“パズドラ”登場でスマホのゲーム市場はどう変わったのか?(1/2 ページ)

» 2013年06月17日 19時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 急速な伸びを見せるスマートフォンのゲーム市場。現在、この市場を席巻しているガンホー・オンライン・エンターテインメントの「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)は、同社の売上額、そして株価を大幅に向上させたことで一躍注目を集めることとなった。だがバズドラはガンホーの企業価値だけではなく、ゲームアプリ業界全体にも大きな影響を与えたと言われている。では一体、パズドラの登場前後で、スマートフォンのゲームシーンはどう変化したのだろうか。

photophoto 「パズル&ドラゴンズ」は、パズルゲームにガチャや合成などソーシャル系で人気の要素を加え、ゲーム性を重視した内容で人気に
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ソーシャルゲームが高収益を上げていた“パズドラ以前”

 パズドラが誕生したのは2012年2月のことで、当初はiPhone向けとしてリリースされた。まずは2012年2月以前と以後で、スマートフォンのゲーム市場がどう変化したのか、当時の動向について触れたい。

 iPhone向けのゲームアプリは、AppleがApp Storeのサービスを開始した2008年から存在しており、世界的ヒットとなったフィンランド製の「Angry Birds」(Rovio Entertainment)などが注目を集めたことはご存じの方も多いだろう。だが国産ゲームアプリのビジネスが本格的に成立するようになったのは、2011年からとみられている。

 というのも2011年は、Androidスマートフォンの投入が本格化し、さらにauがiPhoneの販売に参入するなどしたことでスマートフォンが急速な広まりを見せ、ユーザーの裾野が大きく広がった年だ。それに加えて、激しい価格競争に見舞われ収益化が困難となっていたダウンロード課金型アプリに代わり、基本料は無料で提供し、アプリ内課金によって収益を上げるタイプのアプリが増加し始めたタイミングでもある。

 中でも高い売上実績を上げたのが、フィーチャーフォンで“基本料無料・アイテムによる課金”というスタイルを確立していたソーシャルゲーム出身のゲームベンダーである。こうしたベンダーは、フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行するユーザーの受け皿となるべく、Webベースのゲーム内容を堅持したゲームを投入し、フィーチャーフォンから継続した人気と売上を獲得していた。実際「探検ドリランド」などを提供しているグリーは、2011年末に同社製ゲームで20億コイン(20億円に相当)を超える売上のタイトルがあると公表している。

photo 2011年12月に開催された、GREE Platformの記者発表より。この時点で同社は、月に20億円に相当する消費を生み出すスマートフォンゲームを提供していた

 また同時期には、スマートフォンの特性を生かしたネイティブアプリならではのタイトルも大きな売上を上げるようになってきた。リアルタイムによるオンラインプレイが可能な本格シミュレーションRPG「キングダムコンクエスト」(セガ)のように、ゲームベンダーが投入したゲーム性の高いアプリが、高い売上につながる土壌ができ始めていた。

“パズドラ”のヒットに大きく影響した2つの背景

 こうした状況で2012年2月にパズドラが登場し、その後急速に人気を高めていくこととなる。パズドラがヒットした要因はさまざまな角度から分析がなされているが、ここではユーザー視点で同タイトルがヒットした理由を挙げてみたい。

 1つは、カードバトルを中心としたソーシャルゲームの成熟が進んでいたことだ。ソーシャルゲームはかつて、「サンシャイン牧場」(Rekoo Japan)や「怪盗ロワイヤル」(ディー・エヌ・エー)に代表されるように、ゲーム性はあくまでシンプルで分かりやすく、利用者間の協力やバトルなどのソーシャル要素を重視することで幅広い層に受け入れられた。その後、「ドラゴンコレクション」(コナミデジタルエンタテインメント)のヒットで多くのベンダーがカードバトル系のゲームに舵を切って以降、収益性を重視してかゲーム内容やキャラクターなどを特定のターゲットに絞ったものが増えるようになり、ソーシャルゲームのターゲットが狭まりつつあったのだ。

 そしてもう1つは、パズルやランアクションなど、ちょっとした時間に遊べるカジュアルゲームの人気だ。こうしたゲームはフィーチャーフォン時代から人気が高く、スマートフォンでも「おさわり探偵 なめこ栽培キット」(ビーワークス)などが人気となったことは記憶に新しい。ベンダーから見た場合、当時はカジュアルゲームでの収益化に非常に大きな課題があったため、メインビジネスとして本腰を入れる企業は決して多くなかった。だがスマートフォンで質の高いカジュアルゲームに対するニーズは非常に高かったといえるだろう。

photophoto カジュアルゲームは人気が高い一方で収益性に大きな課題を抱えている。それゆえ「Angry Birds」や「おさわり探偵 なめこ栽培キット」などのように、キャラクターのライセンスが収益の柱となるケースも少なくない

 そうした状況下で、ガンホー・オンライン・エンターテインメントが提供したのが「パズル&ドラゴンズ」だった。パズドラは、“ガチャ”や“合成”などカードバトル系のソーシャルゲームで人気の要素を踏襲しながらも、カジュアルゲームで人気のパズルゲームの要素を取り入れ、さらにソーシャル要素を弱めてゲーム性を重視する内容となっていた。そうした要素がユーザーにゲームとしての新鮮さを与え、ゲームに積極的な層を取り込んだのに加え、ゲーム性の分かりやすさからカジュアルゲームのプレーヤーも取り込み、利用者の裾野を広げるのに成功したのである。

 さらに同社は、「ラグナロクオンライン」などのオンライゲームで培ったゲーム運営のノウハウを生かし、ユーザーの継続的な利用につなげる取り組みを行っている。こうした一連の取り組みにより、同タイトルは現在に至るまで高い人気を獲得したといえるだろう。

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