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» 2004年10月15日 23時56分 UPDATE

周波数をよこせ〜携帯キャリア、ソフトバンク、イー・アクセスが激論

総務省のカンファレンスで、移動体の既存事業者と新規事業者が議論を交わした。携帯3キャリア&ソフトバンク&イー・アクセスの、オールスターキャスト。

[杉浦正武,ITmedia]

 移動体の新規参入をめぐる動きが、活発化している。ソフトバンクが800MHz帯を要求して行政訴訟に踏み切ったほか(10月13日の記事参照)、イー・アクセスは1.7GHz帯での新規参入を表明している(10月14日の記事参照)。そんな折も折、総務省で携帯キャリア3社とソフトバンク、イー・アクセスが参加するパネルディスカッションが行われた。

 10月15日、総務省で開催された「電気通信事業分野の競争評価についてのカンファレンス」では、既存事業者としてドコモとau、ボーダフォンの各代表者が出席。新規事業者としてソフトバンク、イー・アクセスの代表者も出席し、それぞれの立場から移動体市場について議論を交わした。

Photo 上列左からイー・アクセスの種野COO、ドコモの辻村経営企画部長、ソフトバンクの宮川取締役、下列左からKDDIの長尾広報本部長、ボーダフォンの五十嵐常務

「MVNOに応じてくれない」――新規・既存間で火花

 会場ではテーマに沿って、移動体市場が「寡占市場」なのか「十分競争的」なのかが議論された。前者の立場に立つソフトバンクとイー・アクセスは、寡占のため携帯料金が高止まりしていると指摘。新規参入を認めれば、料金は安くなるとした。

 一方携帯キャリアは口を揃えて、「現状は十分に競争的だ」と主張。世界的に見ても低廉な料金で、新サービスが続々と提供されているとしつつ「単に値段が半分になったかどうかで、競争的かどうか判断すべきでない。(競争の結果)高機能なサービスが提供され、ユーザーメリットが生じているケースもある」とした。

 議論がヒートアップしたのは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)に話題がふられた時。MVNOとは、通信事業者から設備を借り受けて通信サービスを行う事業者、およびそのサービスを指す。イー・アクセスCOOの種野晴夫氏は、3キャリアが帯域を寡占している結果、国内でMVNOがいまひとつ発展しないと話す。

 「MVNOは、事業者間の話し合いによって行われるべきとされているが、その話し合いで受けてもらえない。(既存事業者の帯域がレンタルで)利用できるなら、投資の効率化も図れるのだが、呼応してこない」

 ソフトバンクの宮川潤一取締役は、「自分のところが(トラフィックで)パンパンだから人に貸すなんてできないよ、というのは分かるのだが、お国から自動でもらった帯域は貸すような仕組みがあってもいいのではないか」とコメント。「貸し料金が高くつくようなら、借りる意味はない」とも付け加えた。

 両氏に一致するのは、「既存事業者に再販を“義務づける”べきだ」という点。これには携帯3キャリアとも強く難色を示した。

 まずボーダフォンの常務執行役、五十嵐善夫氏が「諸外国の例を見ると、MVNOの提供義務がある市場で多くの失敗例がある」と指摘。アイルランドや香港などでは、MVNOの提供義務があるが、いまひとつ制度が活発に利用されていないという。

 ドコモ経営企画部長の辻村清行氏は、キャリアとしてMVNOに応じられないのは自明だと本音を明かした。

 「自分達の客を収容するため、設備投資を短期間でどんどんしなければならない。それだけのリスクをとっている。それ(=自社用の帯域)を容易に他人に貸すということは、ロジックとしてあり得ない」

 辻村氏は、キャリアはネットワークカバレッジも気にするものだと話す。「携帯はつながってなんぼだから、神経を使っている。競争で渡すことはない」。

 もっとも、WIN-WINの関係が築けるなら、帯域を貸すこともあるという。KDDIの渉外・広報本部長の長尾哲氏は、一例としてトヨタ自動車のG-BOOKも一種の“帯域貸し=MVNO”と分類されることがあるとした上で、「自動車の利用時間というのは、24時間のうち5%程度。そのうち通信に利用するのは一部」のためMVNOも成立するとした。

 「電波が空いていて、WIN-WINの関係なら可能。しかし限定的になる」(辻村氏)

ソフトバンク&イー・アクセスの主張

 これには、ソフトバンクが真っ向から反論。宮川氏は「そんな考え方でWIN-WINの関係でやろうとしたって、それに応じる会社は1社もない」と吐きすてた。

 「利権でもらっている電波は渡さない、と言っているのと同じだ。ちっぽけなベンチャーがやりたいと言ったところで、(企画を)社長にあげてどうのこうの……といっているうちに2年、3年と経ってしまう」

 同氏はまた、NTT東西のダークファイバも「総務省が頑張って開放させた」と例を挙げ、「ノラリクラリではMVNOはない。行政としてやりたがっている人間にやらせる権利を認めるべき」とした。

 イー・アクセスも「MVNOは、制度化されていてチャンスがあれば参入する。我々も検討したが、(現時点では)事実上あり得ない。トヨタはやってますというが、ではどういう条件なのかオープンにしてもらいたい。何か、自分の親せきだけはやらせるような、そんなMVNOはMVNOではない」と斬り捨てた。

ドコモ V.S. ソフトバンク

 この発言を聞いていたドコモの辻村氏は、ソフトバンクが「(ドコモは)電電公社時代に帯域を自動的にもらった」と繰り返すことに反発。「一言だけ」とマイクを取った。

 「電電公社時代のことを言うが、92年のユーザー数は80万で、それもアナログだった。今は4500万になっているが、その間ドコモとしてデジタルに変え、3Gに替え、リスクをとってやってきた」

 「命がけの投資」(辻村氏)をしてきたネットワークや帯域を、サッと取り上げられるようでは意欲がなくなるとし、「そんなことでは市場がどんどんゆがんでいく」と声のトーンを上げる。新規事業者も、リスクをとるべきだとした。

 宮川氏も「一言だけ」とマイクをとり「(電電公社)当時の基地局を、1つも使っていないと言い切れるのか」と応酬。「我々も、リスクをとってやりたいと思っている。早く電波をよこせと思っている。そこは誤解のないように」


 MVNOの議論にしても、800MHz帯/1.7GHz帯の議論にしても、元を正せば無線の周波数が有限であり、これを既存事業者、新規参入事業者間で取り合っていることに原因がある。議論は、双方の立場を際立たせるものとなった。

 モデレータを務めた甲南大学の佐藤治正教授は、ともすれば過熱しがちな議論のなだめ役に回る。「(同席した)総務省の担当者が、これを参考に『素晴らしい行政を行います』といってくれれば嬉しいのだが」と発言、会場の雰囲気をなごませた。

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