子どもたちに音楽を──「ドコモ クリエイティブキッズコンサート」に参加してきた神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2008年03月31日 13時24分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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アイデアあふれる内容と、圧巻のクオリティ

 ファンファーレ、そして鼓隊のリズミカルな演奏──。クリエイティブキッズコンサートは、演目にも工夫が凝らされている。

 オープニングは関東学院六浦小学校のトランペット鼓隊によるもの。ステージに鼓隊を指揮する少年が立ち、隊員たちはステージ背景のプレミアムシートに行進しながら入場、演奏する。日本初のヴィンヤード(ぶどう畑)形式で、ステージを取り巻くように座席が配置されたサントリーホールの特性を生かした演出だ。オープニングの演目である「手のひらを太陽に」は、幼稚園でもおなじみらしく、息子の顔もほころんだ。

 トランペット鼓隊の演奏が終わると、いよいよ本番。まずは朝岡氏の軽妙なトークで、クラッシックコンサートや曲の内容、用語について説明が行われた。指揮者の円光寺氏がタクトを握り、東京フィルハーモニー交響楽団による演奏が始まる。

 最初の曲はヴィヴァルディ作「四季」の「春」より。朝岡氏があらかじめ“聴きどころ”を教えておいてくれるので、曲がそのポイントにさしかかると息子が笑顔を見せる。こうした配慮があるのは、子ども向けのコンサートならではだろう。

 また、筆者が「これはうまいっ!」と膝を叩いたのが、3番目の演目となる「プリインストールメドレー 2008」。これは何かというと、最新のキッズケータイに“プリインストールされているクラシックの着メロ”をメドレーにしたものだ。曲目としては、ドヴォルザークの「新世界より」、ヴェルディの歌劇「アイーダ」から「凱旋行進曲」、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」など。変わり種としては、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」も組み込まれていた。身近なケータイのプリインストール曲を、フルオーケストラによる圧巻の演奏で聴かせるというアイディアはすばらしい。メドレー形式で旋律がめまぐるしく変化するため、子どもたちが飽きることもない。筆者はラプソディ・イン・ブルーをフルオーケストラで聴けたことに感動。これはメドレーではなく、フルバージョンで聴きたかった!

 さらに次の演目では、サントリーホールの目玉であるパイプオルガンが登場。パイプ総数5898本、ストップ数74というパイプオルガンは国内でも屈指のものだ。ここでも朝岡氏の解説が入り、子どもたちに分かりやすくパイプオルガンの紹介をした。その後、演奏された曲はバッハの「トッカータとフーガ ニ短調より トッカータ」。パイプオルガンの荘厳な音に会場内が静まりかえった後、オーケストラも加わってエルガーの行進曲「威風堂々」第1番が始まる。

 このようにコンサートの演目・演出は随所にアイデアあふれるもので、子供だましな部分は一切ない。演奏のクオリティも折り紙付きで、息子に付き添ってきた筆者も十分に楽しめる内容だった。

PhotoPhotoPhoto 左:すばらしい設備と音響を誇るサントリーホール大ホール。ステージ後段の席は、合唱隊や鼓隊の演奏で使われている(写真提供: NTTドコモ広報部)
中央:ステージ上の東京フィルハーモニー交響楽団と、スポットライトを浴びる司会・コンサートソムリエの朝岡聡氏。プレミアムシートの後ろには、大ホールの象徴であるパイプオルガンが鎮座する(写真提供: NTTドコモ広報部)
右:コンサートに聴き入る子どもたち。プログラムの妙と、演出のうまさ、さらに圧倒的な演奏のクオリティで、会場内の子どもたちは真剣そのもの(写真提供: NTTドコモ広報部)

