ボーダフォンが発表した3G端末は(9月22日の記事参照)、WAPとMMSを採用する。日本では聞き慣れないMMS(用語参照)だが、海外では標準的なサービスとしてユーザー数を着々と増やしている。
MMSとはMultimedia Messaging Serviceの略。海外のGSM方式およびW-CDMA方式の携帯電話で採用されているマルチメディア対応のメッセージサービスだ。写真や音声、動画を添付したテキストのメッセージを携帯電話から送受信可能。日本でいうところの「写メール」と似たようなサービスだ。
海外のGSMでは、古くからテキストのみのショートメッセージサービス「SMS」(用語参照)が使われてきた。SMSはGSMの仕様として規格が標準化されており、GSM端末ならキャリアやメーカーを問わず、相互のやりとりが可能。事業者や端末メーカー、国を超えて利用できるのが大きなメリットだ。
日本の通信キャリアもショートメッセージサービスを提供しているが、PDC向けサービスは、異なるキャリア間でのやりとりを想定したものではなく、相互接続の関係は複雑。「相手のキャリアが分からなければEメールを使う」のが主流で、海外ほどには使われていないようだ。
日本の場合、マルチメディアデータの送受信はE-mailサービスの拡張で対応してきた。各事業者ごとに「写メール」「iショット」「フォトメール」といった、独自のマルチメディア対応のメールサービスを提供している。
一方海外では、マルチメディア対応のメッセージサービスを開始するにあたってSMS同様、通信事業者や端末メーカーの敷居を超えた「標準化」が模索された。その結果、標準規格として採用されたのがMMSだ。MMSは現在、WAPフォーラムや3GPPで標準化されており、海外のGSMやW-CDMAのみならず、CDMA事業者にも採用が進んでいる。
MMSで利用できるメディアのフォーマットは、静止画がJPEG/GIF/WBMP、動画がMPEG-4、音声がAMRなど。画像の最小サイズは160×120ピクセルで、MMS対応端末は最低限、このサイズの表示ができるようになっている。もちろん端末の画面サイズが大きければ、より大きいサイズの画像表示も可能だ。PIMデータのvCalendarとvCardにも対応しており、これらのデータをMMSで送信することも可能。メッセージサイズは特に規定されておらず、利用する事業者ごとに最大容量が決められている。
MMSはSMS同様、基本的には送信先として携帯電話の番号を入力する。E-mailアドレス宛ての送信にも標準で対応していることから、テキストメッセージだけをMMSで書いてPCのE-mailに送れば、普通のE-mail代わりにも利用できる。
MMSはメッセージサービスだけではなく、マルチメディアコンテンツを含んだメッセージも送受信できる。そのため“コンテンツの配信手段”としての利用も広がっている。これはMMSをWAPサービスと組み合わせることにより実現されている。
例えばコンテンツダウンロードサービスの場合、ユーザーがWAPブラウザでコンテンツの一覧画面を閲覧し、ダウンロードするコンテンツ(着メロや待受画面など)を選択すると、コンテンツがMMSとしてユーザーに配信される。ユーザーは受信したMMSを開くことで、着メロや待受画面を保存し、利用できる。
“ニュース動画や道路交通情報を決まった時間に流す”といった生活情報の配信、映画のプロモーションビデオや新譜のサンプル音楽を流すエンタテインメント情報の発信など、情報配信サービスのベースとしても、MMSの活用が広がっている。
3GではMMS内の画像とテキストのオーバーラップやハイパーリンク設定にも対応。今後3Gの普及とともに、MMSは単なる「写真や動画の送信」を超えて、よりリッチなコンテンツ配信のプラットフォームになると見られている。
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