気持ちは「晴れやか」――SprintとT-Mobile USの統合交渉「終了」で孫社長

» 2017年11月06日 22時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 ソフトバンクグループは11月6日、2017年度第2四半期の連結決算を公表した。その説明会の冒頭、同社の孫正義社長が米Sprintと米T-Mobile USとの間で進められてきた経営統合交渉の「終了」について説明した。

SprintとT-Mobile USの経営統合(合併)交渉終了

統合会社の経営権を巡る対立

交渉決裂の経緯を語る孫社長 交渉決裂の経緯を語る孫社長

 Sprintはソフトバンクグループの傘下にある通信事業者で、携帯電話回線数で米国4位のシェアを持つ。一方、T-Mobile USはDeutsche Telekom(ドイツテレコム)の傘下にある通信事業者で、携帯電話回線数で米国3位のシェアを持つ。

 両社の経営統合が成立すれば、規模面でシェア上位のVerizon WirelessやAT&T Mobilityと互角の戦いができるようになる――ソフトバンクグループはそのような「未来図」を描いていた。

 ソフトバンクグループは、統合会社においても経営権を保有することを希望したが、 Deutsche Telekomも統合会社の経営権を要求。妥協案として、ソフトバンクグループは両社による共同経営を提案したが、Deutsche Telekomは首を縦に振らなかったという。

交渉終了で「晴れやか」

 このことを受けて、ソフトバンクグループは10月27日に取締役会を開催。Sprintについて「グループの戦略的に重要な拠点・会社であるか、それとも単なるアセット(資産)なのか」という議論を社外取締役を交えて行った結果、5年後から10年後を見据えた共通意見として、経営統合交渉の中止を決めたという。

 取締役会の直後、孫社長はDeutsche Telekomのティモテウス・ヘットゲスCEOに直接電話し、経営統合交渉の中止を伝達。その後、11月4日にヘッドゲスCEOを含むDeutsche Telekom経営陣との話し合いを経て、SprintとT-Mobile USの経営統合交渉は正式に中止することになった。

 説明会の前に交渉終了の感想を聞かれたという孫社長は、「一言で申し上げて『晴れやか』である」と答えたという。

晴れやかな孫社長 晴れやかな表情を浮かべる孫社長

グループシナジーでSprintをさらなる成長へ

 ソフトバンクグループが米国での携帯電話事業の経営権にこだわったのは、世界最大の米国の携帯電話市場を「手放す訳にはいかない」(孫社長)からだ。

 同社では通信事業を「どのような事業を伸ばしていくにしても、欠かすことのできない根幹のインフラ」(同)であると捉えている。同社グループの英Arm(旧・ARM)が開発したプロセッサ技術を搭載したチップの活躍の場は、携帯電話やスマートフォンにとどまらずIoT(モノのインターネット)に関連するデバイス全般に広がりつつある。将来IoTデバイスが一番多く活躍するであろう米国市場は、同社にとって非常に重要なのだ。

 孫社長は「モノとヒト、モノとモノがつながり合うIoT時代のインフラのことを考えると、世界で最も大きくリッチなマーケットになる米国にあるSprintの経営権を失うことは、10年後に必ず後悔することになる」と、今回の判断の正当性を訴える。

1兆個のIoTデバイスをつなぐインフラ 世界で一番多くのIoTデバイスが活躍するであろう米国。孫社長は、同国の通信事業(Sprint)を失うことはソフトバンクグループにとっての大きな損失になると考えている

 では、T-Mobile USとの統合を断念したSprintの事業をこれからどのように組み立てて行くのか。孫社長は「人間と人間をつなぐ通信ではAT&TやVerizonが先を行っていて、これらを抜くのは難しい」と率直に認めた上で、「IoTを考えると(グループに)Armを抱える我々はがぜん有利な立場にある」と語る。

 また、孫社長は「インターネットはモバイルだけではない」とする。その観点から同社は低軌道衛星通信事業を手がける米OneWeb(ワンウェブ)に出資している。OneWebの高速で遅延の少ない衛星通信と、Sprintのモバイル通信を組み合わせて新たな顧客の獲得も考えているようだ。

衛星通信事業とのシナジー ソフトバンクグループが出資した米OneWebが手がける低軌道衛星通信とのシナジーも模索

今後のSprintのあり方は「焦らず」考える

 今後は、SprintはArmやOneWebといったグループ企業や出資先企業とのシナジー効果による成長を追究することになる。

 ただ、Sprintが他企業と経営統合する可能性は完全になくなった訳ではない。説明会の質疑応答で「ケーブルテレビ事業者など、モバイルキャリア以外との経営統合交渉の可能性はないのか」と問われた孫社長は「基本的には何でもあり」と答えている。

 経費削減などの効果もあり、Sprintは単体で純利益を計上できるレベルにまで業績が回復していた。そのこともあり、今後のSprintの可能性について孫社長は「焦らずに考えたい」としている。

米Sprintの純利益 Sprintは単体で純利益を計上できる所まで業績が回復。今後のあり方は焦らず考えるという

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