“大人ケータイ”の革ができるまで

» 2005年08月08日 22時43分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 NTTドコモの「大人ケータイ」こと「DOLCE」。革に包まれたこの携帯電話のポイントはどこにあるのか。開発元のシャープに聞いた。

オトナのポイント──LA DOLCE VITA

 「オトナのポイントは何か? やっぱりスーツ姿で似合う携帯ってなかなかない。それから少ないオフタイム。白いジャケットでリゾートっぽい服装──。そういうところでも似合う。そういう携帯はあるのだろうか」

 DOLCEの開発に至った、もともとのコンセプトはここだった。携帯を初めて買うお年寄りでもなく、ゲーム機代わりに使う10代でもなく、携帯電話が出始めた頃から使っているユーザーがターゲット。何機種も買い換えて、自分が本当に使う機能もよく分かっている。そんなユーザーに向けて、イメージをふくらませてきた。

 開発時にイメージしたのは、映画「LA DOLCE VITA」(邦題:甘い生活)だ。「主人公のイタリア人が演じている男の生き様に、DOLCEをかぶせているつもり。甘いというDOLCEの意味に、革をかぶせている。粋でダンディで、いい意味で男っぽさを持っている」

DOLCEの商品企画を担当した坂口昭夫主事

「本革にしてもコストは変わりません」

 DOLCEの最大の特徴である、表面を覆う革はシャープが最も苦心したところ。「本革にしてもコスト的にはあまり変わりがない。本当は本革を使いたかったが、雨に濡れたりするとカビが生える。クラレと共同開発して、携帯に合う人工皮革を開発した」という。

 これまでも革のような模様(シボ)を入れた樹脂が、携帯に使われたことはあった。しかし人工皮革が使われたことはめったにない。難しかった理由の1つは、はがれてしまうことだ。

 DOLCEでは、プラスチックの成型時に、革とプラスチックを一体にして熱と圧力で付けている。接着剤は使っていないのだという。「(バッグのような)革単体ならば簡単。樹脂と一体になっているのはほとんどない」とシャープは話す。

 ちなみにDOLCEが使った人工皮革は、いわゆる合成皮革とは異なる。合成皮革は織物や編み物にナイロン樹脂やポリウレタン樹脂をコーティングしたものだ。人工皮革は、立体構造を持つ不燃布と弾性ポリウレタン樹脂で構成された三次元構造となっている。ちなみにクラレの人工皮革の代表が「クラリーノ」だ。「合成皮革がビニールみたいなものであるのに対し、人工皮革は天然皮革とほぼ同じ風合い」(シャープ)だという。

 色も、「革小物を徹底的に研究した。ブランドもののカバンやサイフを買ってきて、革ならではの映える色を探した」。ブラックは男性のスーツに似合う色、オレンジは、リゾートに女性が持って行くカバンに似合う。ホワイトは家具でよく使われているオフホワイト、ライトブルーはイギリスの「WEDGE WOOD」などの陶磁器をイメージしたのだという。「アメリカンな端末ではなくヨーロピアンだ」(シャープ)

新幹線で横に座っても見えない角度に

 もう1つのDOLCEのポイントが、視野角制御液晶「VeilViewモバイルASV液晶」の採用だ(7月14日の記事参照)。ボタンを押すと、通常160度の視野角が狭まり、横からののぞき見を防止できる。この角度は「新幹線で横に座っても見えない角度で決めた」のだという。

 この視野角、専用の切り替えボタンも付いているが、マナーモードとも連動している。マナーモードをオンにすると視野角も狭まり、“視野角もマナーに”なる。

待受画面を表示しているが、“視野角をマナーモード”にすると、このような文面が表示される。残念ながらパターンは4種類で変更はできない

 ちなみにのぞき見したときに現れるパターンのうち、イタリア語の文字が現れるものがある。これがどういう意味かというと……。

 「苦労して得た幸福は2倍味わい深い。何があろうとも人生は素晴らしい。生き抜く価値があるものだ」

 「オトナだから理解できる格言だ」(シャープ)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年