中国メーカーの海外進出が見えてきた2013年ITmediaスタッフが選ぶ、2013年の“注目端末&トピック”(ライター山根編)(1/2 ページ)

» 2013年12月19日 21時19分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 調査会社ガートナーの報告によると、2013年第3四半期における世界の携帯電話販売シェアトップ10で中国勢が5社を占めた。中国各社の主戦場は依然として中国国内だが、アジアを中心に海外展開も進めている。一方、Nokiaの携帯電話部門をMicrosoftが買収する見通しとなった。地道に新製品を投入し続けて販売数もこれまでの減少から増加に転じたNokiaのスマートフォンは、2014年のMicrosoftにとって大きな武器になるかもしれない。

ハイスペック&クールなデザインの「Lenovo K900」

Lenovoの印象を大きく変えた「K900」

 日本でLenovoといえば、「PCメーカー!」という答えがすぐに返ってくるが、中国のユーザーの多くはスマートフォンメーカーとしても認識している。中国国内での販売シェアは、サムスン電子に次ぐ2位の座を確保しており、ハイエンドモデルから低価格なバリュークラスまでラインアップは幅広い。とはいえ、製品数は多いものの、ユーザーの記憶に残るような印象の強い“飛び抜けた”モデルはあまりなかった。「とりあえずLennovoの製品から選べば無難」と考えて購入する中国のユーザーも多い。

 だが、2013年4月に発売した「K900」は、そのLenovoのイメージを大きく変えるモデルとなった。インテルアーキテクチャを採用した世界初のスマートフォンとして、Atom Z2580(デュアルコア2GHz)の搭載したことで処理能力は高く、システムメモリを2Gバイト搭載したこともあって軽快に動く。ディスプレイは5.5インチ(解像度は1080×1920ピクセル)と大型だが、本体サイズは78(幅)×157(奥行き)×6.9(厚さ)ミリに抑えている。また、コーニングの「Gorillaガラス 2」の採用で傷が目立つことなく、かつ、破損しにくい。メインカメラは有効1300万画素、通信方式はW-CDMAに対応する。

 しかし、“世界初のインテルアーキテクチャ採用スマートフォン”というハードウェアスペック以上に中国ユーザーにとって重要なのは、ステンレスを採用した“高級感のあるスタイリッシュなボディ”だ。背面側のバッテリーカバーはステンレス素材の固定式で、表面にはヘアライン加工を施している。「Lenovo」や「Intel Inside」のロゴも印刷ではなく刻印だ。手に本体を持った感触は、ボディ四隅の角張った形状と相まって、まさに「金属の板」に近い。ビジネスシーンでも通用するデザインだ。

 Lenovoは、K900のプロモーションに米国プロバスケットボールリーグ「NBA」のスーパースター「コービー・ブライアント」を起用した。2013年の春から夏にかけて、中国のあらゆる繁華街に登場したコービー・ブライアントがK900を持つ広告写真は、Lenovoのこれまでのイメージを大きく変えるもので、ハイエンドスマートフォンに興味を持たないユーザーにもK900の存在を印象付けることに成功した。

 K900は、スペックのみならずデザインでもiPhone 5やGALAXY S4を超えたと評価する中国メディアが多かった。そのため、後継モデルにも大きな期待がかかったが、9月に発表した「K910」のデザインは、丸みを持ち質感もやや樹脂的ゆえに、K900ほどのブームを起こせていない。とはいえ、Lenovoが「なんでも屋」から海外大手メーカーのハイエンドモデルに対抗しうる製品を開発できる能力をもっていることはK900が示してくれた。サムスン電子のようにあらゆるユーザー層に対応する製品を中国以外の国でも本格に展開するようになれば、世界シェア3位以内も十分実現可能だろう。

メジャーブランドに成長したXiaomiの「Mi3」

一時期、iPhoneを超える販売ペースを記録した「Mi3」

 2013年に大きく躍進した中国メーカーが小米科技「Xiaomi」だ。その最新モデル「Xiaomi Mi3」は、2013年10月5日にオンラインで予約販売を開始したが、最初のロットの10万台は86秒で完売となり、完売までの最短記録を大きく更新した。Mi3などの注目モデルを多数投入したXiaomiは、中国国内のスマートフォン販売シェアで一時はiPhoneシリーズを上回るほどで、一気にメジャーメーカー入りを果たした。1年前は「なんかハイエンドっぽいモデルを安く出してくる新興メーカー」という認識だったが、いまや一般ユーザにもその名前を広く知るようになった。中国では、急成長スマートフォンメーカーの代名詞にもなっている。

 「小米3」こと「Mi3の」の本体デザインは、それまでの同社製品が持っていたイメージを大きく変えている。NokiaのLumiaシリーズ上位モデルに似た側面に大きな曲面を採用したユニボディデザインとなり、フレームにはマグネシウム合金を採用して強度を持たせている。本体サイズは73.6(幅)×144(奥行き)×8.1(厚さ)ミリ。樹脂素材のボディながら高級感あるデザインで、本体にカバーを装着するのがもったいないと感じるくらい、見た目を重視している。

 Mi3は中国の主要3通信事業者それぞれが採用する3種類の通信方式に対応するモデルを投入している。そのおかげで、ユーザーは、Xiaomiの製品を買うのに通信事業者で悩むことがなくなった。搭載するプロセッサは、TD-SCDMA版がTegra 4(クアッドコア1.7GHz)、W-CDMA版とCDMA2000版がSnapdragon 800シリーズ(クアッドコア2.3GHz)と海外大手メーカーの上位モデルと肩を並べる。ディスプレイサイズは5インチで解像度は1080×1920ピクセルだ。価格は、これまでのモデルとほぼ同じの1999元(約3万4400円)。Xiaomiの新製品が1999元で登場するのは中国で「お約束」となっているが、このスペックでこの価格は中国内外のライバルメーカーにとっても脅威となっている。1999元の16Gバイト版に加え、2499元の64Gバイトも一緒に投入している。

 Xiaomiの海外拠点は、現時点で香港と台湾に限られるが、中国からMi3を個人で輸入するマニアもアジアを中心に増えている。高いスペックを備えながらも価格が安いため、業者などに手数料を払ってもiPhoneシリーズやGALAXYシリーズより安いという現象も起きているほどだ。まだ中国外では一部のユーザーにしか知られていないが、その販売動向には注目しておくべきだろう。

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