3GよりPHSのほうが高速?

» 2004年11月26日 15時58分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「3G携帯で当社並のスループットを実現するには、大規模なマイクロセル化が必須だ」

 DDIポケットは11月26日に開いた勉強会で、3G携帯電話に対するPHSの優位性をアピールした。同社のテストによると、3G各社のデータ通信サービスの速度を実利用環境で測定した場合、同社のPHSデータ通信サービスAirH"よりも遅いという結果が出たという。

テストは汐留と丸の内の高層ビルにおいて、低層階と高層階で行われた。実利用状況に合わせ、同時に5台で通信を行う環境でテストを行っている。グラフは4カ所での計測の平均値(DDIポケット資料より)

 3G携帯電話のデータ通信速度は、ドコモ/ボーダフォンなどW-CDMA方式を使った場合で下り最大384Kbps、KDDIのCDMA2000 1x EV-DO(サービス名:CDMA 1X WIN)の場合、下り最大2.4Mbpsだとされている。対してPHSであるAirH"は下り最大128Kbpsだ。

 ところがW-CDMA方式の場合、1台目こそ300Kbps台の結果が出たが、2台目、3台目と低下し、5台同時接続時は50Kバイト程度に下降。EV-DOの場合、1台目が300Kbps程度で、5台目は50Kbps未満に低下したという。対して、AirH"は5台同時接続時にも「60Kbps以上をキープした」(経営企画本部長の喜久川政樹氏)。

 複数台同時接続時に通信速度が落ちる──。このことは各3G携帯事業者も認めている。では、実際にどのくらいのユーザーが同時接続する可能性があるのか。現在170万のデータ通信カードユーザーを抱えるDDIポケットのデータでは、同時ダウンロードユーザー数は最大で220人/平方キロに上るという。

同時ダウンロードユーザー数ユーザー当たりスループット
地域DDIポケット1km33G携帯の1セクター(換算)3G(換算)DDIポケット
丸の内・大手町2208312.1Kbps125.9Kbps
日比谷〜霞ヶ関1345019.9Kbps121.4Kbps
霞ヶ関〜溜池1194523.4Kbps176.7Kbps
東新宿1134323.5Kbps94Kbps
神田1134323.5Kbps214.2Kbps
日本橋1124223.6Kbps159.5Kbps
汐留・新橋1104124.2Kbps145.7Kbps

基地局あたりのスループットと実スループット

 同時ダウンロードユーザーが増えると、3G携帯の場合は速度が落ちるのに、PHSの場合はなぜスピードが落ちないのか。その理由は、1基地局あたりのカバーエリアの違いにある。

 携帯電話は1基地局が半径600メートル程度の円をカバーしており、3つ程度の「セクタ」と呼ばれるエリアに分割されている。KDDIがEV-DO通信方式でうたっている“2.4Mbps”という通信速度は、1セクタあたりの速度であり、複数人が同じセクタ内で利用した場合、2.4Mbpsをそれらの人数でシェアする。10人が同時にダウンロードを行った場合、単純計算で1人あたり240Kbpsが割り当てられることになる。

 対するPHSは、マイクロセルと呼ばれる小さな面積をカバーする基地局を設置する。さらに、DCA(Dynamic Channel Assignment)と呼ばれる仕組みにより、複数の基地局を重ね合わせて設置することも容易になっている。結果、1基地局あたりのユーザー数は、3G携帯に比べてはるかに小さく、同時ダウンロードユーザー数が増えても安定した通信速度が実現できる。

 これが、3G携帯とPHSの根本的な違いであり、こと低額・定額のデータ通信においては、3GがPHSにかなわない理由だと喜久川氏は説明する。

 「マイクロセル化は携帯はとても苦手。ビル内に基地局を打つときも、ビルオーナーからお金をもらって設置している。それくらいお金がかかる。(マイクロセル化ができないということは)3G携帯では、低料金の定額は困難。高額の従量制で、トラフィックを抑制するしかない」

 PHSと携帯では、基地局の設置コストが大きく違う。そして携帯の場合は隣り合った基地局からの電波が干渉しないように周波数や出力を調整するなどの綿密な設計が必要だが、PHSは干渉を気にしなくていい。それが、マイクロセルを作りやすいPHSのメリットだ。

 もちろん、マイクロセルにも弱点はある。「ネットワークを作るのに時間がかかることだ。ただし、一度作ってしまえば楽」だと喜久川氏。また、山間部などのルーラルエリアも「(PHSでも)ルーラルエリアならばセル半径を3K〜4Kメートル取れる」と柔軟性の高さでカバーできるとした。

年度内に256Kbpsの8Xサービス提供

 マスユーザーでの高速データ通信に課題を残す3G携帯だが、利用人数が少ない環境ではPHSよりも高速な通信が可能なのは事実だ。例えば、音声携帯電話端末からのデータ通信は短時間で終了するため同時ダウンロードユーザー数は増えにくい。KDDIのEV-DOは、ブランド名CDMA 1X WINの音声端末から利用する限り、平均600KbpsというPHSよりも高速な通信を実現している。

 DDIポケットは、AirH"の最高通信速度を上げることでこれらに対抗していく計画だ。まず、2004年度内に「8X」と呼ぶ8チャンネルを束ねて256Kbpsを達成するシステムを導入する。

 さらに、変調方式の変更などでさらに通信速度を上げた「高度化PHS」の導入を進める。「まず高度化PHSのエリアを面的にカバーできるように基地局を入れ替える。またトラフィックが多いエリアで入れ替えていく。まずは数万局を変える」(喜久川氏)。

右が高度化PHS対応の基地局。高度化PHSは変調方式を16QAMに変え高速化を実現。さらに束ねるチャネル数も増やす。周波数帯は、現在のPHSよりも低い別の電波を使う。従来のPHSの基地局としても使える仕様だ。中央は、ビル内などの設置を想定するナノセル基地局。実質的にはPHSの“張り出しアンテナ”であり、イーサネットで接続した制御装置が各種の制御を行う

 資本関係の変更により、3G携帯電話サービスを行う親会社のくびきから逃れたDDIポケット。2005年2月には、社名を「WILLCOM」に変更し、積極的な攻勢に転じる(10月14日の記事参照)。PHSの特徴を生かしたサービスをどこまで打ち出せるかが注目される。

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