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» 2008年05月20日 12時05分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:“テレビ離れ”時代の携帯eマーケティングによる革新──マクドナルドの「かざすクーポン」

マクドナルドとThe JVが導入する「かざすクーポン」は、消費者のテレビ離れをにらんだおサイフケータイを活用するeマーケティングだ。将来的にはユーザー毎に異なるクーポンの配信なども視野に入れる。

[神尾寿,ITmedia]

 日本マクドナルドホールディングスと、マクドナルドの会員向けサービスを行うThe JV(ザ・ジェーブイ)が5月19日、おサイフケータイを使ったマクドナルドの新型クーポン「かざすクーポン」を発表した。5月20日から、福岡県・佐賀県・鹿児島県、荒尾市(熊本県)・日田市(大分県)・下関市(山口県)のマクドナルド175店舗でサービスを開始する。

PhotoPhoto 日本マクドナルド 取締役上席執行役員 兼 The JV 代表取締役社長の前田信一氏(左)と来賓として挨拶したNTTドコモ九州代表取締役社長の井上登氏(右)

 福岡市内で開かれた記者会見において、日本マクドナルド 取締役 上席執行役員 兼 The JV 代表取締役社長の前田信一氏は、「われわれは(延べで)年間14億人のお客様に“食”を提供させていただいていますが、この14億人という数を考えますと、これまではマーケティングが『マスメディア中心』でした」と指摘。新たなeマーケティングが必要になってきていると説明した。

 「最近は、テレビを筆頭に消費者のマスメディア離れの傾向が進展しています。一方で、ケータイや(PCを使って)Webサイトで情報収集やコミュニケーションをする人が急増しています。お客様のメディアとの接し方やニーズが多様化しているのです。われわれのビジネスを振り返りましても、モバイルの会員サイト(トクするケータイサイト)の会員が急速に伸びていまして、今年4月時点で1千万人を超えました。

 お客様とのコミュニケーションや来店の動機付けといった“マーケティングの基本”の部分において、従来の(テレビなど)マスメディアにのみ頼っていた形態から変化をせざるを得ない状況にある、と考えています」(前田氏)

 消費者の“テレビ離れ”と、それによる相対的な“メディア価値の急落”は以前から多くの調査資料で兆候が現れていたものであり、この傾向は今後も継続する。マーケティングをすべて“テレビなどマスメディア広告に丸投げしておけばよい”という時代は終わろうとしており、マクドナルドはこの変化に先手を打つ形で、ケータイのマーケティング活用を段階的に進めてきた。この新たな一歩が、今回発表された「かざすクーポン」という位置づけだ。

 「では、なぜeマーケティング、ケータイの活用かといいますと、従来のマスマーケティングは準備に時間がかかり、効果が得られるまでにも時間がかかりました。反面、効果が出始めれば非常に広範囲でメリットが得られるというものでした。

 これに対して、ケータイを使ったeマーケティングは、マスマーケティングに比べてはるかに短時間で準備ができます。その上で、狭い範囲から広い範囲まで、柔軟なセグメント戦略で展開できます。また、お客様のフィードバックもすぐに得られますから、状況に応じて(マーケティングの)軌道修正も可能です。柔軟でリアルタイム性があり、よりきめ細かく、お客様にサービスが提供できるのです」(前田氏)

 マクドナドでは、このケータイを用いたeマーケティングの可能性・重要性を早い段階から認識しており、ケータイサイト「トクするケータイサイト」を運営。携帯電話の画面にクーポンを表示し、それを店員に見せる形でのサービスを展開してきた。この“見せる携帯クーポン”の準備期間や展開は「新聞折り込みなど紙ベースのクーポンに比べて、10倍以上のスピードがある」(前田氏)という。またユーザー側からしても、紙のクーポンのように切り取って持ち歩く必要がなく、いつでもケータイからクーポンを取得できるというメリットがある。

PhotoPhotoPhoto マクドナルドは、マスマーケティングからeマーケティングへの転換を図る。背景には顧客のニーズの多様化やマスマーケティングの限界、モバイル会員の急激な増加などが挙げられた。eマーケティングにはさまざまなメリットがあることを強調する

 今回、発表された「かざすクーポン」は、会員向けのICアプリにクーポン取得機能を用意し、非接触IC FeliCaを用いたクーポンにすることで、ユーザーの利便性をさらに向上させるものだ。

 「かざすクーポンでは、おサイフケータイをリーダーライターにかざしてもらうだけで、クーポン情報がPOSにあがる仕組みになっています。これを使うことにより、お客様は簡単にクーポンが利用できてオーダーの手間も省ける。常に最新のクーポンを取得・利用できるようになります」(前田氏)

