インタビュー
» 2014年02月06日 10時00分 UPDATE

スマホのバッテリーはなぜ“持たない”――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること (1/2)

多くのユーザーが不満に感じている「スマホのバッテリー持ち」。省電力技術や大容量バッテリーの採用でもなかなか解決されない理由とはなにか? メーカーも使うスマホ向け電力測定ツールを開発したトライグルに聞いた。

[平賀洋一,ITmedia]
photo トライグル代表取締役社長の冨森健史氏

 多くのスマートフォンユーザーが感じているバッテリー持ちの悪さ。次々と登場する新モデルはより大きなバッテリーを搭載し、メーカー独自の省エネ技術を使って、バッテリーの持ちを改善している。

 確かにスペック表に記載さている連続待受時間や連続通話時間は新しい機種のほうが優秀になり、また「実使用時間」という新しい基準でも2日間や3日間という数字が当たり前になった。しかし同時にスマホの利用シーンも拡大しており、まだまだバッテリー残量を気にせず使えるような環境とは言い難い。

 かつてはフィーチャーフォンもバッテリー持ちの悪さが話題になることがあったが、新モデルが登場するたびにそうした声は小さくなっていった。なぜスマートフォンのバッテリー持ちについては、いつまでも不満の声が大きいのだろうか。

 スマートフォンのバッテリー問題についてトライグル代表取締役社長の冨森健史氏は、「スマートフォンはバッテリーがどう消費されているのかを正しく計測するのが難しい。それが根本です」と指摘する。

 スマートフォンの連続待受時間や連続通話時間、実使用時間で表される数値は、メーカーやキャリアが用意した測定環境で記録されたいわば理論値。当然、1人1人のユーザーが測定環境と同じ様にスマートフォンを使うことはなく、端末の通信環境や使われている機能・アプリによってバッテリーの減り方には差が出てくる。スマートフォンはこの差が大きく、結果としてバッテリー持ちの悪さが印象に残ってしまう。

 トライグルでは、よりユーザーの利用実態に近い状態でバッテリーの消費電力を測定できるよう、Androidスマートフォン向けの電力測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」を開発。すでに、複数のキャリアや端末メーカーで使われている。またスマートフォンは使うアプリによってバッテリー消費の傾向が大きく異なるため、アプリを開発するベンダーの利用も想定しているという。なおその性質上、市販はしておらず、端末メーカーやアプリベンダー向けにソリューションとして提供している。

photo 「TRYGLE POWER BENCH」の構成

 TRYGLE POWER BENCHでどんなことが分かるのか。また、我々ユーザーはどんなことに気をつければ上手にスマホのバッテリーを利用できるのか。冨森氏に話を聞いた。

スマホは“燃費”が悪い

 スマートフォンに機種変更して誰もが感じるのが、バッテリーがすぐに減ってしまうこと。なぜスマホのバッテリーはこうも持たないのか、まずその点を冨森氏に尋ねてみた。

 「フィーチャーフォンと比べて、スマートフォンはディスプレイサイズが大きくなりました。いわゆるケータイでも3.5インチクラスのディスプレイパネルを搭載した製品がありましたが、スマホは今や4から5インチが当たり前です。フィーチャーフォンでもディスプレイの消費電力が1番大きかったのですが、スマホはそれがさらに大きくなった。同時にボディもサイズアップして大きなバッテリーを搭載できますが、それだけでは電力消費の増大を根本的に解決できません」(冨森氏)

 スマートフォンのディスプレイが拡大すると、違う部分でも電力の消費が増える。ディスプレイの高解像度化と併せて、タッチパネルを使ったグラフィックユーザーインタフェース(GUI)もリッチでスムーズなものが求められ、高い画像処理能力が必要になる。画像処理にも電力は必要なわけで、サクサクでヌルヌルな“気持ちのいい”UIと引き替えに、バッテリーの持ちが悪くなった面もある。

 「ディスプレイの拡大は1つの要素に過ぎません」と、冨森氏は続ける。「スマートフォンではOSも変化しました。フィーチャーフォンはOSの深いレベルまでメーカーやキャリアのコントロールが可能でした。できるだけ少ないリソースで動くよう、処理や通信の1つ1つまで制御できたのです。スマホ向けのOS、特にAndroidは、ネット接続するモバイルデバイスとアプリをできるだけ簡単に開発できるよう、通信をつかさどる部分があらかじめ用意されています。そのため、開発者やユーザーの意に反して、勝手に通信してしまうことが多くなりました。モバイルOSが変わったことで、アプリを巡る環境も変わっています。アプリのジャンルにもよりますが、より多くの通信が必要になり、結果として電力を多く消費するようになりました」(冨森氏)

 そして、3Gから4Gへと通信規格が進化した点も大きい。通信速度が高速になり、それを常時接続するブロードバンド化も進んだ。またスマホはWi-FiやBluetoothなど複数の通信方式を使い、GPSやジャイロセンサー、照度センサーなど、実に多くのセンサーを搭載している。また、これらを制御するモバイルプロセッサーも性能が日々アップしている。搭載する部品が増え、それぞれの性能がアップしたことで、全体の消費電力が徐々に増えていった。ただメーカーやキャリアもそれに手をこまねいていたわけではない。

photo スマホの動作ログとバッテリー消費を見える化する「TRYGLE POWER BENCH」

 「Android OSについては、バージョンアップとともにOSの基本性能がかなり良くなりました。ハード面でも、プロセッサーやセンサーなどの集積化が進んで、性能アップの割に小型化と省電力化を実現しています。また消費電力を意識した制御技術も発達しました。例えば液晶パネルのバックライト点灯を細かく制御したり、再描画する際の制御を小刻みに行なったりですね。またバックグラウンドで起動しているアプリやタスクを意識的に終了させる方法も今では一般的です。各メーカーが用意するエコモードも高度化しています」(冨森氏)

 こうした努力に加えて、バッテリー容量も増えている。それでも、ユーザーが使うとバッテリーの持ちが悪いと感じてしまうのだろうか。「実のところキャリアもメーカーも、ユーザーの手にあるスマートフォンがどのようにバッテリーを消費しているのか、今までその実態を知ることができませんでした。開発時の計測環境ならいくらでも詳しく調べられますが、スマホはインストールするアプリによってその使われ方が大きく違ってきます。その結果、ユーザーの使い方1つで『バッテリーが持たない』という印象を持たれてしまいます。そこで開発したのが、Androidスマートフォン向けの電力測定ツールの『TRYGLE POWER BENCH』です」(冨森氏)

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