携帯のWeb操作をマウスのように──「W51H」、スマートセンサーへのこだわり「W51H」開発陣インタビュー(後編)(1/2 ページ)

» 2007年02月09日 20時10分 公開
[石川温,ITmedia]

 解像度480×800ピクセルのワイドVGA液晶を搭載した「W51H」は、日立製作所が“小さなネットPC”のような使い勝手を実現しようと工夫を重ねたWIN端末だ。

 回転2軸ボディを採用し、ディスプレイを表にして折りたたむとPCサイトビューアーが自動で横表示に切り替わるなど、ボディ形状を生かした作りがポイント。サイトのスクロールやリンク先へのアクセスは、ディスプレイ面に備わる「スマートセンサー」を使って行う仕組みだ。

 横表示でPCのようにサイトを閲覧できるのだから、操作性もPCライクに──。そんな思いで採用したスマートセンサーは、使いやすくするための配慮が随所に見られる。

 インタビューの後編では、高いセキュリティと操作性の向上を両立させたスマートセンサーへのこだわりを中心に、開発陣に聞く。

Photo 左からカシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ商品企画チームの酒井健一氏、日立製作所ホームソリューションデザイン部の岩間徳浩主任デザイナー、日立製作所ユビキタスプラットフォームグループ マーケティング事業部携帯電話本部営業部の吉田征義部長代理
Photo PCのWeb閲覧をイメージさせる横表示の利用にこだわった「W51H」

Web閲覧時の操作もPCのように──「スマートセンサー」

 横表示のワイドVGA液晶の搭載が決まったあとに、開発陣が頭を悩ませたのが“どうやってWeb利用の操作性を向上させるか”だった。表示領域が広くなれば視認性は向上するものの、その一方でサイト上にあるリンクをクリックするには十字キーを押し続ける必要があるなど、従来のデバイスでは操作性がよくない。そこで搭載されたのが指紋センサーを十字キーとしても使えるようにした「スマートセンサー」だ。

Photo 操作性をPCに近づけるために搭載したスマートセンサー

 「(横画面時に)ディスプレイの左横にあるスマートセンサーを指先でなぞると、ブラウザ上のポインタをマウスで操作するように自在に動かせます。指先で2回タップすれば、『決定』として機能します」(吉田氏)

 スマートセンサーが搭載されたことで、ディスプレイを表にして折りたたんだ横表示での利用時に、“見え方も操作性もPCのような”ネット利用が可能になったわけだ。VGA画面でPCサイト閲覧時の操作性を向上させた例としては、「N903i」のニューロポインタが挙げられるが、これに並ぶ操作性への新たなアプローチといえるだろう。

 「スマートセンサーは、1回軽く下になぞると少しポインタが下に行き、下を押し続けるとスクロールする──という利用イメージ。「決定」機能は誤操作を防ぐため、1回押しただけでは機能せず、ダブルタップで決定として機能します。タップのタイミングもメニューで調整できるので、自分の感覚に合った操作ができると思います」(酒井氏)

 このスマートセンサーで気になるのが、ディスプレイの左側にレイアウトされた理由だ。この配置はポータブルゲーム機のコントローラーを意識したものだという。

 「画面を横にして左の親指で操作するというスタイルは、ポータブルゲーム機のコントローラーを意識して作りました。よく“左利きの人はどうするの?”と質問されますが、ゲーム機のコントローラーがそうであるように、(上下左右の)移動ボタンは左側にあるのが、もはや一般的なのだと思います」(岩間氏)

スマートセンサーやサイドボタンに“ひと工夫”して操作性を高める

 このスマートセンサーは、他メーカーの端末に搭載されている指紋認証デバイスとほぼ同等のもの。ただW51Hでは指先で方向を操作するため、スマートセンサーの周辺に微妙なラインの凹凸がついている。これはスマートセンサーに指をスライドさせた時に、きちんと反応するように工夫したものだという。

 「指紋認証デバイスとして使うだけなら、1方向に指をスライドさせるだけなので、こうした工夫は不要です。しかしW51Hでは、さまざまな方向にスライドさせる必要があるため、周辺部分の形状処理にも気を配りました。センサーの性能を守りながらも、指がより自由に動くような処理を意図的にしています」(岩間氏)

 端末をじっくり見ないと分からないような部分での細かな工夫は、まさに、機構設計にこだわる日立製作所の真骨頂ともいえる部分だ。

 端末の側面に搭載した4方向キーも、W43Hからレイアウトを見直した。W43Hでは上下と左右のキーがディスプレイ側とダイヤルキー側に分かれていたが、W51Hではダイヤルキー側にまとめて配置した。Web閲覧時は、上下キーに拡大/縮小表示(20%から200%までの6段階)の切り替え、左右キーにWebページの進む/戻るが割り当てられ、端末を折りたたんだ状態のまま各種操作を行える。

Photo 左がW51H、右がW43Hのサイドボタン。W51Hでは4方向キーがまとまった位置に搭載される

 「本体側面にボタンがある端末も多いですが、どのボタンを押しているかを把握しづらく、誤操作を招くことが多かったようです。W51Hは、本体側面のボタンが独立しているので、どのボタンを押しているかが分かりやすく、操作性も向上しています。ボタンの大きさやレイアウトは、いくつも模型を作って検証し、最終的にこの形に落ち着きました」(岩間氏)

 「本体側面にはシャッターボタンを除くと6つのボタンが配置されています。開発当初は、6つのボタンが一列に並んでいましたが、“それでは押せないでしょ”ということで、この形になりました。やはり十字キーはなじみがあるので、実現させたかった。よく、4つのボタンを1つにまとめてシーソーのように動かすものがありますが、どれを押しているかが分かりにくい。そのためW51Hでは、4つのボタンを独立させ、さらにそれぞれのボタンの形状を、触って判別できるような形状に作り込みました。横のボタンの継ぎ目が分かりづらいという意見もあったので、ここも微調整して、ボタンの1個1個が分かりやすいようにしています」(岩間氏)

Photo ワイドVGA液晶とスマートセンサーを組み合わせて使えるのは、PCサイトビューアー、PCドキュメントビューアー、EZナビウォーク、カメラの4つの機能。スマートセンサーはPCサイトビューアー/PCドキュメントビューアー/EZナビウォークではポインタ移動やスクロールに対応。カメラ使用時はズームが割り当てられている

指紋センサーでセキュリティも強化

 スマートセンサーは、PCサイトビューアーでポインタを動かすだけでなく、指紋認証デバイスとして、本体にロックをかける時にも利用できる。

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