スカパー!携帯向けドラマ配信に秘められた「狙い」(1/2 ページ)

» 2004年11月18日 11時26分 公開
[西正,ITmedia]

スカパー!の携帯向けドラマ配信の背景

 スカパー!が10月から、80年代の青春模様を描いたオリジナル実写ドラマ「横浜エイティーズ」をKDDIのau携帯の「EZチャンネル」向けに配信している。

 コミック誌に連載中の、80年代の大学生の恋愛模様などを描いた人気マンガ「東京エイティーズ」の番外編として制作したもので、「東京エイティーズ」と同じ時代設定で舞台を横浜に移し、新たな登場人物によるドラマが展開されている。10月から来年3月までの半年間、毎週月、木曜に配信し、計51話となる。1話は約2分半で、携帯電話の画面サイズや画質などを考慮して制作。各話ごとに見どころを設けてある。

 携帯電話向けに映像コンテンツを配信することについては、10月の後半から独自衛星を使うモバイル放送(モバHO!)が始まっており、地上波によるワンセグ放送も2005年度には始まる予定だが、ドラマ配信についてはスカパー!という意外なプレーヤーが両者に先行して行う形となったわけだ。

 その背景には、スカパー!独自の“ペイテレビ発コンテンツ”を開発していこうとの思いがある。スカパー!が今後、加入者数を伸ばしていくために、ペイテレビの魅力をアピールすることが必要であり、これまでのように地上波のお古ばかりを流していたのでは、事態の改善が難しいからだ。

 これは、日本の映像コンテンツ産業の実態を制作費の面から分析してみれば分かる。

 映画やスポーツの放映権の購入費を除いて、1年間にコンテンツ制作に使われているコストは、NHKで2800億円弱程度。民放キー局5社の合計で3200億円弱、準キー局をはじめとするローカル局各社の合計が500億円弱で、地上波放送局系の合計が6500億円弱に達する。

 一方、映画産業の制作にかけられているコストや、ブロードバンド向けコンテンツの制作コストを合わせた合計が1000億円強程度。コンテンツ制作コストの合計は推計で7500億円程度になるが、このうちの8割から9割は地上波放送局が拠出している計算だ。ブロードバンドにコンテンツが回らないとよく言われるが、二次利用についても当然ながらコストの拠出者である地上波放送局側の事情が強く反映される。そう考えれば無理からぬ話である。

 こうした構造を崩していくためには、欧米型のように、コンテンツの制作に当たって、放送局からの回収に依存することのないモデルを構築するしかない。ブロードバンド(ストリーミング、オンデマンドやDVDなどへのパッケージ化、CSのペイチャンネルの売り上げでコストを回収し、その上でもし地上波が買ってくれるというのなら、地上波にも放映権を売って儲ける、というモデルである。

 今年度に入り、スカパー!がコンテンツへの投資に積極的になっているのも、既存の構図を少しずつ切り崩し、自らがオールライツを持つようなコンテンツを持ち、マルチユースによる回収を念頭に置いているからだ。そうした戦略の実施により、踊り場を迎えた感のある加入者数を、再び上昇軌道に乗せていこうとの思惑である。

 それだけに、あえて“再確認”しておかなければいけないことは、今回の「横浜エイティーズ」は決して携帯電話向けだけに作ったコンテンツではないということであろう。

新たなウインドウとなる携帯

 「横浜エイティーズ」は約2分半のコンテンツを全51回で見せる形で作られているが、一本につなぐと、ちょうど2時間ドラマになる。逆に言えば、2時間ドラマや映画を約2分半ずつに切って、連続物にしているということになる。ハイビジョンで撮られていることからも、2時間ドラマとして使うことが意識されているのは明らかだ。

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