インタビュー
» 2011年01月02日 09時00分 UPDATE

新春インタビュー:スマートフォンによりインターネットはモバイル化する――NTTドコモ 辻村副社長に聞く(後編) (1/2)

2010年のキーワードでもある「スマートフォン」の普及に積極対応していくNTTドコモ。そんなドコモも、インターネットの1プレーヤーとなった今、技術はすべて自前でまかなうのではなく、広く開発された技術を見つけて取り入れていく“オープンイノベーション”が重要だと辻村清行氏は話す。

[神尾寿,ITmedia]

 スマートフォンの普及やモバイルブロードバンドサービスの登場を軸に、変化が加速するモバイルIT業界。2011年はどのようになっていくのか。

 前編に引き続き、モバイルIT業界のキーパーソン、NTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏に聞いていく。

Photo NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏

Xiをドコモの競争優位性に

―― (聞き手:神尾寿) スマートフォン時代におけるキャリアの差別化において、インフラの部分はいかがでしょうか。KDDIは先日、モバイルWiMAX対応のスマートフォンを投入すると発表されましたが。

辻村清行氏(以下辻村氏) 我々は他キャリアに先駆けて、LTEサービスの「Xi(クロッシィ)」を導入しました。Xiでは屋外で下り最大37.5Mbps、屋内の一部エリアでは下り75Mbpsを実現していますので、これを積極的に活用していきます。そのほかにも、高度な帯域制御やフェムトセルにも取り組んでいます。これらの組み合わせで、今後のトラフィックの爆発的な増加に対応していきます。スマートフォンという観点では、2011年度中にはXiをスマートフォンに載せていきたいと考えています。

―― ドコモとしては、現行のFOMA(3G)とXi(LTE)の組み合わせを積極的に推進していく、ということですね。

辻村氏 ええ。今Xiに対応しているのはデータ端末のみですが、音声端末ではスマートフォン中心での対応になっていきます。あと、いま需要の高いモバイルWi-FiルーターのXi版も投入します。インフラ面でのモバイルブロードバンド化は強力に推進していきます。

―― Xi自体がモバイルブロードバンド時代におけるドコモの優位性になりますね。

辻村氏 そうです。Xiは通信速度が速いだけでなく、通信時の「遅延が小さい」という特長もありますので、これを生かしたアプリケーションなども考えていきたい。もっとも、こちらは今年すぐに実現するというより、もう少し中期的に取り組むものになります。

―― これはXi全体にいえるのですが、当面のライバルであるモバイルWiMAXが定額料金であるのに対して、Xiの基本料金プランは1カ月5Gバイト以上のユーザーに追加課金が発生する段階制になっています。今はキャンペーン期間ということで(月額の上限が4935円の)定額制になっていますが、Xiの基本的な考え方として定額制ではなく段階制の従量課金という方針は変わらないのでしょうか。

辻村氏 まだ最終的にどのようにするかは決め切れていませんが、Xiで完全・無制限な定額制料金ではなく、条件付きで段階的に料金が上がる定額制にするというのは1つの方向性だとは思っています。やはり超ヘビーユーザーに相応の負担をしていただくという考え方は必要ではないでしょうか。例えば現状を申し上げますと、我々のデータ通信キャパシティの3分の1を、わずか1%のお客さまが使用しているのです。これは健全な姿ではないと思うわけです。

 ドコモとしては、より多くのお客さまに公平に我々のネットワークを自由に使っていただきたい。そこで大量にデータ通信を行う一部のお客さまに応分のご負担をいただくことで、トラフィックの爆発的増加を抑制したいのです。

―― それは現在も実施している帯域制限では対応できないのでしょうか。

辻村氏 すでに帯域制限は始めていますが、公平性という観点では料金面での施策も必要だと考えています。

2011年もう1つの注目は「モジュール市場」

―― 2011年の重要なテーマは「スマートフォン」ですが、それ以外に注目のトピックスというのはありますでしょうか。

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辻村氏 1つは「通信モジュール」ですね。2011年はさまざまなデジタル機器にモジュールが内蔵されていく年になるでしょう。例えば、デジタルカメラやクルマなどへのモジュール内蔵は注目ですね。

―― なるほど。すでにドコモの通信モジュールは、日産自動車の電気自動車「リーフ」に採用されるなどクルマ市場でも広がっています。このあたりは注目といえそうです。

辻村氏 通信モジュールの広がりは、さまざまな形があるでしょうね。一般的なコンシューマー向けのデジタル機器などはもちろん、例えばエアコンの監視・制御用などで白物家電に導入されるといったことも十分に考えられます。いろいろなところで、モバイル通信モジュールを活用したIT化というものが広がっていくでしょう。

―― 家電の監視ですと、ユーザーが直接的に利用するような用途の他に、例えば安全性の問題からリコールが必要になった製品を効率的に見つける、といった使い方も考えられそうです。

 ただ、こういった通信モジュールの広がりには2つ必要な要素があります。1つが「通信モジュールが安くなること」、そしてもう1つが「モジュールを組み込んだ製品に合わせて、柔軟な料金体系が作れるか」です。

辻村氏 それはおっしゃるとおりですね。通信モジュールのビジネスを本格化するには、その2つが重要になります。

 まず料金体系の点ですが、例えばエアコンなど家電に組み込んだ場合は日々のトラフィックはたいして発生しません。通信速度もいらない。こういった用途にあわせて料金プランを開発していく必要があります。またモジュールそのものの価格についてですが、ここは「どれだけの需要を作れるか」が鍵になります。モジュールはとにかく数(が価格に反映されるわけ)ですから。ここはデジタルカメラやポータブルゲーム機のようなものが“通信内蔵”を前提にしたものになれば、解決する部分です。

―― 今の時代ですと、デジカメもポータブルゲーム機も「ネットにつながる」ことがユーザーとメーカー両方のベネフィットになることは間違いありません。ですから、逆説的に言えば、“市場を作り、モジュール需要を拡大する”ための前提条件は、やはり通信料金の部分でしょう。AmazonのKindleもそうですが、料金体系を柔軟に設計できるかが、全体の需要喚起の鍵になります。

辻村氏 それは理解しています。これまでの基本料金+利用料という料金体系は、携帯電話など人が日常的に使う通信機器であることを前提に考えられています。しかし、M2M(Machine to Machine)市場の場合では使用環境・使用条件がまったく違いますからね。モジュールが利用される製品や市場に合わせて、これまでと違う料金体系を柔軟に作っていく必要があるでしょうね。

 あと、もう1点、通信モジュールの普及に欠かせない要素として「組み込み型SIM」もあると考えています。これは先般GSMAで発表しましたが、SIMカードは最初からモジュールに組み込まれていて、オンラインで契約と番号の書き込みができるというものです。

 むろん、この組み込み型SIMはセキュリティがきちんと担保されていなければなりません。しかし、これが実現すると、例えばコンシューマー向けのデジタル端末や家電でのモジュールの運用がしやすくなる。ドコモとして、この組み込み型SIMの実現にも注力しています。

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