演奏を聴くだけじゃない! 参加型のイベント

 さらにコンサート中盤では、会場の子どもたちの中から代表者が2人選ばれて、指揮者を体験するという「キッズマエストロ登場!」というイベントが用意されていた。

 今回は小学1年生の男の子と、小学5年生の女の子がステージに上がり、ベートーヴェンの交響曲第五番「運命」の有名な旋律を指揮。指揮者である円光寺氏がタクトの振り方を教えて、実際にオーケストラが子どもたちの指揮で演奏をすると、会場からは暖かい拍手が上がった。

 その後は、「キッズケータイ F801i」にインストールされている絵本コンテンツ「ゾウのおくりもの」(著者:秋本康氏)にちなんだ歌と絵本の朗読があり、最後は目黒星美学園小学校と会場の子どもたちが参加して「世界に一つだけの花」を合唱。閉幕となった。時計を見ると、開演から1時間半以上が経過していた。

PhotoPhoto 左:会場の子どもの中から指揮者を選び、体験してもらう「キッズマエストロ登場!」。指揮者に選ばれた小学1年生の男の子が、コンサートマスターと堅い握手をする。こうした1コマがあるのも、子ども向けコンサートの醍醐味だ(写真提供: NTTドコモ広報部)
右:キッズケータイ F801iにプリインストールされている絵本コンテンツ「ゾウのおくりもの」の原作である「ぞうのせなか」の朗読。ピアノのきれいな旋律で感きわまり、泣き出す親子もあちこちに(写真提供: NTTドコモ広報部)

 「楽しかった〜。だけど喉が渇いた」

 コンサート中、ずっとステージから目を離さなかった息子が笑顔で立ち上がった。

携帯キャリアとして意義深い取り組み

 コンサートが終了し、振り返れば、とても充実し楽しい時間であった。演奏そのもののクオリティが高いのはもちろんだが、親子を楽しませるための工夫や配慮が、随所に見られたことに感嘆する。子ども向けだからといって、幼稚な内容ではないし、ましてや子ども騙しでもない。「子どもに第一級のすばらしい音楽を」という主催者側の志の高さを感じた。筆者は子ども向けのクラシックコンサートに何度か足を運んだことがあるが、これほど吟味・工夫された内容で、しかも圧倒的なクオリティを誇るものは初めてだ。

 また、このようなすばらしい芸術への取り組みが、ドコモという携帯電話キャリア主催で行われていることも高く評価したい。クリエイティブキッズプロジェクトは、ドコモのキッズケータイにちなんだ企画ではあるが、その内容を自社の宣伝や囲い込み目的に使おうというような“あざとさ”がまったく感じられなかった。ケータイという身近なツールを通じて、次世代を担う子どもたちによい体験をしてもらう。こうした取り組みを積極的かつ継続的に行うことは、携帯キャリアとして意義深いことだろう。

 今の携帯電話業界を翻れば、短視眼的な価格競争や新規優遇のキャンペーン合戦、一部のキャリアが行ったプリペイド端末の乱売など、市場環境が“ギスギス”している印象が否めない。そこでは既存ユーザーが軽視され、中長期的な視野に立った取り組みが軽んじられている。本当にそれでいいのだろうか。

 クリエイティブキッズコンサートに参加していたのは、ドコモの既存ユーザーであり、キッズケータイを使う子どもたちだ。彼らがこのイベントに満足し、第一級の音楽との出会いがすばらしいものであったことは、彼らの満面の笑みを見れば分かる。“ケータイ”をきっかけにし、既存のユーザーにさまざまな体験を提供する。そこには「単なる料金の安さ」以上の価値があると筆者は思う。クリエイティブキッズプロジェクトのような取り組みは、もっと評価されるべきだ。

 クリエイティブキッズの今後の活動に話を戻すと、2008年度はコンサートが3回(5月・7月・2009年1月)、アートイベントが4回ほど企画されているという。抽選ではあるが、ドコモのキッズケータイもしくは、対象年齢の子どもがいるドコモユーザーは無料で参加できるので、機会があれば是非一度体験してほしい。とても充実した時間が過ごせることは、息子ともども筆者が保証する。

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