急接近する自動車とケータイモバイルクロスオーバー(4/5 ページ)

» 2004年01月13日 15時53分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 ただし、カーウイングスは最新の通信インフラへの対応が最も遅れている。基本は第2世代携帯電話(PDC)によるダイヤルアップ接続で、auのCDMA2000 1xにケーブル交換で対応するものの、パケット通信は利用できない。NTTドコモのFOMAは未対応だ。しかし、日産自動車はNTTドコモと3G携帯電話分野におけるテレマティクス利用開発で提携しているので、今後、FOMAをはじめ3G対応を進めていくだろう。

新たなカーナビの可能性〜パイオニアの「Air Navi」

パイオニア「Air Navi」の本体。外観は普通のカーナビだが、よく見ると本体右上にアンテナが付いている

 パイオニアの「(Air Navi)」は、自動車メーカー3社のテレマティクスとは毛色が若干異なる。

 Air Naviは本体内にKDDIのCDMA2000 1xネットワークを利用する通信モジュールを内蔵した通信カーナビ。最新の地図データーを逐次サーバからダウンロードし、目的地やルート検索などほとんどの処理をサーバで行う。サーバ内の地図や施設情報はおよそ2カ月に1度程度アップデートされており、ルート検索アルゴリズムやメニューインタフェースも通信経由でバージョンアップ可能だ。このためカーナビにありがちな、購入後に「情報や機能が古くなる」心配が一切ない。

 通信料は月額1980円の基本料に含まれており、使い放題。一般的に市販カーナビの地図データの更新は1年1回で2万円程度。Air Naviで利用料の年間一括払いをすると2万1600円。最新データや機能がリアルタイムに利用できることを鑑みれば納得できる価格だ。

 また、ネットワークに常につながるAir Naviでは、県境をまたいだ渋滞情報も調べられる「オンデマンドVICS」や、詳細な天気情報を地図上にオーバーレイ(重ね合わせ)表示する「ウェザーライブ」、そして速度違反自動取り締まり装置オービスの位置を有料で地図上に表示して通過直前に警告する「オービスライブ」などが利用できる。これらは通信と融合したAir Naviならではの機能だろう。

 Air Naviは発売から1年がたち、機能的に大きく洗練された。パイオニアはAir Naviを“通信カーナビ”という新たなジャンルを開拓する戦略商品に位置づけており、時間と手間をかけて育てている。

 一方で、カーナビの“主力”はHDDやDVDといった大容量ストレージを使ったタイプであり、昨今のトレンドはDVD再生やMP3リッピングが可能なAV融合型だ。Air Naviの月額1980円という料金設定も、多くの一般ユーザーには受け入れられにくい。おそらくパイオニアはAir Naviをテレマティクス分野の先兵として息長く育てながら、そこで得た技術やノウハウを、主力のHDDやDVDカーナビに生かす方針だろう。また将来的に、KDDIから1x EV-DOベースの内蔵通信端末が登場すれば、料金が安くなる可能性がある。

(上)Air Naviはサーバ側で変更された地図をダウンロードして、常に地図情報を最新に保てる。地図メンテナンスは自動でも可能(中)オービスの位置を事前に知ることができる「オービスライブ」は有料サービス(下)オービスライブ使用中の画面。位置がアイコン表示されるほか、警告音も鳴らしてくれる

Blouetooh、モジュール、FeliCa〜クルマのニーズがケータイに影響!?

 クルマと携帯電話の接近は、クルマ側のみから起こっているワケではない。携帯電話もまた、クルマ側のニーズに影響されている。

 その顕著な例が、KDDIが注力するモジュール分野だ。同社はCDMA2000 1xベースの通信モジュールをトヨタ自動車、パイオニアに提供中で、両社のテレマティクス事業を陰から支えている。昨年末に発売されたCDMA 1X WINと同じ1x EV-DOベースの通信モジュールも、「携帯電話型にそれほど遅れることのない時期に投入する」(KDDI幹部)と語っていた。

 ただし、車載端末の開発は携帯電話と異なり、数年単位のプロジェクトなので、1x EV-DOモジュール内蔵の車載器登場は早くても今年末か、来年以降になるだろう。通信モジュールに関しては、先行するKDDI、今後の登場が予想されるNTTドコモともに、将来はアプリ機能まで実装された多機能型になる可能性もある。

 ほかにも、モジュールに関しては、高性能かつ汎用性のあるCPUを使って、基本制御ソフト(ファームウェア)のダウンロード書き換えで通信機能やモードそのものを変更・バーションアップできる「ソフトウェア無線技術」の開発が進んでいる。この技術が実現すれば、同一のモジュールで携帯電話ネットワークと無線LANといった異なるワイヤレス通信が切り替えて使えるほか、ネットワーク側の進化にモジュール側はファームウェアのアップデートだけで対応できる。

 クルマのモデルチェンジサイクルは5年〜7年と長く、ユーザーの買い換えサイクルも携帯電話ほど早くない。その中にある車載端末が最新の通信インフラを常に使える技術として、ソフトウェア無線は役立つ。ソフトウェア無線技術はKDDI研究所やトヨタ自動車が熱心に研究開発を進めている。

Blouetoohの搭載も、クルマが牽引する!?

 「眠れる獅子か、死に体か」と言われるBluetoothも、叩き起こすのはクルマのニーズになりそうだ。テレマティクス利用時にBluetoohのほうが使い勝手がいいというのもひとつの理由だが、それ以上に影響がありそうなのが、警察庁が進める「改正道路交通法」である。

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