インタビュー
» 2005年11月29日 03時03分 UPDATE

ドコモの取り組みをデザインした──佐藤可士和氏と「キッズケータイ」

ドコモが外部デザイナーの佐藤可士和氏を招いて開発した「SA800i」。端末デザインだけでなくキッズケータイプロジェクト全体に関わった意図とこだわりを佐藤氏に聞いた。

[後藤祥子,ITmedia]

 ドコモのキッズケータイ「SA800i」(11月24日の記事参照)は、ドコモがアートディレクターの佐藤可士和氏を招いて開発した携帯電話。外部デザイナーを起用した端末としては「P701iD」(9月6日の記事参照)に次ぐ2モデル目となるが、SA800iでは端末デザインだけに留まらず、キッズケータイのサービスや機能、販促に至るまでをトータルで手掛けている点が、「P701iD」と異なる。プロジェクト参加のきっかけや、子供向け携帯を開発する上でのこだわりについて佐藤氏に聞いた。

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佐藤氏がデザインを手掛けたキッズケータイ「SA800i」


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「SA800i」向けに提供するサービスのロゴも佐藤氏の手によるもの。「優しさや安心を象徴する円で構成されたようなシンボルマークを考えている。今後サービスが増えても、同じ方針でデザインしていく」(佐藤氏)

デザインやクリエイティブの力を教育に役立てたい

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 ブランディングを主とした広告のコミュニケーションデザインを手掛ける佐藤氏。その仕事として有名なのは、キリンの「極生」や本田技研工業の「ステップワゴン」、建造物では「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」など、企業の商品に関わるプロジェクトが多い。ちなみにau design project端末「INFOBAR」(au)のテレビCMでクリエイティブディレクターを務めたのも同氏だ。

 最近では「普段やっているクリエイティブやデザインの力を教育や医療に役立てられないか」という思いから、幼稚園のデザインや明治学院大学のブランディングプロジェクト、NHKの幼児番組「えいごであそぼ」のアートディレクションに取り組むなど、活動の場を広げてきた。

 そんな中で出会ったのが、ドコモの子供向け携帯のプロジェクトだった。「ドコモと仕事をしていたときに、夏野さん(NTTドコモマルチメディアサービス部長の夏野剛氏)から、ドコモの安心に関するいろいろな取り組みやキッズ携帯の話を聞いて、2人で盛り上がった。ちょうど幼稚園を作っていたりして、こうしたプロジェクトに貢献したいと思っていたので『やりたい』と手を挙げた」

子供が何かを想像するベースになるものを──端末開発

 キッズケータイプロジェクトのアイコンとなる端末開発で、佐藤氏が重要視したのは「子供の創造性を伸ばすきっかけになる端末作り」だ。

 これは佐藤氏が手掛ける幼稚園のデザインとリンクするところがあるという。「子供はクリエイティビティが大事。完全なものを与えるのではなく、想像の余地を残す。加えて(何かを想像する)きっかけを与えることが大事なのかなと思っている。パッケージされたものを与えてしまうとクリエイティビティは育たないのではないか」

 現在進行中の幼稚園は、「屋根の上に上れたり、部屋の中に木が突き抜けていたり」と、園舎が1つの巨大な遊具というコンセプトだと佐藤氏。「普通は、箱(園舎)を造って遊具をあとから置くというのが園舎作りのハウトゥになっているが、『遊びなさい』といって与えるのではなく、子供が何かを作っていけるようなベースとしての場を提供することを念頭に置いている」

 SA800iでは、それぞれのダイヤルキーに「ドレミファソラシド」の音階を割り当てたり、待受画像に絵本をイメージさせるイラストを使うなど、子供が自分で想像したり、遊びたくなるような仕掛けを盛り込んだ。「着メロもハワイアンやボサノバなど、ジャンルだけを提案するものを入れている。そこからイメージがふくらむように」

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子供に媚びない携帯を──デザイン

 端末をデザインする上で意識したのは「子供に媚びない携帯をつくる」という点だ。「“子供だまし”みたいなのはいやだなと。大人が見ても“いい”と思えるクオリティのものを子供に使ってもらいたい。背面の円のパーツをうまく使って(ごちゃごちゃしがちな背面を)すっきりまとまるように見せるとか、カメラ周りのリングの色1つとっても細かく検討するとか……。本当に丁寧に作っている」

 ボディデザインは、「中にあるものをしっかり守ってくれる優しい形の繭」をイメージしたもので、丸みを帯びたボディの中央部が本物の繭のように少しくびれている。「少しへこんでいるだけでも、ずいぶんキャラクター性が強くなり、印象的になる。1つ1つのカーブにもこだわっているから、あたりがよく手になじむ」

 背面は3分割されており、それぞれ異なるカラーリングを施した。「全部1つのパーツでできていると、さっぱりしすぎてしまう。こうした処理をすると、楽しい感じになる」。いつも持っていたくなるような愛すべき存在になってほしいという想いが生んだデザインだ。

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 ボディカラーは、キッズケータイの象徴ともいえるポップなカラーを採用した「トリコ」のほかに「アクア」と「ミント」をラインアップしている。ミントは「中学生くらいの子供や、お母さんでも使えるように」と選んだ色だという。

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コアターゲットは小学生だが、ノーマル表示のメニューにも設定できるので、大人でも利用できる。時間割は中学生以上にも対応。内蔵の国語辞典はメールを見ながら辞書をひける


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スライドさせると100デシベルのブザーが鳴り、あらかじめ指定した連絡先に電話とメッセージRで通知する。若い女性が防犯用途で持っていても違和感を感じさせないデザイン

社会に対するドコモの取り組みをデザインした

 「ドコモの社会に対する新しい取り組みをデザインしたつもりでこの仕事を手掛けた」──。キッズケータイプロジェクト全般にクリエイティブディレクターとして関わる佐藤氏は、今回の取り組みについてこう説明する。「端末も作るし、サービスも考える。まだどの程度の関わり方になるかは決まっていないが、Webやツール、プロモーションも監修する。アートディレクターとして参加することで、トータルでコミュニケーションに関われる。そこが、これまでの携帯開発と異なる点だ」

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