 一方で、マクドナルド側では、「かざすクーポン」の導入と利用促進によって、会員番号と購買履歴の収集が可能になる。この顧客情報の蓄積によって、会員の嗜好や店舗利用のニーズに応じたクーポンの提供ができるようになる。

 「お客様の世代や利用店舗、よく利用される時間帯を踏まえてクーポン内容が変わるということが考えられます。より細かなセグメント化を進め、One to Oneのマーケティング展開などが視野に入ってくるわけです。

 具体的な例を挙げますと、例えば高校生と主婦層のお客様ではクーポン内容が変わったり、特定の地域で天候が悪かったりした場合には、その時・その地域だけで使えるクーポンを配布してご来店いただけるようにするなど個別の対応が考えられます」(前田氏)

 また、「かざすクーポン」は名前のとおり、利用時に通常価格から割引が受けられる“クーポン”だが、ポイントプログラムのような“メリットを貯める”形での展開も考えているという。今回の九州での実験では、一定期間内の来店頻度に応じてクーポンのお得さが増していくというスキームが用意されており、「ご来店の頻度に応じてメリットが積み増しされていく(ポイントのような)展開は重視している」(前田氏)という。

PhotoPhotoPhoto かざすクーポンは、専用アプリでクーポンをダウンロードし、FeliCaでクーポンを使う。事前にダウンロードしておけば、店頭でケータイを操作する必要がなく、注文も自動的に行われる。決済はiDか現金で行う。将来的には転記や顧客属性など、さまざまな状況に応じたクーポン配信を行いたい考え

 「かざすクーポンについては、技術面ではすでに確立された状態にあります。今は、それをマーケティングの手法やビジネスモデルとして実証する段階です。まずは福岡を中心とした九州で商用化実験をし、今年の夏には首都圏、そして来年には全国に広げたい。

 その上で、今回、なぜ『福岡・九州を選んだか』といいますと、ビジネスモデルの検証では一定の都市規模があって、(地域の)顧客層が幅広い必要があるからです。今後の展開のしやすさや、地元メディアとの連携のしやすさなどを総合的に考えて九州を選びました」(前田氏)

会員アプリでクーポンを取得、ICで利用する「かざすクーポン」

 それでは具体的なサービスを見てみよう。

 マクドナルドのかざすクーポンでは、公式サイトから「マクドナルドのトクするアプリ」をダウンロードして利用する。現時点では、トクするアプリは会員登録時の居住地域が利用エリア内の場合のみダウンロードできる。

 トクするアプリは、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのおサイフケータイ向けに用意されている。アプリの基本機能や提供されるサービスは同じであり、キャリアごとの違いはない。

 実際の利用では、トクするアプリを起動し、欲しいクーポンとその枚数を選び、ダウンロードする。そうするとトクするアプリがFeliCa上にクーポン情報を書き込み、リーダー/ライターで読み取れる状態になる。なお、トクするアプリを使うのは「クーポンの選択・取得・FeliCaチップへの書き込み」の段階のみであり、一度クーポン情報を書き込んでおけば、店頭でアプリを起動する必要はない。

PhotoPhotoPhoto トクするアプリのクーポン選択画面(左)。複数のクーポンを上下キーでクルクルと回転させながら探し、欲しいクーポンがあったら枚数を指定して取得する。取得するクーポンを確認、実行するとFeliCaチップに情報を書き込む(中央)。クーポン情報が書き込まれると利用可能になる(右)。この段階になれば、アプリを終了してもOK。店頭のリーダーライターにかざすと、クーポンが利用できる

 マクドナルド店頭に用意されるリーダー/ライターは円形のマルチモードタイプで、かざすクーポンとiD決済の両方に対応する。おサイフケータイの認識は、クーポンと決済が別々のフェーズになっており、最初はクーポンの利用、2回目はiD決済という形になっている。かざすクーポンだけ利用し、支払いは現金にすることももちろん可能だ。auとソフトバンクモバイルのおサイフケータイでは、iD対応のFeliCa決済サービスが用意されていないので、当面はかざすクーポンと現金という形での利用になるだろう。

Photo マクドナルド店頭に置かれるリーダーライター。認識音はテレビCMなどでよく耳にするあの音

Get Macromedia FLASH PLAYER おサイフケータイで「かざすクーポン」を読み取らせてから、ドコモ端末ならiDで決済できる。クーポン読み取り時の音は、テレビCMなどでもおなじみの“あの音”

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