モバイルビジネス見直し案発表──ドコモ 中村社長の考えは

» 2007年06月27日 19時37分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo NTTドコモの中村維夫社長

 NTTドコモの中村維夫社長は6月27日、モバイルビジネス研究会で討議されている案件に対する考え方を述べた。

 総務省が主催するモバイルビジネス研究会では、販売奨励金やSIMロックの是非、MVNOの推進など、モバイルのビジネスモデルに関する見直しを検討しており、定例会見後に総務省から総括と今後の方針案が発表された(記事1記事2参照)。

「分離プラン」「利用期間付き契約」の影響は

 モバイルビジネス研究会の議題の中で注目を集めたのが、販売奨励金の問題。通信キャリアが販売奨励金を出して端末価格の一部を負担し、高価な端末をユーザーが買いやすい価格で提供するモデルだ。この販売奨励金は、通信キャリアが通話料や通信料から回収するかたちになっており、同じ端末を長く使うユーザーと頻繁に端末を買い替えるユーザーとの間に、不公平感があるなどの問題が指摘されている。

 中村氏はこの制度について、「ユーザーが携帯電話を持ちやすくなる制度だが、新規契約が少ない“買い替え時代”になると、事業者も苦しいのは間違いない(総務省の報告書案では、端末1台あたりの販売奨励金は平均約4万円とされる)」と説明。ドコモとしては、0円や1円という極端な価格ではなく、「ある程度、ユーザーにも端末の代金を負担してもらってソフトランディングするのがいいだろうと考えていた」という。

 モバイルビジネス研究会の報告書案には、料金体系の見直し策として、(1)通信料金と端末価格を分離して請求する「分離プラン」の導入(2)利用期間を担保したうえで、端末価格や通信料金を設定する「利用期間付き契約」が盛り込まれ、各キャリアに導入を呼びかけている。

 分離プランについて中村氏は、現状、ユーザーが端末をいくらで購入したかをドコモ側では把握しておらず、「それと通信料金とをどう結びつけるかに苦慮することになると思う」と話す。ただ、今の状況が決していいとは思っておらず、何らかの工夫をすると付け加えた。

 利用期間付き契約については「端末の利用期間を保証することに対して、例えばその端末を2年使ったあとに基本料金を下げるなど、いろいろなことを考えなければいけない」とした。ただこの場合も、「端末の値段いかんで、どのように基本料金に差を付けるのかは難しい」といい、「“この端末に限ってはこの値段で、こういう基本料金”という形ががあるかもしれない」というにとどめた。

 モバイルビジネス研究会が提案するどちらの料金体系を導入した場合でも、ユーザーが現状より1つの端末を長く使う方向に向かうと見られる中、その影響については「例えば“端末を2年間持ってください”といえば、絶対数は落ちる。どのくらい落ちるかは分からないが、当然ながら減るだろう」(中村氏)と予測。一方で、仮に2年間という期間で考えた場合、ドコモからは4機種のハイエンドモデルが出ることになり、相当の機能の強化が予想されることから「若い人は(期間による縛りやコストを気にせず)取り替えるかもしれない。頻繁に新しい機種に取り替える人には、(新たな料金体系が)効かないかもしれない」という見方も示した。

SIMロック解除は“かなりしんどい”

 SIMロックの解除も、モバイルビジネス研究会の重要な討議案件の1つだ。海外では、SIMを差し替えることで1つの端末を異なるキャリアの通信網で利用できる、SIMロックフリーの端末が流通しているが、日本ではこうした端末はほとんどリリースされていない。キャリアの囲い込みをなくし、事業者間の競争を促進する意味でも、SIMロックを解除するべきという声が、研究会の構成員の間から挙がっていた。

 しかし日本では現状、キャリアがサービスの仕様を策定しているため、SIMロックを解除してどのキャリアのサービスでも使えるようにするには、1つの端末内にすべてのサービスに対応できる機能を盛り込む必要が出てくる。また、ドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルがW-CDMA方式を採用する一方、auがCDMA方式を採用するなど通信方式も異なるため、単にSIMロックを解除するだけでは効果が限定的だ。

 中村氏も“現状ではSIMロック解除はかなりしんどい”という見方を示す。「SIMロックの解除には、いろいろ難しい問題がある。(モバイルビジネス研究会の議論の中でも)単純な話じゃないことがお分かりいただけたと思う。これから先、どう対応するのかについてはまだ打ち合わせていないが、かなりしんどいという話をしている」(中村氏)

端末ラインアップは、さらに多様化

 中村氏はまた、今後の端末ラインアップの方向性にも触れ、「これから先の携帯電話は相当に顧客に会わせた形ものになると思っている」とした。

 「キッズケータイやらくらくホンのような端末、法人向けのカメラなし携帯など、もっと使いやすく分かりやすい機能の電話機が必要だと思っている。70xi系端末では、使いやすさを重視した端末や、“ゲームがいらない”人向けの端末なども必要だと思っている。そのような形でユーザーニーズに応えることも必要だ」(中村氏)

“2.5GHz帯でWiMAX”、ドコモはどうする

 定例会見では、「2.5GHz帯への参入をどうするのか」という質問も挙がった。中村社長はパブリックコメントを通じて、「どの事業者にも、参加申し込みの機会だけは与えてほしいと申し入れた。“3Gの事業者はだめだ”ということに対しては反論している」と述べた。

 「総務省が方針を変えてくれたらありがたいが、出資額3分の1以下というルールが変わらない場合でも、ドコモとしてはWiMAXと何らかのかかわりを持っていたいと考えている。ただ、具体的なことは決まっていない」(中村氏)



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