急接近する自動車とケータイ:モバイルクロスオーバー(1/5 ページ)

» 2004年01月13日 15時53分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 「なぜ、携帯電話(移動通信)と自動車を専門にしているのですか?」

 筆者は出会う人々によく問われる。答えは単純。両者の本質には似ている部分が多くて、しかも2つは太い地下茎でつながっているからだ。地続きといってもいい。

 そもそも携帯電話は「自動車電話」から発祥している。旧電電公社が始めた最初の移動電話は自動車向けであるし、携帯電話黎明期には、トヨタ自動車が日本移動通信(旧IDO、現KDDI)、日産自動車がツーカーグループに出資。日産はその後手を引いたが、トヨタはIDOがDDIとKDDと合併してKDDIになる時も、出資比率を上げて影響力を強めている。

 トヨタ自動車がここまで携帯電話に執着するのは、“移動する個室”であるクルマという空間に、コミュニケーション機能が欠かせないと考えているからだ。同社は携帯電話以外にも、クルマ同士が直接ワイヤレス通信でつながる「車車間通信」の研究に力を入れている。

 一方、携帯電話業界にとっても、“車内”のコミュニケーションニーズは重要な市場だ。電車移動の多い都市部の読者には想像しにくいかもしれないが、クルマをスニーカー感覚で使う地方では車内にいる時間が長い。そのため携帯電話は、個々人を結ぶ重要なライフラインになっている。電車移動中のトラフィック(通話・通信量)はその大半がメールやコンテンツだが、クルマでの移動中は音声通話が中心。

 「利用頻度の違いがあり一概に言えないが、(通話中心の)自動車内トラフィックのほうが1回あたりの売り上げは大きい。3Gのエリア展開でも、都市部のユーザーは建物内や地下鉄駅でのエリアを重視するが、郊外や地方では『(クルマで)移動中に切れない』ことが重要」(ドコモ関係者)

 このように携帯電話と自動車は、大きく関わり合いながら発展してきた。ただ、あまりに「当たり前」になりすぎていたので、目立たなかっただけなのだ。

クルマ向けの新たな通信サービス「テレマティクス」の登場

 しかし、1999年のiモード登場以降、質的に大きな変化を遂げた携帯電話に対して、クルマでの携帯電話利用は「音声通話中心」と旧態依然としている。

 そのような中、クルマと携帯電話を融合させて、新たなサービスやビジネスを生み出そうという動きが活発になってきた。その第1弾が、クルマ向け情報サービスを実現する「テレマティクス」だ。

 テレマティクスは自動車向け情報サービスの総称で、メールなどのコミュニケーション機能と、車内への情報を提供するサービスがある。

 あまり知られていないが、テレマティクスの歴史は古く、1998年に産声をあげていた。本田技研工業(以降ホンダ)が「インターナビ」、トヨタ自動車(以降トヨタ)が「モネ」と呼ばれるテレマティクスサービスを始めている。

 しかし、1998年当時は携帯電話のiモードすら世に出ていない。携帯電話・PHSによるデータ通信は揺籃期。さらに車載向けの情報端末もCPUの速度が非常に遅く、普通のカーナビすら未成熟な時期だ。モバイル通信インフラ、端末の両方でテレマティクスを迎えるには早すぎたのである。

 テレマティクスの節目になったのは、2002年。この年、自動車メーカー大手3社が揃って新しいテレマティクスを投入。トヨタの「G-BOOK」、日産自動車の「(カーウイングス)」、ホンダの「インターナビプレミアムクラブ」が登場した。2003年にはこれらテレマティクスサービスは、各社の純正カーナビの基本機能になり、ほぼすべての乗用車でオプション装着と利用が可能になっている。

 ほかにも市販カーナビメーカーのパイオニアが、通信モジュール内蔵のクライアント=サーバ型通信カーナビ「Air Navi」を発売。テレマティクス分野に進出している。


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