業者が提供するアクセス回線の“ラストワンマイル”というよりは、むしろPC/プリンタ/デジカメ/モバイル端末などを家庭内で無線接続して、配線を簡略化してしまおうという発想だ。

Photo 会場で示された「利用モデル」。UWBの帯域幅があれば、HD品質の映像ストリームなども何の問題もなく行える

 IntelはマルチバンドOFDMの標準化を目指し、「MultiBand OFDM Alliance」(MBOA)を立ち上げている。背景には、IEEEでUWBの標準化作業が思うように進まなかったことがあるのだが、そのあたりのいきさつは1月27日の記事を参照してほしい。

 MBOA加盟企業は、IEEEとは別個に協議を進め、UWBプラットフォーム全体の物理層/MAC層インタフェースを策定してしまいたい考え。「今年中には、スタックを定義したい」(ケビン・カーン氏)。この上のレイヤーで、ワイヤレスUSB(2月19日の記事参照)やWiMediaといった“UWB向けアプリケーション”が稼動することになる。

Photo UWBとMBOA、ワイヤレスUSBの関係を表した図。「通信時の認証、暗号化などは、できればプラットフォーム層で処理してしまいたい」(ケビン・カーン氏)

Wisairのチップの実力は

 UWBの業界動向を概観したところで、今回Wisairが開発したマルチバンドOFDMチップ「UB501」に改めて注目したい。マルチバンドOFDMでは、UWBが使える3.1〜10.6GHz帯のうちおよそ4GHzを、528MHz単位で8バンドに分割する仕様になっている(下写真参照)。ちなみに、この528MHzの中にはサブキャリアとガードバンドを含む。

Photo 3.1〜7.4GHz帯で、7つのバンド(山になっている部分)ができていることが分かる。なお、デモに使用されたチップでは、8バンド目はとることができなかった

 このうち、1つの通信で利用するのは3バンドで、これで480Mbpsの通信速度を実現する。「なるべく早く市場に出そうということで、3バンドを利用するかたちだが、より多くのバンドを利用すれば高速化も可能」(Wisairの日本事務所を務める、イーコネクションズの南耕ニテクニカルマネージャー)。周波数ホッピングにより混信を避け、128デバイスを同一ネットワーク上で相互接続できるという。

 UB501は今後、民生機器やPC、モバイル端末に搭載される予定。ベースバンドチップなども今年中には開発をすませ、2005年にはチップセットとして量産体制に入りたいという。「つまり、ユーザーの手にUWB対応機が届くのは、2005年末ということになる」(同)。

 もちろん、この間に上記の標準化作業が進む必要があるほか、国内でもUWB向けの帯域が開放される必要がある。とはいえ、“夢のような技術”だったUWBが“現実”のものへと一歩一歩前進していることは確かだ。

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