失ったものと得たもの――アドエスは“ケータイ”に近づいたのか?Advanced/W-ZERO3[es]徹底レビュー(1/2 ページ)

» 2007年10月15日 17時55分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 シャープ製のウィルコム端末「Advanced/W-ZERO3[es]」は、OSに「Windows Mobile 6 Classic」を採用したW-SIM対応のスマートフォンだ。W-ZERO3シリーズの特徴であるスライド式のQWERTYキーボードを備え、ディスプレイは従来のVGA(640×480ピクセル)からワイドVGA(800×480ピクセル)へと高解像度化が図られた。音声端末としての使い勝手と、閉じたままでさまざまな操作が可能なダイヤルキーを装備した「W-ZERO3[es]」の後継モデルだ。

photophoto 「たてケータイ、よこパソコン。」のキャッチフレーズ通り、普通のケータイのように使えるダイヤルキーと、PC用のキーボード配列に準拠したスライド式のQWERTYキーボードを備える

音声端末としてのスマートさを身に着けた3代目

photo 通話時のスタイルはこんな感じだ。W-ZERO3[es]では(家電の)リモコンで通話しているような印象だったが、本機では大きな違和感は感じない

 強化された機能面もさることながら、最大の特徴はやはりスマートになった外観だろう。W-ZERO3[es]と比較すると、幅は56ミリから50ミリへと一般的な音声端末と変わらないサイズまで小型化され、厚さも最薄部で21ミリから17.9ミリへとスリムに。重さも175グラムから157グラムへと軽くなった。数値ではピンとこないかもしれないが、2つを比べるとその差は明白だ。見た目では幅寸法のせまさ、手にしたときはその厚さと軽さを強く感じる。

 “いかにもスマートフォン”というフォルムではないため、W-ZERO3[es]では違和感が残っていた通話利用時の印象も至って自然。開発元であるシャープの製品紹介ページにも「スマートな、スマートフォン誕生」という記述があるが、確かに“スマート”フォンになったと思える。

photophoto 左からストレート端末のau C309H、本機、W-ZERO3[es](左)。W-ZERO3[es]とは高さはほぼ同等で幅が狭くなったことが分かる。左のC309Hはかなり古い端末になるが、ストレート端末のサイズとしては今でも平均的。幅はともかく高さも音声端末のほぼ水準+α程度に収まっている。

横幅と厚さ(最薄部)、画面サイズがほぼ一致する音声端末の「911T」との比較(右)。911Tを閉じた状態よりは大きいが、開いた状態よりは小さい。これなら通話利用時の見た目の違和感もないだろう。ちなみに重さは911Tが145グラム、本機が157グラムだ
photo 手前が本機、奥がW-ZERO3[es]。3.1ミリの厚みの違いはあくまで最薄部のものだが、本機は左右の角を斜めに落としたり、上下端に丸みを帯びたデザインを採用するなど、見た目上や手にした時に感じる“コンパクト感”を演出している
photophoto 側面は、音量調整キーが省略され、メモリカードスロットの位置が変更となったためシンプルになった。右側面にキーロックスイッチと画面回転キー、左側面にminiUSB端子とスピーカー(開口部)を備える。スピーカーは開口部を手などで塞いでしまうと音がこもるが、とっさに着信音を消したいときには便利だったりもする

 主なスペックを確認しておくと、プロセッサは従来と同じMarvell製のPXA270ながら、最高動作クロックは520MHzとなりクロック比で25%高速化された。プログラム実行用のSD-RAMは128Mバイト、データやプログラムを保存するためのフラッシュメモリ容量も256Mバイトと倍増している。W-ZERO3シリーズで256Mバイトのフラッシュメモリを持つのは、今のところAdvanced/W-ZERO3[es]とW-ZERO3(WS004SH)のみだ。

 OSはWindows Mobile 6 Classicで、いわゆる携帯電話向けのエディションではない。これは、Windows Mobileがサポートする携帯電話機能は3Gであり、OSが直接PHSに対応していないことが影響している。単体販売以外(新規契約、機種変更)ではW-OAM対応のW-SIM「RX420IN」(ネットインデックス製)が付属し、通信速度は4xパケット接続時にW-OAM対応エリアで最大204Kbps、非対応エリアで128Kbpsとなる。

photophoto カメラは背面上部に位置し、マクロへの切り替えはレンズ脇のレバーで行う(左)。microSDスロットもこの位置。カメラの中央寄りに不自然なスペースがあるが、ここが赤外線ポートだ。携帯電話とのちょっとしたデータ交換程度なら悪くない位置だが、寝かせた状態で利用できないので「連絡先」の一括送受信やPCとのデータ交換では少々不便。

W-SIMスロットはW-ZERO3[es]と同じ先端部分だが、カバーは軟質プラスチックから硬質タイプに変更され、デザインも一体感のあるものになった(右)。付属のW-SIMはW-ZERO3[es]の後期モデルにも付属した「RX420IN」となる
photo 上が本機、下がW-ZERO3[es]で、同じ設定のOpera MobileでYahoo!JAPANのトップページを表示し、一緒に撮影して比較しやすいように加工した。本機の方が文字サイズも僅かに小さくなっているが、レイアウトがより自然で1画面あたりのトータル情報量も増えているのがわかる

 ディスプレイは、感圧式のタッチパネル操作にも対応する3インチワイドVGA(480×800ピクセル)で、縦方向が従来のW-ZERO3シリーズより160ピクセル増えたワイドディスプレイになった。画面サイズは2.8インチだったW-ZERO3[es]より大きくなり、高解像度化により情報量は25%拡大したが、ドッチピッチは約0.082ミリとW-ZERO3[es]の約0.089ミリよりもさらに小さくなっており、視認性は若干悪くなった。ただし、Webブラウザの利用を中心にワイドVGAになった恩恵は非常に大きい。

 初代W-ZERO3で搭載していたが、W-ZERO3[es]では省略された無線LAN機能が復活した。サポートする規格もIEEE 802.11g/b両対応となり、最大54Mbpsの速度でネット接続できる。Webブラウザの処理能力的にIEEE 802.11gのメリットを生かしきれるかは微妙なところだが、IEEE 802.11gのみで運用するアクセスポイントを利用できるメリットはあるだろう。無線LAN機能が、QWERTYキーボードの[Fn]+[OK]でオン/オフできるようになったのも、W-ZERO3から改善された部分だ。

 本機はW-ZERO3シリーズでは初めて赤外線通信機能を備えており、アドレス帳を含むデータ交換が携帯電話と間で可能だ。手持ちの携帯電話で確認した限り、個別、一括転送ともに問題なく受信が行え、本機の連絡先に自動登録された。通信規格は高速な「IrSimple」にも対応す。

photo 受話口の右には、無線LANのオン/オフを示す通知ランプが追加された。オン時には緑色に点灯する。ちなみに中央は電波状態(緑/黄/赤)兼新着通知(青)、右は充電時の状態を示す。電波状態の点灯をオンにしておくと、待受け時間が500時間から300時間に一気に短くなる。こうした仕様は初代W-ZERO3から変わっていないので、待受け時間を優先したい人は「パワーマネージメント」でオフにすることをお勧めする。電波状態はディスプレイでも常時確認できる
photophoto 赤外線通信による送信は、「連絡先」や「ファイルエクスプローラ」「画像とビデオ」などのメニュー操作から行える。常時待ち受けではないので、「データ交換」から受信状態に設定して行う。使い勝手としては音声端末に近い。「データ交換」で送信する場合はプロフィール送信、いわゆる名刺交換用となる
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