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» 2004年10月27日 12時05分 UPDATE

ITS世界会議に見る、クルマとケータイの融合シナリオ

10月18日から24日にかけて、名古屋市で第11回ITS世界会議が開催された。モバイルクロスオーバーの再開第1回は、ITS世界会議のレポートをお届けしたい。

[神尾寿,ITmedia]

 10月24日まで、名古屋市で第11回ITS世界会議が開催された。ドコモやKDDIも自動車との連携技術を展示し、クルマと携帯の融合シナリオの一端をかいま見せた。

ITS世界会議とは

ドコモは、FeliCa、モジュールを積極アピール

 携帯電話キャリアを中心に、通信事業者が積極的に参加していたのも本会議の特徴だ。企業出展ブースではNTTグループとKDDIが参加。携帯電話サービスを軸に積極的な展示を行っていた。

 ドコモブースの目玉は、モバイルFeliCaと通信モジュールを使った次世代カーモビリティのコンセプト展示である。これは専用のシミュレーターマシンによるもの。

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 まず、ドライバーはクルマに乗り込むと手持ちのFeliCa携帯電話を“かざす”ことでユーザー認証を行う。するとエンジンが始動し、シートポジションが自動調整される。

 走行中は、テレビ電話やメールがハンズフリーで利用できるのだが、これは車載通信モジュールによるものだ。今回、シミュレーターには新開発のFOMA通信モジュールが装着されていた。ドコモが車載通信モジュールを展示するのは今回が初めて。このモジュールはデータ通信だけでなく、通話やテレビ電話機能にまで対応するのがポイントだという。

 また、シミュレーターでは歩行者の持つ携帯電話が位置信号を発信し、見通しの悪い交差点でもドライバーが歩行者の存在を把握できるといったデモも行われた。歩行者の安全を確保する歩行者ITSとして、位置発信器を歩行者に持ってもらうコンセプトは、これまでも多く存在する。しかし、その発信器を「ケータイで」というのは、実用化されれば普及の可能性が高いビジョンである。特に歩行者事故での被害が甚大な「子ども向け」のソリューションとしてぜひ実現してもらいたい。

 11月1日から施行される道路交通法改正対策として、Bluetooth関連の展示も積極的に行われていた。

 既存のBluetooth対応端末「F900iT」と、Bluetoothハンズフリー機器の展示があるのはもちろんだが、今回、初公開の製品としてモバイルキャストのFOMA用Bluetoothアダプタが展示されていた。

 これは900iなどFOMA端末にBluetooth機能を付加するもので、N900iとF900iではBluetoothヘッドセットなどによるハンズフリー通話にも対応する。さらに「901iシリーズでは全機種Bluetoothアダプタによるハンズフリー通話をサポートする」(説明員)という。クルマを運転するFOMAユーザーは、901iシリーズとBluetoothアダプタのセット購入を検討するといいだろう。

its3.jpg FOMA向けBluetoothアダプタ

KDDIはモジュールとWINを積極展示

 一方、KDDIはトヨタのG-BOOKを筆頭に商品展開が進む通信モジュールや、携帯電話サービスの「CDMA 1X WIN」のポテンシャルについて積極的に展示していた。

 KDDIの通信モジュールは、クルマ関連ではトヨタ、パイオニア、いすゞが採用している。トヨタ、パイオニアが「CDMA2000 1x」ベース、いすゞが「IS-95b(cdmaOne)」ベースのタイプを利用。事業者ごとにモジュールの構造や料金設定を行う自由度の高さがポイントだ。ドコモのFOMA通信モジュールと違い、データ通信機能以外の多機能化は行わない方針だが、「BREW搭載は今後のモジュール戦略で重要な要素」(KDDI社員)だという。

its4.jpg アルプス電気製の通信モジュール
its5.jpg 1X WINを使ったカーナビ画面のデモ

 CDMA 1X WINは、そのスピードの可能性を見せるデモを参考展示していた。カーナビに渋滞情報を表示し、動画で渋滞の状況を見せるデモンストレーションを実施。スムーズな動画表示ができる点をアピールしていた。しかし、CDMA 1X WINはカーナビなど外部機器からのデータ通信にはパケット料金定額制が適用されない。「(CDMA 1X WINで)クルマからの通信料金をどう設定していくのかが、今後の課題になる」(KDDI社員)と言う。

 KDDIブースでは、地上デジタル放送対応の携帯電話を用いた参考出展も行われた。これはCEATECの展示内容と同様だったが、地上デジタル放送の受信環境として、携帯電話より先にカーAV機器の対応が進むと考えているという。その上で、地上デジタル放送と連動したコンテンツ利用で、携帯電話を使ってもらうビジネスについて検討しているという。

 冒頭で述べたとおり、安全・環境、そして持続性のある発展のために、クルマがIT技術を飲み込み、高度に情報化されるのは、自動車産業の既定路線になっている。その上で、携帯電話ビジネスと関わり、クロスオーバーする部分が出てくるだろう。クルマとケータイが今後、さらに関係を深めていくだろうことは間違いない。

神尾寿──通信・ITSジャーナリスト

 IT専門誌記者、大手携帯電話会社での嘱託コンサルタント業務を経て独立。通信およびITS分野のビジネスおよびニーズ分析を専門にする。IT専門誌、ビジネス誌から一般誌まで幅広く連載を持つ。著書は「自動車ITS革命」(ダイヤモンド社)。IRI-コマース&テクノロジー社客員研究員。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。

▼駐禁取締強化で活気づく「満車・空車情報」コンテンツ
6月に公布された改正道路交通法の影響は、運転中の携帯規制強化だけではない。ドライバーにとってさらに影響があるのが、2年後に施行される駐禁取り締まりの大改革だ。そして、これは新たなコンテンツニーズも生み出す。

▼「運転中の携帯規制」のインパクト
改正道路交通法が成立し、運転中の携帯利用に有無を言わさず罰金がかかるようになる。それでも、車内で携帯を使いたい人はどうしたらいいのか。現時点で合法的に利用するならイヤホンマイクだが、理想的なのはBluetoothのヘッドセットだ。

▼携帯電話が財布になる日
料金代行徴収の拡大、非接触ICチップ、赤外線を使ったクレジットカード決済……。携帯電話を財布にしようとする試みは、大きくこの3つが進行中だ。それぞれ得手不得手があり、課題もそれぞれ異なる。現在の状況をまとめ、「携帯電話はどうやって財布になっていくのか」を考えていこう。

▼急接近する自動車とケータイ
携帯電話と自動車。一見すると異なる“業界”が互いに急接近している。両者のクロスオーバーがモバイル業界に与える影響は大きい。

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