コンテンツビジネス、活性化の鍵は配信経路の多様化

» 2004年09月15日 12時06分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 日本のコンテンツサービスの充実ぶりには目を見張るものがある。大容量コンテンツのやりとりが可能な3G、通信料を気にせずダウンロードできる定額制などの新しいサービスが、さらにコンテンツの幅を広げている。

 こうした流れの中にあって、“1対1のプル型ダウンロード”が限界を迎えている──。こう話すのは、オープンウェーブシステムズ(以下、オープンウェーブ)のソリューションアーキテクト、富岡宏氏だ。

コンテンツ流通に変化の兆し

 ユーザーの視点から見た問題は「3Gコンテンツはファイルサイズが大きく、ネットワークが速くはなったとはいえ、ダウンロードには時間がかかる。コンテンツの数も増え、種類も多様化しているから、ユーザーが欲しいコンテンツを見つけるのも大変になっている」(富岡氏)というものだ。

 通信キャリアやコンテンツプロバイダも問題を抱えている。キャリアは、定額制導入に伴ってトラフィックが増え、設備投資が必要になるにもかかわらず、ユーザーから得られるデータ通信料には(定額制のため)上限が見える。コンテンツプロバイダは、高騰する一方のコンテンツ開発費やサーバの維持費をどう賄うかが課題だ。

 こうした問題を解決する方法として、オープンウェーブが提案したのが、コンテンツの「転送」と「お試し機能」。コンテンツ本体と使う権利を分けて管理・配信することで、一方通行だけではないコンテンツ流通が生まれる。それがコンテンツビジネスの活性化につながるというものだ(2003年10月の記事参照)

 同社が次の解決策として挙げるのは、効率的な配信管理。各キャリアはマルチキャスト(2月3日の記事参照)や、ブロードキャスト配信を視野に入れたサービスを計画している。また地デジやデジタルラジオとの融合が進めば、配信経路も携帯電話網だけではなくなる可能性が出てくる。

 「膨大な数のコンテンツがさまざまな流通経路を通じて配信・販売されるようになれば、複数の配信経路を効率的に使うためのインフラが必要になる」(富岡氏)

 効率的な配信管理は、エンドユーザーやキャリア、コンテンツプロバイダに恩恵をもたらすと富岡氏。「キャリアは配信経路が分散されることで設備の負荷を軽減でき、コンテンツプロバイダは、配信経路が増えることでコンテンツの販売機会が増える。ユーザーはWebで検索する以外の方法でもコンテンツを入手可能になる」(同)。

 同社のモバイルコンテンツ管理・配信サーバ「Openwave Download Manager」(ODM)は、コンテンツ転送やお試し機能に加え、ブロードキャストやマルチキャスト配信への対応を強化することで、日本市場にアプローチする考えだ。

 コアの部分はコンテンツ管理と配信、著作権管理の3つで構成されるが、それぞれの部分にキャリア独自の開発を行うためのSDKを用意している。「使えるものから導入してもらうなど、既存のシステムに柔軟に取り入れることができる」(富岡氏)。また1つのコンテンツを、従来型のダウンロード、ストリーミング、ブロードキャストと異なるサーバを経由して配信する場合でも、どんな経路で送ったかをダウンロードサーバ内で管理できため、料金の徴収も確実に行えるという。

異業種参入でコンテンツビジネスに新しい要素も

 今後、携帯電話市場には、これまで想定されていなかった異業種の参入も始まると富岡氏。携帯電話ビジネスについては、ソフトバンクやイーアクセスといった企業が参入に向けて動いており、コンテンツビジネスではテレビ局が放送と通信の融合で何ができるかを探っている。「今まではユーザーと通信キャリア、コンテンツプロバイダの3者で成立してきたコンテンツビジネスに、新しい要素が加わる兆しが見える」(同)。

 3Gへの移行によって変化を余儀なくされるコンテンツビジネス。オープンウェーブはシステム面でのサポート準備を進めて、“その時”に備える。

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