au“プリペイド乱売”問題の真相:神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2008年02月29日 18時12分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2月27日、一部の報道機関が「KDDI(au)がプリペイド携帯電話を無料配布しており、それが市場競争の健全性を阻害している」と報じた。無料配布の詳細は別記事に譲るが、筆者がKDDI広報部および販売会社各社、店頭で聞き取り調査をしたところ、プリペイド携帯電話の「0円キャンペーン」は確かに行われており、かなり広範囲・積極的に行われていたことが判明した。

 むろん、プリペイド携帯電話に限らず、ケータイの「0円販売」は業界でずっと行われてきた“悪しき慣習”だ。またKDDIは正規の契約手続きと、不正利用防止の本人確認はきちんと行っており、今回のキャンペーンがKDDIによる“悪意ある水増し”とまでは言えない部分がある。とはいえ、市場に誤解と混乱を与える「乱売」であることは事実だろう。

 そこで今日のMobile+Viewsは特別編として、auがプリペイド乱売に至った事情と、この問題の本質について考えてみる。

“売れないau”と“手厚いインセンティブ”が乱売を招く

 「今のauは(端末が)安くなければ売れない。安くても、なかなか売れないんですけどね」

 auショップを経営する販売会社の幹部は、こう嘆息する。かつてはサービスの先進性と料金の割安感、端末デザインのよさなどで、店頭では「黙っていても売れた」(販売会社)というauが、今ではドコモの復活とソフトバンクモバイルの好調に挟撃されて苦しい状況にある。

 「昨年の夏くらいから(auの)販売は苦しくなってきて、失速していることは明らかでした。インセンティブによる店頭価格の抑制とイメージで、端末やサービスの弱さを底上げしていただけです。

 しかし、不調が決定的になったのは昨年の冬商戦ですね。(ドコモの)905iシリーズに対抗できる端末がなく、au買い方セレクトのフルサポートコースはユーザーに敬遠された。料金の(割安な)イメージではソフトバンクモバイルに押されている。auだから売れる、という状況ではなくなってきています」(販売会社幹部)

 2001年から5年間、auはインフラ・端末・サービス・料金のすべにおいて他社との競争をリードし、ブランドイメージを築き上げてきた。しかし、それがたった1年でほころび、“au”そのものの魅力が弱体化している。「auの勢いが止まった。売れなくなった」という声は、昨年、筆者がもっとも多く聞いた販売会社の本音である。

 一方で、2008年の春商戦でみれば、それでもauは“販売会社にとって売りたいキャリア”だ。気前よく支払われるインセンティブ(販売奨励金)が魅力なのだ。

 3キャリアの端末を取り扱う大手販売会社の幹部はこう話す。

 「この春商戦は各キャリアともに販売拡大に力を入れていますが、なかでもauの力の入れようは尋常ではありません。当然ながら、それは(契約獲得や端末販売ごとに支払われる)インセンティブの厚さにも現れています。

 逆にドコモは『春商戦に本気』といいつつも、焦りのようなものは感じない。学生層の獲得には真剣に取り組んでいますが、全体的にみればインセンティブを抑え気味にしており、(auのような)バラ撒きはしていない」(大手販売会社幹部)

 販売奨励金の支払い条件は、販売会社が置かれた契約環境によって異なるため、一概に比較することはできないが、今の春商戦において「auの気前がとにかくいい」(関係者)のは確かだ。auは昨年の冬商戦で不調に陥り、そこでのインセンティブが余っていることもあり、春商戦はインセンティブの大盤振る舞いをしている。

 auを売れば儲かる。特に新規契約の獲得数を増やすことは、インセンティブの支払い条件をよくするので、とにかくauを売りたい。だが、今のauには魅力がなくなっており、かつてのようには売れない。このジレンマの中で、販売会社が目をつけたのが「auのプリペイド携帯電話」だ。

 「一般契約(ポストペイ)で売れればいいのですけれど、今のauは端末価格が他社より安くても以前のように売れない。そうなると、プリペイドで(契約)数を稼ぐしかないんです」(販売店)

 実際、筆者が目にした「実態」には、末端の販売員がauのプリペイド携帯電話を何台も契約し、自分の友人・知人にも複数購入させて販売成績を稼いでいるという例もあった。

 KDDIは今回の問題について、「販売代理店が独自に行っているお試しキャンペーンと認識している」(広報部)というスタンスだが、これが“お試し”と言えるのだろうか。単なる契約数稼ぎの乱売でしかない。

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