子供にケータイ、持たせますか?──「持たせるケータイ!安心説明会」

» 2006年07月28日 13時25分 公開
[江戸川,ITmedia]

 夏休み直前ということもあり、親子で参加するイベントがあちらこちらで企画されるようになってきた。その中でも目を引くのが、インターネットや携帯電話の安全教室だ。携帯ショップやパソコン教室運営者らが主催するもの、KDDIの「au 親と子どものケータイ教室」(6月30日の記事参照)のように携帯電話キャリアが企画するものなどがあるが、これらはどうしても販売促進策の一環というイメージが付きまとってしまう。

 そんな中で、小中学校のPTAや地元の団体と連携をとりながら安全教室を開催している企業があると聞き、実際に安全教室に参加して話を聞いてみた。

子どもに携帯を持たせる弊害は「いじめ被害」

Photo 江戸川区で小学校のPTA会長を7期経験したという大塚保幸氏。教育の現場からの生々しい実例が発表された

 2006年7月14日、タワーホール船堀において「持たせるケータイ!安心説明会 〜ケータイあんしん活用術〜」が開催された。ゲストとして講演を行ったのは、地域の安全情報を無料配信するメルマガ「ピヨネット」代表の大塚保幸氏だ。

 ピヨネットは、江戸川区立小学校PTA連合協議会のPTA会長仲間が自発的に立ち上げたメールマガジンで、大塚氏が代表取締役を務めるアーニントンが実際の配信業務を行っている。区内には同様のメルマガが複数あり、それぞれが連携を取りながら、地域の子どもたちの安全情報を配信しているという。

 大塚氏は、子どもに携帯電話を持たせる場合に「防犯」と「いじめ」の2つの問題を考える必要があると指摘する。

 「この地域の中学校では、メールを使ったいじめ問題が2〜3年前から報告されています」(大塚氏)と、特に小学校高学年から中学校にかけての携帯電話の使われ方に着目する。

 メールのいじめというのは、例えば深夜に電話やメールが送られてきて、すぐに返事をしなければ翌日のクラスで仲間はずれにされるというもの。そのため睡眠が十分に取れないなどの実害もあり、精神的にも肉体的にも影響があることは明らかだ。

 大塚氏はこうしたいじめの構造を「まるで江戸時代の”踏み絵”のようだ」という。つまり、メールを送ってそれに反応したということが、踏み絵を踏んだということ。これを無視する者は、当時のキリスト教徒のように迫害される運命にある。

子どもを守る3つのメッセージ

 このように携帯電話を持たせたことによるマイナス面は心配されるが、防犯という観点から考えればいずれ携帯電話を持たざるを得ない。親としてはどうするべきか。大塚氏は「基本的にはそうしたメールをすべて無視すること」とし、子どもに携帯電話を与える際の具体的な親子の会話にまで踏み込んで紹介した。個人差はあるだろうが、おおむね次のような分類になる。

小学校低学年・中学年の場合:

「これはお父さん(お母さん)の携帯電話で、自分のものではない」ということを教え、必要があれば子どもから友達にもそう伝えさせる。つまり勝手には使えないし、メールを送ってきてもすぐに見ることができないということ

小学校高学年の場合:

「契約の名義は誰か、誰がお金を払っているか」ということを教え、やはり子どものものではないことを理解させる

中学生の場合:

「メールを使う場合は、人の悪口を絶対に書かないこと。困らせることもダメ。楽しいことだけに使う。メールは保存されるので、悪口は後で人に知られてしまう」と、トラブルを回避する習慣をつけさせる

 いずれの場合も「親に与えられた携帯電話だから、親もメールを読んでいる」と、友達にも分かるようにするのがポイントのようだ。そうすると、相手もおいそれと迷惑なメールは送ってこれなくなる。

 また、すでに携帯電話を持っている子どもが、いじめ被害にあって困っている様子が見えたときには、“第三者の情報”としてこうした事例を持ち出すのがよいと大塚氏はいう。

 「専門家の話ではこうらしいよ、という言い方で伝えると、子どもは聞いていないようで案外と聞いているものです。しかもそれをまた友達に伝えたりするので、効果が現れます。ところが親の意見として伝えてしまうと、子どもから反感を持たれるばかりになります」

Photo 平日の午後という時間にもかかわらず、教室には小中学生を抱える20人ほどの保護者が集まった

本当に困ったときは教頭に相談する

 携帯電話によるいじめ被害が発覚して、それが解決できない場合にはどうしたらよいのだろう。これが携帯ショップなどの安全教室だと、「困ったときは親に相談して」ということになるのだろうが、相談された親も困ってしまうだろう。かといって、そのままにもしておけないし、警察沙汰というのも問題がありそうだ。大塚氏の場合は「学校の担任ではなく、副校長(教頭)にすぐ連絡しなさい」と、最短距離での解決策を披露する。

 保護者としては、担任を通さずにいきなり副校長でいいのか疑問に思うところだろう。しかし大塚氏は、副校長というのは学校の中で一番、情報を集めたがっている人なのだと話す。副校長から担任に話が通り、解決すればそれでよし。仮に後で担任からそのことで注意されるようならば、それは担任がいい先生ではないという判断ができるそうだ。

 子どもの携帯電話にまつわる心配事は尽きないが、大塚氏は子どもに携帯電話を持たせる時期はできるだけ早いほうがいいという。「今の子どもたちが大人になると、携帯電話をビジネスで使うようになります。子どものうちから使えるようにするのは決して悪いことではありません」(大塚氏)

 携帯電話の使い方を学校で教えない以上、それを教えるのは親の役目であろう。携帯電話は親子のコミュニケーションに役立つという大塚氏の持論は、まさに「人の悪口を書かない」というハッピーなメールで実現可能だ。そして「メールで子どもを叱るのは絶対によくない」という大塚氏の意見には、親として耳が痛くなるばかりである。

Photo 安全教室の仕掛け人である小松川電機常務取締役、平山智子氏。地元で60年支えられてきた企業として、恩返しの意味でこうした地道な活動を続けているという

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