2ちゃんの「良スレ」が電子書籍化されヒットするまで(2/3 ページ)

» 2004年08月30日 00時20分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

2ちゃんのスレッドが書籍になるまで

 バジリコが本にしたいと考えたのは、2ちゃんねるの掲示板の中でも「過激な恋愛板」にあった某スレッド。板の住人が、次々と過激な性体験を書き込む……という主旨のスレッドだった。

 「実際に読んでみると、どれもこれもいい話。本として成立している」(野辺名氏)。そこで、ひろゆき氏に出版の話をもちかけることになる。

 気になるのは、著作権の問題だ。先の「死にたい」でもそうだが、掲示板の書き込みには無数の「書き込んだユーザー」がいる。作品自体は編集側に著作権が発生するとしても(=編集著作物)、書き込んだ各ユーザーに「著作隣接権」が発生するようなら、収益の配分は非常に困難になる。

 だが、幸いにしてこの点は容易に解決できた。2ちゃんねるは「書き込んだ瞬間、その内容は2ちゃんねるに帰属する」というサイトポリシーを持っていたのだ。

 「権利や責任などは、2ちゃんねる側がホールドしている。おかげで、交渉先はひろゆき氏の1カ所で済んだ」(中川氏)

 出来上がった書籍「忘れられないラブ」の奥付を見ると、「選者:2ちゃんねる、発行所:バジリコ」という記述になっている。

Photo 「忘れられないラブ」の構成。2ちゃんねる同様、1つの書き込みで1話が完結するスタイルだ。編集にあたっては、本になった内容の数十倍の分量に目を通し、面白いところだけ抽出したという

ネット本を、電子化すべきでない?

 ここで、1つの疑問が生じる。ネット上のコンテンツを本にするのはいいとしても、それを「携帯でダウンロード販売する」ことが有効なのかどうか。

 実際のところ、ネットのものを紙に落とし込むならともかく、一度紙になったものをまたネット(携帯コンテンツ)に戻す作業に、抵抗を感じる人間もいたと野辺名氏は話す。

 だが、「携帯とネットは、また違うのでは」という考えがあった。そして、実際に試みた結果が冒頭の成果につながったわけだ。

電子書籍版「忘れられないラブ」。書籍の内容を7つに分割して、バラ売りしている。一話一話は短いので、収録ストーリー数が少なくなるかたちだ

 理由はどこにあったのか。実は、ミュージック・シーオー・ジェーピーが運営する「どこでも読書」のユーザー層を見ると、入会者の男女比は「1:3」で女性が多い。

 さらに、女性ユーザーの27%は「20代未満」、54%が「20代」となっている。「(どこでも読書の会員は)PCでネットを楽しむユーザーとは、層が違うのかもしれない。これがPCのパワーユーザーなら、自分で掲示板にアクセスして読むところだ」。

 もちろん、携帯向けに分量を少なくして100円で売るなどの工夫も影響しているだろう。加えて、「ネットの文章は短くて読みやすい。携帯に向いている」(野辺名氏)という点も見逃せない。

 バジリコの中川氏はまた、ネット上ではコンテンツが“玉石混交”だが、編集者の手をとおして書籍化されたものは信頼されるという違いがあるのでは、とも付け加えた。

 「電車男」が電子書籍化される可能性は?

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